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パーシヴァル、グウィオン


カールレオン城の中庭の木陰で、パーシヴァルはゆったり腰掛け、空を眺めながら、物思いに耽っていた。 風が、パーシヴァルの黒髪と赤いマントを揺らす。

これはパーシヴァルの話である。


小さい頃『チェンジリング』…妖精に赤ん坊を交換されたのだと、女に手を引かれ、荒れ森で育てられた。女はパーシヴァルを自分の子として育て…そして、パーシヴァルが騎士になるのを望まなかった。

だが、あるとき、パーシヴァルはランスロットと、彼の戦いを目にした。そしてランスロットに憧れ、彼のような騎士になろうと思った。 自分を育てた母親は、溜め息を吐き、別れのときに一つ教えてくれた。『貴婦人から、口付けか宝石を手に入れなさい』と。

そして、パーシヴァルが荒れ森を出ていくと、母親は死んでしまった。

途中、パーシヴァルは天幕(テント)に寝ていた少女を見つけ、口付けをしてそっと指輪を持ち去った。また、打ち捨てられていた剣を拾って身に付けた。

途中で馬に乗った騎士に遭遇し、戦いに発展してしまったが、パーシヴァルはどうにか切り抜けて相手の騎士を倒し、馬や鎧を手に入れた。

鎧はぶかぶかだし、装備の仕方もわからないしで、ガチャガチャ鎧を鳴らしながら、キャメロットを目指して歩いた。そして、歩いた先の花畑で、憧れの存在であるランスロットに…自分がずっと昔にいた、カーボネック城の妹、エレインがいた。

懐かしい再会と、始まりだった。

パーシヴァルはキャメロット……カールレオン城にて、円卓の騎士に迎え入れられた。

ランスロットは、パーシヴァルに鎧の付け方や馬の乗り方、馬上槍試合、様々なルールや戦い方を教えてくれた。元来、純粋なパーシヴァルは呑み込みが早く、みるみる、他の円卓の騎士達を越えて、ランスロットやガウェイン、アーサーに匹敵する程に成長していった。

パーシヴァルを一言で言うなら『純粋』だ。

無垢で心が澄んでいる、それが彼を聖杯に繋げたのだろう。

アーサー王の宮廷にて、パーシヴァルは『赤い騎士』が大事な盃を盗んだので、これを取り戻して欲しいと言われた。パーシヴァルはこの騎士を追跡して盃を取り返した。

その後、パーシヴァルは老騎士ゴルヌマントの元で暮らすように言われた。

パーシヴァルは彼の傍で騎士道を教わり、騎士に叙任して貰った。

あれから、随分年月が経った。

ブランシュフールという美しい女の城を包囲していた、クラマデュースという騎士を破って、ブランシュフールと恋をした。

カーボネック城の老人から、聖杯の剣を貰い、聖杯の行列を見つめた。

パーシヴァルは『聖杯とは何か、誰の役に立つのか』という質問をしなければいけなかったらしいが、それをしなかった。

そのせいか剣がバラバラになり、それを、いとこに指摘された。

パーシヴァルは聖杯の剣をトレビュシェットのところに持っていって修理して貰った。

パーシヴァルは以前、天幕の中で口付けをした女性に再会して…パーシヴァルは彼女の夫を打ち負かして、彼女と五年の間、付き合った。

だが、結局、罪障の問題で別れた。今、結婚しているは別の女性だ。

黒髪で明るく、赤いドレスを良く好んで着る……溌剌とした美しい女だ。

湖の巫女でも竜でもない、正真正銘の人間の女。自分とは違う他人の女。

聖杯の剣はあの後、姪のガラハッドが持っていた。今はマーリンの元に返されている。

が、まだ赤子の息子、ローエングリンを抱いてパーシヴァルの元にやって来た。

側にはパーシヴァルの妹エレインが、ランスロットとの間に生まれた双子を連れて、楽しそうに話している。

「あなた、こんなところにいらっしゃったの」

「お兄様、一人で考え事ですか?」

二人が話し掛けてきて、パーシヴァルは「いいや」と肩を竦めた。

爽やかな風がザワザワと通りすぎて行った。

パーシヴァルは他に、父ペリノアが追い掛けていた竜…いや竜なんだか獣なんだか良くわからない、唸る獣『クエスティング・ビースト』を追い掛けていた。

これは、父……カーボネック王のペリノアや、バラメデスという南方から来た、褐色の騎士と共に一緒に追跡した。

ペリノア王は、赤みがかった長い黒髪に、ボロボロのマントを羽織っている。

今や妻エレインがかりそめの命を得て、側にいるのだが…最早、唸る獣『クエスティング・ビースト』を追い掛けるのは最早、日課というか趣味になってしまっていた。

カーボネック城には良く、南方や東方から褐色や黒髪の騎士がやって来た。

まず、冒険の間という部屋が……すなわち、その部屋の扉が……色んなところに通じるのだ。

パーシヴァルの妹のエレインは、幼い頃、この冒険の間の扉から、ガリア(フランス)のブロセリアンドの森に出てしまって、ランスロットに出会った。

この冒険の扉は、ガリアとイスパニア(スペイン)の間のピレネー山脈の山にも通じるし、もっと南方の黒髪に褐色の人々が住まう土地や……もっと東方の、黒髪の人々が住まう土地にも通じるのだ。ガラハッドもそれで、東方の土地に出て育ったのだろう。

普段、この冒険の扉は皆開かないように……開かずの間にしている。だが、たまに客人がやって来るのだ。

ペリノア王だけが細かいやり方を知っている。そして、基本は彼が使うときのみ、開かれた。

パーシヴァルは、南方の褐色の騎士パロミデス(冒険の扉からやって来た)と、ペリノア王と共に、冒険の扉から、唸る獣『クエスティング・ビースト』を追って旅をした。

そして、ある日ようやく……三人は、このわけのわからない野獣に会うことが出来た。

この野獣は、頭は蛇、胴は豹、尻はライオン、足は鹿で、腹からは四十頭の犬の唸り声が聞こえた。さすがのパーシヴァルも、これにはビビってしまった。

だが、ようやく唸る獣『クエスティング・ビースト』を見ることが出来たと、パーシヴァルは円卓の食事どきに、アーサーやマーリンに感慨深げに報告した。

「唸る獣『クエスティング・ビースト』を、ずっと父と追い掛けていたんですけど、ようやく見つかりました。いや、取り敢えず父が目的を果たせて良かったです。

本当に良かった」

アーサーは「クエスティング・ビースト」と繰り返し、マーリンは「……なんかそれって、東方の妖怪の『(ぬえ)』みたいですね」と言った。

「ペリノア王は妻のエレインも取り戻して、念願の唸る獣『クエスティング・ビースト』も見つけて、どうするんでしょうか」

「また、どこかにぷらっと冒険に出るんじゃないですか。最近はパロミデスという、南方の褐色の騎士と良く行動してて、母のエレインは『つまんない』って怒ってますよ」

パーシヴァルは嬉しそうに言った。

パーシヴァルの隣で、パーシヴァルの妻の…金髪に赤いドレスのが、息子の幼いローエングリンに食事させながら溜め息を吐いた。

「もう、唸る獣『クエスティング・ビースト』を追い求めることもありませんよ」


その日、季節は冬で雪が降っていた。

キャメロットの都もカールレオン城も真っ白に雪が積もり、軒先からは氷柱が垂れ下がっていた。皆、毛皮のコートやマフラーを身に纏って、部屋の暖炉に薪をくべ、火を入れて暖まっていた。男達はシャベルを手に雪を掻き、女達はケープを羽織り毛糸で編み物をしていた。

マーリンは小屋で暖炉にあたりながら、テレビを見ていた。

サッカーやテニスのニュースがやっている。

グウィオンもその日はカールレオン城にいた。

最近、マーリンに呼ばれ、マーリンの大鍋を使った調合などを手伝うのだ。

マーリンは用心深いので、本当に出来る奴じゃないと手伝わせない。

グウィオンは若いドルイドで、『タリエシン』と呼ばれ、マーリンの後継者とか、もう一人のマーリンなどと言われていた。

マーリンは大きな樫の杖をつき、アーサーに様々なことを教える、宮廷魔法使い。そしてドルイド七賢人の大司祭長だ。

彼が老いたマーリンならば、グウィオンは若いマーリンなのだ。

銀髪でおでこを出し、黄緑色の瞳で、白と緑と茶色の幾何学模様のローブを着ている。

彼は天才と呼ばれていた。

時魔法や召喚術が得意だ。少し、アイルランドの英雄、フィン・マックールに少し似ている。

フィン・マックールは親指についた知恵の鮭の精を舐め、知恵を手に入れた。グウィオンも同じだ。母ケリドウェンに大鍋をかき混ぜるように言われ、親指に付いた汁を舐めたら、グウィオンは過去や未来全てのことがわかるようになった。その日も、言われた材料を紙袋に詰めたグウィオンが、マーリン小屋にやって来た。

マーリンが紙袋から、鬼胡桃や鹿の角を粉末にしたものや、竜の鱗、今の季節は手に入れづらい数種類の薬草などチェックした。

「ちゃんと揃ってますね。ありがとうございます。それではこれを」

マーリンはグウィオンに小さな皮袋を出した。

「何ですか?」

「背が二十センチ伸びる薬です」

グウィオンが早速薬を飲むと、確かに背が伸びた。

「服がきついです」

「じゃ、僕が青年時代に着ていた服をあげますよ」

マーリンはそう言って、灰色のローブをグウィオンに渡した。

マーリンはやがて、コーヒーを煎れてグウィオンに出した。

「最近、コーヒーに凝ってるんですよ。カマーゼンのドルイド学校の購買所で買って。

アーサー達にも出してるんです」

グウィオンはコーヒーをそのまま飲んでしまい、マーリンが慌てて砂糖とミルクを入れた。

グウィオンは首飾りみたいにハーモニカを首にぶら下げていた。

「ハーモニカ、吹くんですか」

「はい。最近は良くカールレオン城の屋上で一人で。余り上手い方じゃないですけど。良くリュネットさんが聴いててくれます」

「良かったですね」

カールレオン城ではリュネットがくしゃみをしていた。

フクロウのピュタゴラス二世が羽根の手入れをして喋った。

「ぽっぽという鳩に出くわしたが、ぽっぽとは何か聞いたら蒸気だと言っていた。あいつは食えそうもないな」

ちょうど、マーリン小屋に、行商人がやって来た。

マーリンとグウィオンが外に出るとチャイナ服を着た、糸目に黒ひげの男が「何か買ってある」と軽トラックから降りてきた。二人の小さなチャイナ服姿の女の子も降りてきた。


マーリンやグウィオンがごそごそと軽トラックの積み荷を見ていると、他の人達もやって来た。

「前、このキャラのアニメ見たなあ」

アーサーはカンガルーの人形を見た。

「何か良くわからないけど、いっぱい色んなのがあるんですよね」

女達も色々漁っていた。グウェンフィヴァルはアイロンや掃除機に興味を示し、グウェンフィヴァフは大きなひよこの人形をポコポコ叩いていた。あと鏡と、もふもふした扇子が気に入ったみたいで買っていた。

親指トムも色々見た。

現在、巨人のガルガンチュアは冬眠中で、彼の家であるカールレオン城の裏山にある穴蔵で、ベッドにくるまって寝ている。

巨人用の暖かい毛布があったので、トムは買って魔法で毛布を浮かせ、ガルガンチュアの住む穴蔵に持って行って、そっと置いておいた。


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