第二話 電光石火-2
ビルから離れて少し歩いて気づいた。
「あっやべ。充電切れてる」
「どうせ使わないだろ。家に帰ってから充電しろよ」
そう冷たく言う夕映に反論する。
「それもそうだけどこれじゃ時計も見れないじゃん」
「どれ。貸してみろ」
先輩がそう言うので携帯を手渡した。
パシッと電気が走る。
「これでよし。どうだ?」
「うわっ、すごい電源ついた」
俺は感激する。
「こんなこともできるんですね」
「まあ訓練の賜物だな」
先輩は鷹揚にうなずく。
こんなにすごい力を持っているのに偉ぶらないのはすごいと思う。
やっぱりさっきの不良とは大違いだ。
俺たちは角を曲がった。
「じゃ、俺たちこっちなんで」
夕映がひらりと手を振る。俺と夕映は同じアパートに住んでいるご近所さんだ。
「俺は君たちとは反対側だからここでお別れだな。また学校で会おう」
そう言うと先輩は軽やかに去っていった。俺はその後ろ姿をしばらく見送る。
「あんなすごい先輩が同じ高校に通っているなんて。世間は広いようで狭いというかなんか。夕映もそう思うだろ?」
俺がそう言って振り返ると夕映はなんだか難しい顔をしていた。
「できすぎている」
「は?」
俺は首を傾げる。
「安斎だ。あそこで俺たちを逃がそうとした素振り変だと思わなかったか?」
「いや別に」
「それにあの炎をまとったやつ、すごい力だった。あいつも強い異能力者……。おそらく頂点クラスだ。一度にマスターファイブ二人が同じ場所に出現するなんてことがありえるか?」
「偶然なんじゃないか?」
「世の中に偶然なんてないんだよ。起こるべくして起こる必然しかない」
夕映は嫌なものを食べたような複雑な顔をした。
「なんだな周りがきな臭いな。お前も用心しろよ」
「なんで俺が」
おどけた調子で言うが夕映はまったく笑ってなかった。
「知ってしまったからには部外者じゃいられないからだ。お前も無関係じゃないんだよ、何事もな」
夕映はエントランスのロックを解除すると先に入っていった。
「戸締りはきちんとしておけ。お前も気をつけろよ」
家の前に着いてから俺は言った。
「なんなんだあいつ」
俺は携帯電話のロックを解除しようとして指を操作した。
ブツ。
「あれ」
急に画面が暗くなってうんともすんとも言わなくなった。
「なんだこれ?武宮先輩に充電してもらったはず……」
お前も気を付けろよ。
部外者じゃいられない。
夕映の声がやけに胸に残った。
「なんなんだよ……」
真っ暗な画面にはなにも映らなかった。とにかく今日はいろいろあって疲れたから休もう。
俺は玄関の戸を開ける。