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ニムエ、ヴィヴィアン、ヴァレリン


森では猪や豚が駆け回っていて、狩人に仕留められていた。

昼下がりのカールレオン城。

アーサーはマーリンの小屋で、ソファーに寝転がりながらテレビを見ていた。

 アトランティスや、天空の城には行った。今は、一緒にテレビを見ていたマーリンと話していた。 マーリンは、最近は青年の姿でいることが多かったが、今はまた少年姿に戻ってぶかぶかの緑のローブを着ている。

「マーリンってイケメンだよな」

「ええ、まあ」

マーリンは新聞を読みながら言った。親指トムがテーブルに飾られた花の上で、鼻ちょうちんを出して昼寝をしていた。眼鏡を掛けたグウェンフィヴァルが入ってきて、アーサーが膝掛けにしてたブランケットを引っぺがした。

「あっ、何するんだよ」

「干すのよ!」

そう言って、ブランケットを天日に干して、マーリン小屋を細々動いて掃除し出した。

マーリンもグウェンフィヴァルを手伝ってテーブルや周辺を拭いたりした。

「グウェンフィヴァルはしっかり美人ですよね」

アーサーは「手伝わないならちょっとどいてよ」と邪魔者扱いされて「うるさいなー」と文句を言いながら、本を持って外に出た。

「……どうしようかな。日向ぼっこしながら本でも読むかな」

外は、午後の日差しが照ってポカポカしている。

アーサーは青いマントをバタパタと叩いた。

マーリン小屋の脇に生えた赤いキノコの上では、ピクシー達がクスクス笑っていた。

 グウェンフィヴァルはマーリンの小屋に溜まってた、埃の被った本や薬草や、ベッドの布団まで引っ張り出して、天日に干していた。

「もう、城内は侍女達が掃除したり洗濯したりするけど、本当この小屋は誰も手入れしないんだもの。もっと普段から綺麗にしなさいよ! 聞いてる? アーサー」

「……なあ、何でマーリンの小屋なのに僕が怒られなくちゃいけないんだ?」

マーリンは「……いやあ~。ははは」と苦笑いしていた。

親指トムもびっくりして、マーリン小屋から出てきて、全身の埃を払った。

「……はあ。温泉に行きたいなあ」マーリンは、本の埃をバタパタ払いながら呟いた。

小屋を見上げると、屋根のてっぺんでは梟のピュタゴラスが寝ていた。

 

訓練場では、ランスロットとガウェインの指示の元、騎士達が訓練をしていて、男達の声で賑やかだ。調理場の近くの井戸では、エプロン姿の侍女達が噂話に花を咲かせ、調理場では料理が趣味の……赤みがかった髪の毛のガレスが、小人のメロットとシチューの味見をしている。

ガレスにはリオネッスという金髪の彼女がいる。リオネッスの姉リュネットは、話が盛り上がらない。あと、いまいち気が合わない。が、まあ何だかんだでリュネットは妹思いだし、リオネッスを助けるための旅の仲間で友達だった。

リュネットが調理場に顔を出して「あれ、ガレスじゃん。あんた相変わらず真面目だね」と言ってきたので、ガレスは「はいはい」と適当にかわした。

「あたしの妹のリオネッスに宜しくね」

その後、グウィオンもマーリンに習って背が高くなる魔法を使ったらしく、銀髪に黄緑色の瞳のイケメンになっていた。

「……はあ。やっぱり、冒険もいいけど日常が落ち着きますね」

マーリンは、右手で自分の肩を叩きながら微笑んだ。

マーリンは手にした本を見て、アーサーに聞いた。

「アーサーは世界の秘密って興味あります?」

「ない」

「僕達に誰かを操る力なんかないですよね」

「そうだね」

ヴァレリンは湖畔の古城で、弟子の眼鏡の女の子に薬の調合の手伝いをさせて、本をパラパラめくって読んでいた。そこへニムエが転移呪文でやって来た。ウェーブの掛かった金髪で、顔の片側を隠している。

「随分、まともにったわね。変なの」

「そうかな」

「前よりは今の方がマシだわね。良かったわ」

「なんで良かったわなんだよ。あ、君、そこの薬草取って」

「もう、変な方向に行くんじゃないわよ。あんたはあんたなんだからね」

「そう。僕は僕だ。…そうだな」

 最近、皆が狼男だと思っていたチューバはライオンみたいな、長いたてがみが生えてきて、円卓の間で食事しながらモルドレッドは「チューバ、お前って一体なんなんだ?」とチューバに聞いていた。チューバは首を傾げて小さく唸った。モルドレッドは塩鮭は苦手なので食べなかった。

 ヴァレリンの元にマーリンがやって来て、ガラハッドについて話した。

「男のガラハッドも女のガラハッドも、あの子達はあの子達。自由の身さ。僕も闇属性は卒業したよ。あの子達、魔法使えないよね」

「光属性や氷属性他、各種適性があるみたいですけど、まあ騎士ですよね」

「光属性の魔法が得意なのはニムエだな」

小さな黒髪に眼鏡の女の子が近くの机で一生懸命に、ヴァレリンに言われた調合をしていた。


モン・サン・ミッシェルから帰還して月日経ち、夏が来ていた。

ガリアのブロセリアンドの森はミルクのような深い霧が立ち込めて、木々が鬱蒼としていた。

森の奥に佇む湖の底には、湖の巫女ヴィヴィアンの城がある。

最高の騎士ランスロットが育った城だ。

この湖はとても清浄で、水を求めて鹿や狼や野牛や、時には妖精やユニコーンやケンタウロスもやって来た。

ヴィヴィアンは長い銀髪で、湖の巫女でも少し変わり者だ。

だが、ランスロットの師匠であり、頼れる存在だ。ランスロットが小さいときは、良く、剣の修行をさせたり、狩りをさせたり、薬草を取ってこさせたり、茶を入れさせたり、料理させたり、洗濯させたり…まあ、色々させた。主に家事ばかりな気がするのは、きっと気のせいだ。

お陰でランスロットは、とても気立てのいい騎士に育った。男が気立てがいいのは、ちょっと違う気がするが。

ヴィヴィアンはニムエと共に、ドルイド七賢人であり、乙女の城の教師でもある。眼鏡は掛けていない。休日は、いつも親友のニムエとティータイムを楽しむ。そして、愚痴を吐くのだ。

その日も、ヴィヴィアンは午後のお茶を楽しみながら、ニムエとあれこれ話していた。

ニムエは片目をウェーブのかかった金髪で隠していた。

「最近、ヴァレリンの奴がまともなのよね。小さな女の子の弟子を取って、まともに教えてるのよ」

「いいことねん。ヴァレリンて、私達の同期でも才覚あったわねん。モテてたし」

「そうだったかしらね」

「試験のたび、私達とヴァレリン、三人組まされたわね。ニムエはヴァレリンと喧嘩ばっかりで」

「最近はしてないわよ」

茶を啜りながら、ニムエはだべった。

「ヴィヴィアンってヴァレリンが好きだったの?」

「何で?」

「ヴァレリンのことばかり聞いて来るから。あんた、どんな男の人がタイプなの?ベイリンとベイランで言うと」

「どうかしらん」

ヴィヴィアンはカップを置いた。

「別の世界の私が、ベイリンに殺される本を見たの。でも、それが私ではない湖の巫女の話もあったわ。そう。ベイリンに殺されるのは『ヴィヴィアン』と決まっていたわけではない。でも嫌な気分よ。それに、ベイランが助けてくれたかというと違うわ。だって、ベイランはベイリンがすることを黙って見ていたんだもの。心は私より、ベイリンの味方だったと思うわ。

この前、ベイリンとベイランの二人に嫌いって言ってやったわん。二人は意味不明で困ってたけど」

 ヴィヴィアンにニムエが言った。

「私の名前、ニムエはヴィヴィアンとも呼べるし、ヴィヴィアンはニムエとも呼べる。私達は姉妹みたいなもの。湖の巫女に、他に姉妹がいるけど、どう思う?」

「ベイリンやベイランとは無関係だわね」

「…そう。無関係でいいの。この世界のベイリンとベイランには、預かり知らぬことでしょうね。あんたとも無関係よ。他にどんなのがあった?」

「うーん。私が覗き魔の、酷い悪役なのとか。あんたが幼女で、お爺さんのマーリンと恋して死んでしまう話とか」

「嫌になるわね」

「でしょ」


その頃、マーリンは双子の姉妹ガニエダに会いに、乙女の城の湖近くにある彼女の屋敷に訪れていた。椅子に座り、二人で話した。

「すっかり夏ですね。暑くて」

「雪の魔法が使えれば、降らしてやっても良かったんじゃが、あいにく、わしは炎や竜化が得意で、氷は苦手でな」

「知ってますよ」

「意見が違わず、時が過ぎて良かったな。お陰で、私がベイリンに首を斬られることもなかったし、マーリンがニムエに岩屋に封印されることもなかった。

互いに争うこともなく。穏やかに時は過ぎた」

「アーサーは、いにしえの民やゲールの者達を弾かずに大切にした。そう。それでいいんです。

違う宗教や様々な文化を受け入れることが、僕は大事なのだと思います。だから僕達はもう大丈夫」

「最近は、マーリンはどう過ごしておるのじゃ?」

「獰猛な巨人をたくさん殺して、マン島の古城の地下に閉じ込めてたんですけど。生き残った奴等も互いに殺し合って、皆死にました。次は僕の城……ガラスの城に久々に帰ろうかなと」

マーリンは「僕ってお爺さんなんですけど」と溜め息を吐いていた。

  

マーリンは何となく、ヴァレリンに会いに、湖畔にある古城を訪れた。

ヴァレリンは最近、髪を黒く染め、髪も少し伸ばしていた。

彼は相変わらず、失われた大陸に行き、好きに研究を続けていた。弟子の小さな眼鏡の女の子も好きに研究しているようだった。マーリンはヴァレリンに「最近はどうですか」と聞いた。

「僕は君が好きなんですよ」

「そうだ。最近面白い研究をしたんだ。見てみて」

ヴァレリンはそう言って、マーリンに眼鏡を見せた。眼鏡はピョコッと手足が生えて、動いて喋りだした。

「貴方はマーリン殿ですね。お噂は聞いています。どうぞ、宜しくお願いいたします」

「眼鏡の精だよ。喋れるように術を掛けたんだ」

マーリンは驚いて喋る眼鏡と、素顔のヴァレリンを見比べた。

「マーリンは素顔の僕と眼鏡、どっちが好き?」

「眼鏡ですね」

「眼鏡の魂は眼鏡である彼らにある。別に僕自身が眼鏡なわけではないからね」

ヴァレリンは大きな樽を運んできて蓋を開いてマーリンに見せた。「これ見て」

樽の中には眼鏡の村が広がっていた。沢山の眼鏡の妖精達が動き、賑やかに喋っていた。

「最近ヴァレスって奴が死んじゃって。庭に墓を作ってやったよ」

まださっきの二つの眼鏡が言い合っていた。

マーリンがヴァレリンに「貴方は誰が好きなんですか」と聞いた。

「金髪。金髪の巨乳美人。でも幼馴染みのニムエがいるからな」

「ニムエも金髪美人ですね」

「まあな。僕は、金髪や茶葉の女が好きなんだ」

そう言うと、ヴァレリンは眼鏡を掛けた。さっき喋った眼鏡は黙って手足を引っ込めた。

「マーリン、君は訪ねてくるたびにガラハッドの女の方について聞いてきたね」

マーリンは「いや、なんとなく」と呟いた。

その頃二人のガラハッドが、行商人がやって来たので色々見ていた。

女は羽根ペンを、男の方はエキゾチックな服を買った。あと、アラブのランプを見ていて「何だか懐かしい気がする」と言っていた。他の世界で、砂漠の国を治めたことがあるからだ。


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