表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/12

・第九話 ー異世界人の動きー

第九話

「異世界人の動き」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


☆☆☆☆☆☆☆☆

○メーテリアside○

☆☆☆☆☆☆☆☆



<黒の伝令>クロウ。


私の所属していた黒剣軍に所属し、私と同じ主を頂きながら、しかし勇者様に最も信頼されていた、勇者の右腕。



*********

*********

●山の中●



「クロウ…ですか」



私は部下数名と共に、避難所と呼ばれた要塞を見つめます。中々の要塞です。それに魔狼達もかなりの数いる様子。



「魔狼はあの子の使役魔獣だったのですね。てっきり、ルドルフ様の魔法か何かかと思っていましたが…ルドルフ様がそばに置いたのも分かりますね」



私はうんうんと頷きます。



「できれば、私達【黒翼軍】に参加して欲しいところですが、記憶を失っているそうですし…今は放置ですわね」

「メーテリア様、クロウ殿とは一体どのようなお方なのでしょうか?小官はお名前をお聞きしたことがなく…」



私は部下に視線を向けます。確か魔王軍との戦争後に軍人となった、若き士官だった男です。恋人を魔族の殺人鬼に殺されて、反魔族組織である黒翼軍に参加した、真の意味で反魔族思想のテロリスト。



「彼は勇者様の側使えのようなことをしていた男です。勇者様の言葉を代弁することも多かったので、<黒の伝令>と呼ばれておりました」

「<黒の伝令>、ですか?」

「ルドルフ様は彼に最も信頼を置いていました。料理から洗濯などなど…全ての雑務はクロウが行なっていました。彼以外の手が入った料理などは食べないほどでした」

「な、成程」



だが、ルドルフ様はクロウを決して戦場には出さなかった。あの日も…。



「ルドルフ様亡き後、クロウは行方不明になり、私のように反魔族活動をしていなかったためにヒューマン国家からもマークされてません」

「それが、記憶を失いこんなところにおられたと…」



色々と疑問は残りますが、今は追手に対応しなければなりません。



「それよりも追手の戦力は?」

「はっ…聖剣の勇者の内、光と炎。それと手勢が80ばかり」

「クロウにはああ言いましたが、私達の戦力は100名近くいます。しかし、その戦力の追手相手では分が悪いですね。一度街の中へ潜みましょう」

「はっ…このままでは追手が、クロウ殿のいる避難所に向かってしまいますが、よろしいのですか?」

「先程も言いましたが、クロウは反魔族組織に参加した記録はありません。指名手配もされておりませんので、放置していても問題ありません」



私達は街へと向かいます。



「我が姉妹よ」

「ミサですか。偵察の結果はどうですか?」



大ぶりのハンマーを持った我が妹…といっても義理ですが…が、私の前に現れます。彼女には偵察に出てもらっていたのですが。



「ところどころに強力な魔獣がいるけど、他は雑魚魔獣ばかり。問題は勇者の連れている手勢」

「有名どころがいましたか?」

「まあまあかな?異名持ちもいたけど、問題はーーー裏切り者がいたこと。そう、あの子だよ我が姉妹よ」

「ああ、あの子ですか」



私は目を細める。あの子は裏切り者だ。抹殺せねばならない。たとえ、昔は己の子供のように可愛がったとしてもです。



「とはいえ、我々はここに土地勘があるわけでもありません。今は拠点の用意が必要です。幸いにも建物は空いているようですし、お借りするとしましょう」



私達は街へと潜り込んだ。



☆☆☆☆☆☆☆☆

○メーテリアsideEND○

☆☆☆☆☆☆☆☆



*********

*********

●ゴブリンの城●



結果から言おう。太郎は失敗した。大敗した。不幸中の幸いなのは、魔狼数体の死亡と引き換えに、太郎が何とか生き残ったことだろう。



「す、すいやせん、叔父貴」

「かまわねぇ。それよりも外の夜叉達に合流しろ。邪魔だ」

「うっす、叔父貴‼︎」



太郎が魔狼に乗って走り去る。



「さて…」



魔狼に跨った俺は、抜いた剣を構える。



「(この城。思ったよりゴブリンが多い。外と合わせると100体近くか?)」



考えていると、魔狼の1体がゴブリンに炎の息吹を放ち、数体のゴブリンを焼き払う。まさに火炎放射器のようだ。



「(というか…)」



俺はゴブリンの死体からそれを手に取る。それは鉄製のナイフであった。



「(質は悪いが、武器の性能が上がってる。成程、最初の日のゴブリンよりは手強いようだ)」



俺は考え込む。



「(このまま焼き払うか?しかし、使えそうな物資とかは回収したい。いや、見たところそういうものはないか)」



俺に向かってきたゴブリン数体を、剣の一線で斬り捨てる。どうやら瓦礫の隙間に潜んでいたようだ。



「城って言っても、バリケードを積み上げただけだから、逆に隙間とかに隠れられると索敵が遅れるな。だが、まあいい。

ーーー精霊よ」



俺は精霊に呼びかける。



「 ≪ 黒い(ブラック)星光(スターライト)≫‼︎」



俺の影が周囲に広がり、その影からいくつもの黒く巨大な棘が突き出される。



「「「「ギャッ⁉︎」」」」



串刺しにされたゴブリン達が絶命していく。



「隠れた場所ごとやっちまえば、話は簡単だろ?なぁ?」



これで相当数のゴブリンを串刺しにしてやったはずだが、さてどうだか?



「…チッ、やっぱり親玉がいたか」



奥から現れたのは、俺の魔狼の首を片手でへし折る、重装甲の鎧を纏ったゴブリン。



「【重装ゴブリン】とでも呼んでおこうか?」



重装ゴブリンが剣を抜く。なかなかの大ぶりの剣。筋力次第では危険だな。



「さてはて、ゴブリンの剣術…どれほどの腕か試させてもらおう‼︎」

「ごぁああああ‼︎」



重装ゴブリンが上段から剣を振り下ろす。



「(パワーもあるし、筋力から無理矢理生み出される剣速は脅威だ。だが、それは、俺以外にならだがな)」



俺は剣を避け、避けた余韻を使ってそのまま重装ゴブリンの腹を斬りつける。



「む?」



切った感覚は柔らかい。確かに鎧は硬いのだが…。



「随分と隙間だらけの鎧だな?鎧の硬さを確かめるはずが、斬ってしまったぞ」

「ぐるぁあああ‼︎」



重装ゴブリンが咆哮を上げる。



ーーー残念だが、俺の相手としては役不足だな。



「精霊よ、≪ 黒い(ブラック)星光(スターライト)≫」



何十もの影の棘が、俺の広がった影から重装ゴブリンの肉体を貫く。しかも、隙間だらけの鎧の間を狙ってだ。



「グブッ⁉︎」



重装ゴブリンが血を吹き出して倒れる。まだ生きてはいるようだ。生命力は高いらしい。



「ふむ、かなり致命傷を負わせたはずだが…種族的特性か何かか?まあいい」



俺は重装ゴブリンの首に剣を這わせる。ゴクリと重装ゴブリンの喉が鳴る。



「いい戦士だった。誇って逝くがいい」



俺は剣を振るい。重装ゴブリンの首を刎ねる。血液が俺に降りかかる。



「チッ、返り血の上書きになっちまった」



俺は剣を振るい、剣についた血糊を払う。



「さて、残りは…チッ、逃げたか」



どうやら重装ゴブリンは仲間を逃す時間稼ぎをしたらしい。重装というよりはナイトの動きと称えてやるべきか?



「ふむ…この剣は使えなくもないな。他のも溶かせば使えるか?」



俺は魔狼達と共に鉄製の武器を回収する。粗悪品だが、再利用できるかもしれん。



「あとはここをどうするかだが」



俺は周囲を見渡す。



「防衛施設としてはお粗末だが、解体して資材として使える、か?」



ちょうどその時、建物の出入り口から数人の生徒が現れる。その中の1人に見覚えがあった。



「(【明石(あかいし) 二兎(にと)】。確か生徒会の一員だったか?)」

「ん…稲坂か。どうやらもうモンスターはいないようだな」

「ああ、ボスっぽい重装ゴブリンもぶち殺した」

「…成程」



明石が死体を確認する。



「あとは俺達が始末しておこう。稲坂は一度戻って休むといい」

「そうさせてもらおう」



俺は剣を鞘に戻し、その場を立ち去るために歩き始める。



「ーーー稲坂。お前を信じなかった1人の俺が言ってもアレだが。せめて一度、騎士宮と話し合ってみろ」

「フン…どうせ聞きたいこともできたしな。話はするさ(聞きたいことだけ聞いたら立ち去るがな)」

「そうか」



俺は今度こそその場を離れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エンド

面白い‼︎続きが見たい‼︎と思われた方。お時間がございましたら、ご感想、または評価をお願いいたします‼︎

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ