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・第五話 ー物資回収ー

第五話

「物資回収」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


モンスター共が現れて2日目の朝。食事を終えた俺は、業腹ではあるが騎士宮に連れられて、校門前に立っていた。



*********

*********

●校庭●



「おい、騎士宮…何でこのメンバーなんだ?」



俺はこめかみを指で抑えつつ、隣に立つ天音に問いかける。半分キレ気味である。



「えーっと、戦闘できるのが勇者の記憶がある人ばかりだから、人が限られてて…」

「成程、な」



目の前には俺を見捨てた、俺を信じなかった、元友人達…ああ、全員斬り捨てたい。



「だ、大丈夫だよ‼︎皆、九郎が冤罪だったって分かってるから‼︎」

「チッ、クソが」



気分が悪くなった俺は、何の気無しに悪態をつく。



「すまない、九郎。俺達が信じなきゃいけなかったのに…」

「そういう問題じゃねぇんだが。まあ、今はいい」



元親友が謝罪してくるが、今更だし、何より今はそれどころではない非常時だ。



「俺達の班は10名。俺含めた4人が原付で先導する。魔狼2体は周囲の警戒。残りは逃げてきた避難民から預かったトラックを使用する」



俺は部隊構成を確認する。そして、俺達の目標は2つ。



「第一に生存者、第二に医薬品の確保…間違いないか?」

「うん。山を降りてから左折して、そのまま真っ直ぐ進んだところの薬局が目的地。その周辺の生存者も連れて帰るわ」

「分かった」



俺は頷いた後に、原付に乗る。



「何かこう…絶望的に合わな…何でもない」



俺は見た目に絶望しながら、エンジンをかける。



「校門を開けてくれ…【第2班】、行くぞ」



俺達は開いた校門から外へと出る。山を下る道には、すでに多くのモンスター達の死体が放置されていた。



「(死体も処理しないといけないが…流石にそれは別の奴らに任せたいところだな)」



というか、最初から原付で移動すれば良かったのでは?と思いつつ、公民館の前まで到着する。



「誰かいますかー⁉︎」

「チッ、だから叫ぶなと…‼︎」



天音の声掛けにイラつきながら、俺は剣を抜く。だが周囲からモンスターが現れる様子はない。魔狼にも反応がない。



「大丈夫だ九郎。さっき索敵魔法を放っておいた。声の聞こえる範囲にモンスターはいない」

「索敵魔法だと?ああ、異世界帰りだとそういうものも使えるのか」



俺は変に納得する。回復魔法も同じなのだろうと。



「その索敵魔法とやらで生存者は探せんのか?」

「それなりの人数は確認してるが…声に反応しないところを見ると、自宅に立てこもってるみたいだな」

「まあ、その方が今はいいかもしれんな」



俺は剣を鞘に戻す。



「それよりも医薬品だ。さっさと移動するぞ」

「お、おい⁉︎」



俺は原付で再び走り出す。その両サイドを魔狼が続く。



「チッ、クソが」



鼻につく血の匂い。あちらこちらに死体が転がっている。いや、肉片が飛び散っている。



「(とはいえ、家の中に気配はある。押し入られた家もある…あまり長くはなさそうだな)」



しばらく走っていると、逃げ惑う幼女を発見する。まだ小学生にも満たないだろう少女だ。死体らしきものにしがみついている…母親のようだ。



「ままぁー‼︎」



その周囲をゴブリンが取り囲んでおり、今にも幼女に襲いかかろうとしている。



「ざけんな‼︎幼児を見捨てるほど腐ってねぇぞ‼︎」



俺は鉄串を取り出し、持てる全ての力でゴブリン達に投げつける。



「「「「くぺっ⁉︎」」」」



4体のゴブリンの頭を、弾丸の如き鉄串が貫く。残りは4体。



「(クソが‼︎間に合わねぇ…なら‼︎)

ーーー精霊よ」



俺が唱えると同時に、周囲に黒い光が集まる。



「≪ 黒い(ブラック)流星(メテオ)≫」



黒い光が漆黒の弾丸となり、ゴブリンを標的に発射される。それはまるで銃弾のように、ゴブリン達を貫いてゆく。



「魔狼共‼︎周囲のモンスターを探して殺せ‼︎」



俺の周囲の魔狼が、瞬時に屋根の上に登り、索敵を開始する。



「怪我はないか⁉︎」

「うん…でもままが」



息を確認する…微かにだが呼吸がある。



「九郎‼︎」

「遅い‼︎治療魔法を使える奴はいるか⁉︎いるならさっさと来い‼︎」



俺の元に天音が駆け寄る。



「まだ呼吸はあるが浅く短い‼︎」

「任せて‼︎

ーーー≪女神の慈悲≫」



幼女の母親?の上に魔法陣が展開され、みるみるうちに傷が塞がってゆく。



「これは…すごいな」



俺はその様子に驚嘆の声を漏らす。こいつ1人でどれだけの人が救えることか。



「意識はないな。おい、担架積んでたろ?」

「ああ、今トラックに運ぶ。君もおいで」

「うん…」



幼女とその母親?がトラックへ運ばれる。



「…昨日も思ったけど、九郎そんな技使えたっけ?」

「あ?なんか知らんが使えたぞ」



鉄串と同じように、ほぼ条件反射で当たり前のように使えていた。



「って、鉄串がもう切れるな」



鉄串の残数がもう5本のみとなっていた。



「帰ったら、鍛治ジョブ持ってる人に頼んだら?非常時だし材料になるものは必要だろうけど」

「鉄か?まあ、この大きさの鉄串なら、ネジをいくらか持って帰ればいいか?」

「うーん、まあ、そこらへんも回収できればじゃないかな?」

「ホームセンターは近くにないしな。スーパーかなんか寄れればいいが」



俺の両サイドに魔狼が戻ってくる。どうやらモンスターはいなかったようだ。



「見たことない魔狼だね?種族名は?」

「【コマンドウルフ】。格闘戦に優れた魔狼だそうだ」



コマンドウルフが俺の手を舐める。



「相変わらず、犬とか好きなんだね」

「まあ、な」



俺の亡き飼い犬【ナイロビ】は、あいつだけは俺を裏切らなかった。良くも悪くも、人間の都合は犬には関係ないしな。



「時間は有限だ。そろそろ薬局に向かうぞ」

「もちろん」



俺は原付に乗り込み走り出す。その背後をトラック達が追ってくる。



「(…思ったより普通に話せるな)」



もっと裏切ったことへの怒りで話せないと思ったが、どうやら俺も甘い人間のようだ。



「っと、着いたな」



そこはそれなりに大きなドラッグストアであった。中にはきちんとした薬局もある。



「近接戦闘が可能な奴はついて来い‼︎」



元親友が先陣を切る。その後に2名の男子学生と俺が続く。



「…思ったよりは綺麗だな」



荒らされたかと思われたドラッグストアは、客が逃げる時に崩したであろう商品棚以外は、基本的には綺麗なままであった。



「俺達の目的は医薬品だ。とにかく詰め込め‼︎余裕があれば、食料とかもだ」



俺はドラッグストアの中を索敵する。魔狼の内1体もドラッグストアの中を索敵している。なお、もう1体はトラックの護衛に残している。



「さて、俺も回収できるだけ回収するか」



俺は医薬品を漁る。



「(重い物はトラックに任せるとして、俺は原付に乗せる分と、魔狼に括り付ける分だな。魔狼は軽めにしないと、身動きが取れんな)」



ガーゼなどの軽いものを集めていく。



「九郎」

「ん?っと」



俺は元親友が投げてきたものを受け取る…アイスクリームか。



「なるべく食べておけ。日持ちしないものは腐るだけだし、食っておけば消費する食料も抑えられる。なにより、このくらいは危険手当だろ?」

「…ふっ、それもそうだな」



俺は食料を見渡す。菓子コーナーにあったビーフジャーキーを魔狼達に食わせ、俺は適当な食料を手に取り、もぐもぐと食べ始める。



「っと、それはそれとして…」



俺はスマホの電源を入れてみる…やはり圏外だ。



「(この都市全体か?それとも国のネットが死んでるのか?)」



どちらにしろ、情報の収集は不可能のようだ。



「九郎」

「天…んぐ。騎士宮か。何だ?」



あまりに自然に自然に天音と呼びそうになった俺は、その言葉ごとお茶を飲み込む。そして改めて声をかけてきた理由を聞く。



「あのお母さん、さっき目を覚ましたよ」

「そうか…話せそうか?」

「ちょっと話したけど、お父さんは亡くなって、娘さんと2人だけだったみたい。私達と学校に避難するって」

「その方がいいだろうな」



俺は回収した食料の一部を天音に渡す。



「あの2人に渡してくれ。怪我は治ったとはいえ、間違いなく精神的に疲弊してるだろうし、体力も失っているはずだ」

「分かった。それと、2人から伝言。

ーーー助けてくれてありがとうって」

「…」



俺は無言で食事を再開する。



「騎士宮も食っておけ。学園の食料備蓄をなるべく消費させたくないしな」

「うん、分かってる」



天音が立ち去る。



「お礼…か。久しぶりに聴いた気がするな」

ーーーん。



ズキリと頭に鈍い痛みが走る。



「チッ、こんな時に頭痛かよ」



しかも、視界にノイズが走ったぞ?もしかして、何かの病気か?



「いや、疲れただけか?ベットで寝てないし、何よりこんな事態になって、疲れも溜まってるしな」

「九郎、そろそろ運び出すぞ」

「ん?ああ」



荷物を魔狼と原付に積み込む。



「そういえば、お前いつから鉄串なんてもの使い始めたんだ?」

「あ?いや、知らんが?つか、お前らの方が知ってるだろうが」

「いや、俺が知ってるのは追放までで…」

「は?追放?」

「あー、成程…すまん、長くなるから今度話すが、死ぬところは見てないんだ。もちろん騎士宮さんも見てないと思うぞ」

「…成程」



どうやら話を統合すると、俺は何やら追放され、その後死亡したらしい。それ故に、コイツらは俺が死ぬまでの行動を知らないようだ。



「(つまり、追放とやらをされた後に鉄串などの技能を得た…ということか?)」



今の俺の戦闘能力を考えるに、へんなところに追放されたぐらいじゃあ、何だかんだで生き残りそうな気もするのだが…。



「(ちと、確認したいが、コイツらそもそも知らねぇんだもんな)」



内心でため息を吐いた後、荷物の搬出作業を再開する。



「よし、リストの分は確保できたね」

「やったな‼︎」

「リスト?」



天音達の会話に俺は疑問符を浮かべる。何だリストって。



「あ、あれ?九郎には伝えてなかったっけ?保健医の先生達から渡された、必要医薬品のリスト…」

「知らんわ‼︎きちんと情報共有しろや‼︎」

「ご、ごめんなさーい‼︎」

「はぁ…まあ、リストの物が手に入ったならそれでいい。学園に戻るぞ」



俺達はその後数人の生存者を回収し、学園へと帰還した。


なお、流石というべきか、他の物資調達に出ていた班にも死者はいなかったらしい。というよりも、怪我人すらいなかったらしい。


さ、流石異世界勇者達である。


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