・第一話 ーバットラックー
ダンジョンものとざまぁものを見た結果出来たものです。続くかは不明。
第一話
「バットラック」
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学校は嫌いだ。いや、今の学生生活が嫌いだ。冤罪で貶められ、誰からも信用されない学校生活なんて、最悪の一言だ。
ーーー・・達よ。妾は知っている。
ーーー汝らの世界の行方を。
友人も親友も幼馴染も家族ですらも、俺の味方は1人としていない。俺は1人だ。独りなんだ。
ーーー只人ならば生き残れまい。
ーーー力無き者が得られるのは死のみ。
ーーー汝らの世界は死で満ちるのだ。
ああ、こんなことなら、もういっそのこと…すべて壊れて、滅亡すればいい。人は全員死ねばいい。俺1人でいい。そう、俺独りで。
ーーー故に与えよう。
ーーー我が世界を救った恩をもって。
ーーー我が世界の人々の希望の対価として。
ーーーこの世界での汝らの力を。
ーーーこの世界で汝らが手に入れた物を。
…そう、思ってはいたが。
ーーー戻るがいい。
ーーーさあ、元の世界へ。
ーーーさあ、汝らの本来の人生に。
ーーーそして刻むがいい。
ーーー新たなる英雄譚を。
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●【真田学園】●
●屋上●
学園の屋上。貯水槽の上が俺の避難先である。購買で買える最も安いパン。それが最近の俺の食事だ。
「…クソが。マズイにも程があるだろうが」
愚痴を吐き捨てながらパンを齧る。アホみたいにマズイパンだ。吐き気がするレベルだが、腹だけは膨れるし、余計な食欲が湧かない。
「クソクソクソクソクソクソ」
むしゃむしゃと無理矢理咀嚼する。パンを無理矢理水で流し込む。
「はぁ…」
食事を終えた俺は、そのまま横になる。
「一雨きそうだな」
俺は雨が降りそうなほどの曇り空を見ながら、ゆっくりと目を閉じる。最近眠れてないため、睡眠に身を任せる。
「(どうせ、授業に出なくても…)」
いっそ、学校を中退して、田舎の港町でも行って、一人暮らしでも始めるか?
「(悪くねぇ…な)」
俺は夢の世界へと…。
「ーーー‼︎」
「ーーー⁉︎」
「ーーー‼︎」
「ちっ、うるせぇな」
起き上がった俺は、身体の重さに気がつく。そして、自分の服装を確認した時。俺は驚きの声をあげた。
「な、なんじゃごりゃあああ⁉︎」
今現在の服装は、ファンタジーに居そうな漆黒の軽装鎧。しかも腰には片手剣。
「お、俺学生服だったよな?こんなコスプレ」
しかし、コスプレにしてはしっかりした作りのようだし、剣もかなり重い。
「どうなってんだこれ?」
その時、地上から悲鳴が響く。しかも1人ではなく、何人もの声だ。
「次は何事だ?」
地上を見た俺は、思わず息をするのすら忘れた。そこで行われていたのは、"モンスターによる襲撃"であった。モンスターも10や20ではなく、100以上の数が校門に詰めかけていた。
「な、え?」
既に数匹侵入した後のようで、血の池で横たわる人間が何人か視認できる。しかも、その人間達も俺と同じく、ファンタジーな武装をしていた。
「いったい何がどうなって…ッ⁉︎」
その音に気がついた俺は、流れるように剣を抜き、音の方向に振るう。
ーーー⁉︎
音の主は一撃の斬撃で、屋上へと墜落する。
「…バッタ?」
それは大型犬サイズのバッタであった。
「下のとは違うが、これもモンスターだな」
そういえば、田舎の親戚にバッタは共食いするし、なんなら他の虫の死体を食べることもある…と聞いたことがある。大きければ人も襲うか。
「それにしても、何故だかこの剣が使いやすい。手に馴染むようだ。真剣すら握った事ないのに」
その瞬間、また音がする。それも2つ。
「クソ…こんなことなら、屋上で飯とかやめておけばよかったぜ」
俺は剣を構える。現れたのは先程と同じ巨大バッタ2匹…感覚でわかる。
「俺なら、殺れる」
俺は剣を構える。迷う必要はない。俺ならコイツらを殺し尽くせる。
「シッ‼︎」
俺は剣を振るう。1匹のバッタを斬り殺し、返した刃で、襲いかかりそうだったバッタを両断する。
「ふぅ…3匹、か」
剣を振るって血を払い、剣を鞘に戻す。
「ちっ、それどころじゃねぇ‼︎」
俺は屋上の入り口を開け、階段を駆け下り、3階2階1階へと降りていく。
「退け‼︎」
「うぁ⁉︎」
「おい‼︎」
生徒達を押し除けて、校門へと向かう。視認できるモンスターは、ファンタジーの常連モンスターのゴブリン一種類のみ。
「(俺でやれるか?)」
校庭に出ると、そこには驚きの光景が広がっていた。襲われる生徒達。そんな中で武器を振るい、モンスターを撃退する生徒達がいた。
「校舎の中に避難しろ‼︎戦える奴はモンスターと戦え‼︎」
「「「「「応‼︎」」」」」」
モンスター達と戦う生徒の誰かが叫ぶ。それに呼応して、武装した生徒達がモンスターに武器を振るう。
「クソが‼︎死に晒せ‼︎」
「ぎゃああああ⁉︎」
剣を抜いてモンスターを斬り殺す。さらに返す剣で女子生徒を襲おうとしたモンスターの頭を飛ばす。
「校舎まで走れ‼︎」
「は、はい‼︎」
女子生徒が校舎へと走り出す。
「さて、とッ‼︎」
「グゲッ⁉︎」
手近のモンスターを切り殺した後、俺は周囲の確認を行う。戦況の確認である。
「(校門の周りは封鎖できてるが、問題は中に入ったモンスター…でもなかったな)」
戦闘に参加している生徒達が、何故か手際よくモンスターを始末していた。この調子ならもう少しで、校内に侵入したモンスター達を掃討できそうだ。
「フン‼︎」
「ぐぺ⁉︎」
近付いてきたモンスターの脳天をかち割る。
「たく、こういう時だけは剣術習ってて良かったと思うよ」
こう見えて、俺はとある剣術を習得している。気難しいが、親戚にはとても甘い遠縁の親戚に教えてもらった。
【鬼人流剣術】という、祖を示現流に持つ攻撃的な剣術だ。それ故に、親戚である師匠からは剣道部どころか、スポーツ系の部活や試合に出るなと言われている。
「っと、侵入した奴らは片付いたか」
剣を振るって刃についた血液を振り飛ばす。血液が地面に飛び散る。どうやらモンスターの血液も赤いようだ。
「あとは校門だが…」
校門を見ると死体の山ができていた。モンスター達の死体の山だ。生き残りは逃走したようだ。
「一息つけそうだな」
俺は剣を鞘に戻す。周囲を見渡すと負傷者がいるようで、無傷の生徒達が手を貸していた。
「ちっ、クソが」
しかし、生徒の中には犠牲者も少なくなかったようだ。血の中に沈む生徒達もいる。教師も何人か犠牲になったようだ。
「ん?教師は武装してないのか?」
教師の死体を見ると普通の服装である。どうやらこの武装は生徒のみのようだ。
「クソ。いったい何がどうなってやがるんだ」
「ーーーおい‼︎手を貸してくれ‼︎」
声のした方を見ると、負傷した生徒に肩を貸す教師がいた。生徒の右足はあり得ない方向に曲がっていた。
「…ちっ、クソが」
俺はため息を吐いた後、教師の元へ向かう。
「肩を貸します」
「悪いな」
「あ、ありが…うっ」
肩を貸した俺は、そのまま校舎へと向かう。
「出入り口を塞げ‼︎モンスターを通すな‼︎正面の校門以外は完全に封鎖しろ‼︎」
生徒達が慌てて出入り口を塞いでいる。
「アイツら何なんだ⁉︎痛い…何でこんなことに」
「少し黙って歩け。痛いのは分かるが、今は我慢しろ」
しばらく歩くと校舎に入る。するとすぐに他の生徒が駆け寄る。
「酷い。すぐに保健室へ」
数名の生徒が負傷した生徒を連れていく。
「おい‼︎動かすの手伝ってくれ‼︎」
「あ、ああ…」
俺は他の生徒と共に下駄箱を運び出す。
「裏門から塞ぐぞ‼︎」
手際よく…それこそまるで知っていたかのように、出入り口が封鎖されてゆく。
「よし、これで侵入できないだろ。遠距離攻撃できる奴は、ここで見張りを頼む‼︎」
「「「応‼︎」」」
数人の弓矢などを持つ生徒達が、校門の内側から外を見張る。
『全生徒及び教員はすぐに体育館に集まってください‼︎一部生徒は引き続き見張り等をお願いします‼︎またモンスターの襲撃が予想されます‼︎一部生徒は見張り等をお願いします‼︎』
「ちっ、マジかよ」
俺は思わず舌打ちする。
「(さて、俺がやるべきことは…)」
少し考え込む。
ーーー力ある者には、時に義務が発生する。
「ちっ、クソが」
俺は師匠の言葉に従い、校門の守りに向かう。守りの薄い正面の校門に向かう。校門には既に10名近くの生徒達が見張りをしていた。
「ちっ」
舌打ちした後、俺は近くの壁に背を預け、その場に座り込む。
「ふぅ…」
俺はようやく一息つく。今更ながらに手が震える。そういえば、命の取り合いをきちんとしたのは、今回が初めてだ。
「おい、大丈夫か?」
「ん?ああ」
見覚えはあるが、名前の知らない男子生徒が俺に声をかけてくる。学校での俺の評価を知らないのだろうか?
「これでも食え。少しは落ち着くだろ」
「遠慮させてもらおう。昼飯終わったばかりなんだ」
俺は差し出されたチョコレート菓子を断る。
「そうか?まあ、流石にすぐの襲撃はないだろうから、一息つけるだろ」
「いや、ゴブリンみたいなのだけじゃなくて、巨大なバッタに襲われた。たぶん、ジャンプか滑空か分からんが、飛んでくる奴もいるぞ」
「マジかよ⁉︎ドラゴンとかじゃないだけマシと思うべきか?」
「さあな」
俺は肩をすくめる。
「…さっきのは何だと思う?」
「ん?ゴブリンじゃねぇか?」
「何でゴブリンがこんなところにいるかって話だよ」
「さあ?出たってことは出るもんってことだろ?事実は消せないしな」
男子学生はそう俺の質問に答えると、校門の見張りに戻る。
「クソが」
俺はそっと目を閉じた。体力を温存するために。
「ーーーおい、あれ」
「マジかよ…」
「ん?」
ざわつき始めたため、その方向に視線を向ける。そこには、黒煙があちらこちらから上がる街が見えていた。
「おい…おいおい‼︎嘘だろ⁉︎」
街が焼けていた。
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エンド
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