表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/12

・第八話 ーそれぞれの勢力ー

書き溜めが無くなりましたので、投稿が間が開くかと思います。

第八話

「それぞれの勢力」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


山のある程度の間引きを終えた俺は、魔狼達に囲まれながら考え込んでいた。



「まどろっこしいことになってきたな」



思えば、幾つもの異常事態が重なった上で、今の状態がある。それぞれを個々に考えてみれば、意外と状況が安定するかもしれん。



「1つは異世界からの帰還問題。これは夜叉みたいな意識の関係の問題しかない。異世界の力に振り回されてはいるが、逆にこの状況では力があるだけマシだ」



ペットボトルで水を飲みながら、考えを巡らせる。



「2つは街中に溢れかえったモンスター共。さっさと救援が来ないことを考えると、かなりの広範囲。下手すると日本全国どころか、在日米軍が来ないことも考えると、世界中がこうなってるのかもしれねぇ」



つまるところ、俺達はもう元の生活には戻れない。



「3つはさっきの女の件。異世界人がこっちに来てる」



知らない自分を知る他人。



「はぁ、まさか夜叉の言葉に同意する日が来るとはな」



ここまで気持ち悪いというか、大きく違和感を感じるものだとは思わなかった。



「しかし、話した感じ、多少の齟齬がある」



俺は異世界で死んだ。だが、天音とメーテリアの双方を信じるならば、俺は2度の死を迎えたことになる。



「どういうことだ?しかも、メーテリアに至っては勇者が別にいると言う」



俺が相当変な動きをしていたか。もしくは、誰かが嘘をついている。



「詳しく話を聞いとかないといけないな」



可能性としては俺が変な動きをしていた可能性が高い。何故なら、俺のステータスに黒の聖剣とやらが記載されているからである。


黒の聖剣の勇者と共に戦っていたのに、俺がその聖剣とやらを持ってるのはおかしいからだ。



「うーん、今は戻るまで放置するしかないな」



俺は学園へと歩き出す。しばらく歩くと、なかなかの高さの城壁が見えてくる。マンション3階相当の高さだろうか?



「おー、案外上手くできたなぁ」

「おーい、兄貴こっちだ」

「ん?ああ」



夜叉達と合流する。



「ここが出入り口の一つだってよ。他にもいくつかあるらしい」



そう言うなり、先陣を切る夜叉と共に俺達は城壁の中へ進む。



「す、すごいな」



そこに並んでいたのは土で作られた屋根付きの家達であった。一部木造建築もある。



「避難民達の家にするみたいだな。まあ、テントも有限だしな」

「まあ、それもそうだ」



俺達は校舎へと向かう。



「それにしても、返り血で酷いな」

「風呂に入りたいが、水も有限だしな」

「あ?知らないのか?」

「何がだ?」



俺は何の話かと夜叉に問う。



「震災じゃないから水は使えるし、魔法使い共がプールを清掃して、大浴場として使えるようにしてるぞ?」

「なん、だと?」



俺は思わず膝をつく。



「と言っても、解放されたのが今日の朝だしな。昼間は俺らみたいな実行人員に優先的に解放してくれるらしいし、今から行くか?」

「…はぁ、そうだな」



俺は立ち上がりプールへと…風呂へと向かう。



「ん?避難民達も動員してるのか?」



見ると所々で避難してきた人々が、様々な作業にあたっている。



「まあ、流石に俺らだけじゃな。雑務くらいはやってもらわないと」

「それもそうだな」



見殺しにするのは寝覚めが悪いが、タダ飯を食わせる余裕はない。戦わない分、労働力を提供してもらわねばならない。



「避難民を動員して、一部山の土地で農業するらしいぞ?」

「今から始めてもなぁ。まあ、やらない方がマシかと聞かれれば、やった方がはるかにマシなんだが」



この山で採取できる食料は限られている。今からでも自給自足の体制を整えるべきではある。

…まあ、食えるようになるまで、食料が保つかどうかと言う問題があるが。



「つか、野菜の種とかどうしたんだ?」

「物資回収でどっかの隊が回収してきたみたいだぜ?おまけに、植物の成長を促進できる能力者もいるらしい。もう何でもありだぜ?」

「ああ。だが、首の皮一枚繋がったとも言える。俺は最低でも餓死は勘弁願いたいところだ」



しばらく歩いていると、校舎の手前で、モンスター達の死体が焼かれていた。



「(まあ、放置もできんよな)」



火の魔法を次々と生徒達が放っている。死体達は轟々と音を立てて燃えている。



「人間の死体」

「ん?」



俺の言葉に夜叉が顔を向ける。



「人間の死体はどうしてるんだ?放置する訳にもいかんだろう?」

「一応収容して一時的に保管して、腐敗が目立つ前には火葬するらしい。ただ身元が分からないのは身元不明で処理するしかないから、死亡者リストに乗らないな」

「行方不明者で処理か」



俺はため息を吐き出す。



「しかし、こんな状況だと相当の人間が死んだだろうな」

「まあ、な」



街に出ただけでも相当な死人を確認した。この街だけでも、人口の何割かは死亡しているだろう。



「そういえば、兄貴は家族はいいのか?今の兄貴なら魔狼と手下を率いれば、モンスター共なんてものの数ではないだろう?」

「あー、まあ、考えなくはなかったのだが」



だが、家族は俺を見捨てている。ならば俺が見捨てたとしても文句はないだろう。とはいえ、助けないのは寝覚めが悪い。



「積極的には助けには行かないが、見つけたら助ける。まあ、要は消極的救助が方針といったところだ。今無理すれば、この学園の安定も崩れる。特にこの魔狼の軍勢がな」



魔狼はこの学園の安全を確保している。俺が死ねば魔狼も消える。そうすれば、学園の生徒達が休む暇なく、モンスター達を警戒しなければならない。



「そう言うお前はいいのか?」

「あ?ああ、うちの実家はヤクザとか言われる連中だからよ。死んだらそれまでだ。何なら空いた席に兄貴をつけてもかまわねぇぜ?」

「それで、けじめのつけ方がヤクザっぽかったのか」



つか、価値観がマジでヤクザだな。



「ーーーた、大変だァアアア‼︎」

「「あ?」」



避難民のサラリーマンが俺達を横切る。それを夜叉が掴んで止める。



「おい、何が大変なんだ?」

「あ、ああ、山を降りたところに、急に城ができてるんだ‼︎その中からゴブリン共が…‼︎」

「おいおいおい‼︎マジかよ⁉︎」



つまり、この学園は街へと出る道を塞がれた事になる。



「クソがッ‼︎学園を封鎖したつもりか⁉︎」



俺は魔狼に乗り込む。



「アンタ‼︎他の連中にこの件を伝えろ‼︎」

「分かった‼︎」



サラリーマンが走り去る。



「兄貴、どうする気だ?」

「城を落とす。ついでに中にある物資は奪う。ゴブリン共は皆殺しだ」

「…いいね。前の九郎よりも、今の兄貴の方が俺好みだぜ」



俺と夜叉達は魔狼に乗り、そのまま駆け抜ける。



「ゴブリン共の城を落とせ‼︎皆殺しにしろ‼︎街への要衝を取り戻せ‼︎」

「「「「おう‼︎」」」」



城門から外へと出撃する。山の中に待機していた魔狼の一部が合流する。



「クソがッ‼︎情報が少ない‼︎一気呵成に勢いで押し切る‼︎」



しばらく走り抜けると、城が見えて…。



「あれが、城?か…?」



それは城と呼ぶにはあまりに不格好であった。そこらへんの壁やらなんやらを、適当に積み重ねただけの城。いや、どちらかといえば、バリケード山と言ってもいいものだった。



「まあ、確かに短時間で物資を考えるとあんなもんか。さっきのやつが叫びすぎだったってことか」

「叔父貴‼︎俺に任せてくれよ‼︎」

「あ?」



声のした方を見ると、夜叉の手下のチンピラのような男子生徒が手を挙げている。



「確か…【山田(やまだ) 太郎(たろう)】だったか?」

「そうっす‼︎俺にやらせて欲しいっす‼︎」

「…まあいい。魔狼を10体付けてやるが、油断して殺されるなよ?ゴブリン如きに殺されたら恥だぞ?予想より強ければ一度引け」

「うっす‼︎」



太郎が魔狼達と城へ駆け抜ける。



「さて、夜叉…お前の手下の実力を見せてもらおうか?」

「あ〜山田はなぁ…」

「ん?どうかしたか?」



夜叉が渋い顔をしている。



「アイツは調子乗りやすくてなぁ。丸投げすると失敗しやすいんだよなぁ。まあ、その分悪運も強いんだが」

「えぇ…マジかよ」



いきなり不安なんだが?



「一先ず、俺らは周りのゴブリンを片付けるぜ。悪いけど、兄貴は山田の奴を見てやってくれ」

「はぁ…仕方ねぇなぁ」



俺はため息を吐き出して、ゴブリン達の城へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エンド

面白い‼︎続きが見たい‼︎と思われた方。お時間がございましたら、ご感想、または評価をお願いいたします‼︎

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ