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・第二話 ー学園要塞ー

初めて予約投稿してみました。

第二話

「学園要塞」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この学園は街を見下ろせる場所にある。小山の中腹部に作られたためである。大地主であった創始者が、山丸ごと所有していたかららしい。第二次世界大戦中は来るべき本土決戦のため、要塞化も進められていたらしい。まあまあ歴史のある学校なのだ。


…まあ、つまりである。ここから見えるほど火の手が、街で上がっているという事なのだ。



「まさか、街にモンスターが出たのか⁉︎」

「い、家は大丈夫なのか⁉︎」



生徒達に動揺が走る。それも仕方ないだろう。



「(俺は今更か…)」



冤罪のせいで、両親とも最近会話してない。疎まれてると言ってもいい。家族の心配をする必要もされることもないだろう。



「(待てよ?)」



俺は少し考え込む。これはチャンスなのでは?と。



「(コイツらが皆死んじまえば、スッキリして生きれるんじゃないか?)」



こんな状況だ。自衛隊も動き始めているはずだ。それまでにコイツらがモンスターに殺されれば。



「ん?自衛隊…通報‼︎」



俺は立ち上がる。



「どうした?」

「警察消防救急隊に通報するんだ‼︎モンスターパニック映画みたいな状況でも、場所を知らせておくだけでも、救助が早めに来る可能性が高まる‼︎」

「そうか‼︎誰か電話を‼︎」

「馬鹿野郎‼︎校則でケータイは登校時に全部回収されてるだろ‼︎」

「そうだった‼︎こんな時に古臭い校則が邪魔になるなんて‼︎」



俺と俺に話しかけてきた生徒が職員室に走り出す。



「あ」

「邪魔だ‼︎退け‼︎」



一瞬見えた、絶縁状態の幼馴染を押し除けて、職員室へと向かう。



「失礼します‼︎」

「します‼︎」



俺達は職員室に入る。誰もいない。どうやら体育館に向かったようだ。



「ケータイの場所はどこだ?」

「知らん‼︎いや、ケータイじゃなくても、固定電話使え‼︎」

「応‼︎」



男子生徒が固定電話をかける。



「ダメだ。回線ごとやられてるみたいだ」

「冗談だろ⁉︎」



俺も変わるが、うんともすんとも言わない。



「クソが‼︎何でこうなるんだ‼︎」



俺は受話器を叩きつける。



「アンテナか?Wi-Fiか?クソが‼︎クソモンスター共‼︎」

「一応ケータイだけ貰っておくか」



そう言って、男子生徒が携帯電話を回収する。俺もそれに倣う。



「ちっ、クソが。ネットもダメか」 

「俺、他の連中に伝えてくる‼︎」

「頼む」



男子生徒が走り出す。俺が伝えに行っても、信じてもらえそうにないからな。



「(さて、俺はどうするか?)」



見張してた感じだと、しばらく襲撃はなさそうだ。多少自由にしても大丈夫だろう。



『ーーー生徒の呼び出しをします。2年2組、【穂坂(ほさか) 九郎(くろう)】君。至急体育館に来て下さい。繰り返します』

「ん?俺だと?」



俺…穂坂 太郎は呼ばれているようである。



「ちっ、非常時だし仕方ないか」



俺は体育館に向かう。



*********

*********

●体育館●



「すみません、2年2組の穂坂です」

「おお、来てくれたか‼︎」



校長が俺の前にやってくる。相変わらずのハゲ頭に無駄に高圧的。ムカつく野郎だ。



「穂坂君ですね?生徒会長の【雅野(みやびの) (あきら)】です。【災害防災部】の件で確認したいことがあり、呼ばせてもらいました」

「確認したいこととは?」



俺は肩をすくめる。確かに災害防災部は俺が部長を務める、元5名の部活である。まあ、もう俺1人の部活であるが。



「災害防災部にはいくらかの飲食物の備蓄があったはずです。どのくらいの備蓄がありますか?」

「学校の備蓄分と合わせて、切り詰めても全員で1ヶ月。山の入り口にある公民館の備蓄分をカウントに入れても、4.5ヶ月程度ってところですね。工具とかも多少備蓄がある程度です。ああ、医薬品だけは充実してますよ。少し前まで勤めてた保険医の先生が、そこらへん熱心でしたので」

「思ったより少ないですね。もっと備蓄できなかったのですか?」

「元々が自衛隊とかの救助ヘリが来るまでの繋ぎ的意味合いが強かったですから。想定が地震とかそういう災害でしたので」

「そう、ですか」



生徒会長は少し考え込む。



「貴方も会議に参加して下さい。災害防災部としての知識が必要です」

「会議?」

「ええ、今後のための会議です」



こっちへと案内される。



「ここは…」

「来賓のゲスト用控室です。ここなら外に声が漏れないですし、部屋自体も広い」



既に何人もの人間が座っており、会議の開始を待っているようだ。



「お待たせしました。会議を始めましょう。副会長、お願いできますか?」

「はい、報告を始めます」

「(随分と落ち着いてるな)」



俺は違和感を考えながらも話を聞く。



「モンスター襲撃事件により、既に生徒6名教師2名の死亡を確認しています。負傷者はもっと多いです」



全員から短い悲鳴が上がる。だが、現場からいた人間からすれば少ない方だろう。



「通信設備が破壊されたのか、助けも呼べません。しかも街も燃えている」



部屋が騒めく。



「(まあ、絶望的状態だしな)」



俺も家族仲が良好ならば、不安になっていただろう。しかし、そうではなかったのだ。



「不幸中の幸いか。この学園は要塞化していた時期もあり、防衛向きです。しかし、食糧などが不足する可能性があります。早めに食糧等の物資を確保する必要があります」

「どのくらい保つんだ?」



教師の1人が手を挙げる。その問いに俺が答える。



「学園全ての物資を集めて、その上で節制して1ヶ月です。ただ、公民館の分も含めれば、3.4ヶ月は保つかと」

「う…む」



教師が考え込む。そこに副生徒会長が畳み掛ける。



「化け物達に奪われる前に、保管されている食糧を確保するべきかと思います。教員の方々の車で一気に公民館まで行き、生存者と物資を回収して学園に戻ります」

「ッ⁉︎」



生存者の言葉に教師達の間に衝撃が走る。公民館には日中から、それなりの数の高齢者を中心とした利用者がいる。そこが襲われたのであれば、その被害は…言うまでもないだろう。



「(ここにあの数来たって事は…生存者は絶望的だな)」



俺は内心でため息を吐き出す。



「運転できる教師の方と志願した生徒。それと生徒会で作戦を決行します。ご協力、お願いします」



こうして、公民館へ向かう事となった。



*********

*********

◆数十分後◆

●学園・正面校門●



校門の前には、2台の軽トラと1台のミニバンが、エンジンをかけたまま止まっていた。軽トラの荷台には生徒達が乗り込んでいる。



「(クソが。師匠の言葉がなかったら、志願なんてしなかったのに‼︎)」



軽トラの荷台に乗った俺は、唯一の武器である剣を抱え込んだ状態で、その場に座り込む。



ーーー力ある者には、時に義務が発生する。

「(クソが)」



門が開き、車が発進する。ガタンガタンと車が揺れる。



「逃走したモンスター達が周囲をうろついてる可能性もある‼︎道の両側の森に注意しろ‼︎」



俺も周囲を警戒する。動きはないようだが、油断はできない。



「(いや、絶対いるだろコレ)」



その瞬間、隣にいた女子生徒が弓を射る。確か生徒会の書記だった筈だ。



「(射ったってことは)」

「ギッ⁉︎」



木の枝の上にいたゴブリンが、頭を貫かれ、地面へと落ちる。明らかに一般人の技量からは逸脱している。



「(アーチェリー経験者か?戦力になりそうだな)」



しばらくすると、荒らされた公民館に到着する。窓ガラスは割られており、出入り口付近には死体も転がっている。



「うっ」



間近で死体を見た俺は、思わず吐き気に口を塞ぐ。



「穂坂君、物資はどこに?」

「職員控え室に地下倉庫の鍵があります。鍵を回収してから、地下倉庫へ向かいます」



答えを聞いた生徒会長が、全員の顔を見渡す。



「生存者を探しながら、モンスターを排除します。生徒会メンバーは上の階を、他の皆さんは物資の運び出しをお願いします」

「「「「応」」」」



俺達は公民館に突入する。最初にいたのは呆けた顔をしたゴブリンだった。その数は3匹。



「隙あり‼︎」

「「グギャ⁉︎」」



俺の横一線で、ゴブリン2匹の首が飛ぶ。



「ギッ⁉︎」



逃げようとしたゴブリンに、俺は腰のポーチから鉄串を取り出して投げつけ、後頭部に当てる。深く刺さったようで、ゴブリンがその場で倒れる。



「…は?」



しかし、俺はその場に立ち止まり、両手を見る。今のは何だ?と。



「(俺は鉄串を隠し持ってるなんて知らなかったぞ?だが、身体が自然と動いた?まるで何年も修練して、体が覚えてるかのように)」



思考を頭を振って振り払う。今はそんな場合ではない。



「(今はそんなことよりも、やるべきことをやらないと)」



俺は剣を構えたまま、周囲を見渡す。



「(伏兵は居なそう、か?)」

「おーい‼︎誰かいるか⁉︎」

「ちっ‼︎」



状況を理解していない教頭が声を上げる。そんな事をすれば、モンスター達を呼び寄せると何故理解できないのか?



「「「「ギギッ‼︎」」」」」



公民館の階段や部屋から、ゴブリン達が殺到する。



「ひぃっ⁉︎」

「クソがッ‼︎」



怯んだ教頭を押し退け、先頭に飛び出す。



「(全部で20以上30未満程度。俺ならやれる‼︎やってやる‼︎)」



数は確かに脅威だが、勝算が無いわけではない。ゴブリンについてはと但し書きが付くが、こいつらは連携もクソもなく、振り回しているのも木の棍棒だ。それにこちらも数はある。



「(問題は、平和ボケした烏合の衆って事だがな)」



さらに2.3とゴブリンを斬り殺す。もはや公民館の床はモンスターの血だらけだ。いや、人間の血で元々血だらけだがな。



「ッ⁉︎」



飛んできたそれを剣で迎撃する。粉々になったそれは、ボロボロの弓矢であった。



「弓兵だと⁉︎」



驚きつつ、腰のポーチの中にある鉄串を投げつける。粗末な弓を使っているゴブリンの頭を貫く。



「舐めるなァアアア‼︎」



背を奇襲しようとしたゴブリンを、上段から剣を振り下ろし、そのまま両断する。血液が俺の頬にかかる。



「ぜぇ…はぁ…」



俺は荒れた呼吸を整えながら、周囲を見渡す。どうやら生徒達が奮闘したようで、押し寄せたゴブリンはすべて始末できたようだ。



「今のうちに生存者の捜索と物資の運び出しを‼︎」



生徒会長の指示が飛ぶ。



「ちっ…」



俺も生存者の捜索を開始した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

エンド

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