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褐色の肌の姉妹

ガラハッドは部屋で、猫になったもう一人のガラハッドと会話をした。

そして、色んなものを苦手と言いまくっていたので、自室で、今更になって(あれこれ苦手って言わない方が良かったのかな)と後悔していた。以前、大青で青く染まった頭を垂れ下げる。

何となく、カールレオン城の裏庭に生えてる栗の木から、栗を拾って窓辺に置いた。

「……何か、最近透け出してるんだ。まあ、既に死んでるようなもんだけど。苦手と言いまくって申し訳ありませんでした」

もう一人のガラハッドは、この世界にいるアグレスツィアがどうしてるか見に行ったことについて話した。

「こっちの世界で、アグレスツィアは、今は死なずに暮らしているみたいだ。良かった」

「それは、良かったですね」

そう言って、ガラハッドは猫になってしまったガラハッドの頭を撫でた。

兵舎の一階にある広間に降りると、パーシヴァルがボールスと話していた。

以前、アファンク戦で入手した宝石は結局売って、そのお金で、家族や親戚と美味しいものを色々食べたらしかった。

「……もう、一晩で全部使っちゃったよ」

「美味い燻製肉、ごちそウーゼルん」

ガラハッドはぼんやり、自室で猫を撫でながら考えていた。

(……何で突然、もう一人の私が出てきたかな。どうしたらいいんだろう)

猫になったもう一人のガラハッドが、前足で髭を整えながら言った。

「君には戦闘時、活動限界があるからさ」

「本当は、女は戦わない方がいいんじゃないかって思うんだけどね。普段、貴方ももう少し、女の格好したら?」

エレインが、ガラハッドを見て心配そうに言うのでガラハッドも悩んでしまった。

「……その方がいいの?」

ガラハッドは悩んで、スカートを身に付けるようになった。

ガラハッドを女と知らない騎士は、オカマかと思い始めていたが、彼女自身はスカート姿の自分の方がいいような気がした。ガラハッドが書庫から本を借りて渡り廊下を歩いていたら、グウェンフィヴァルが声を掛けてきた。

「……ガラハッド。ちょっと話があるんだけど……。あら、スカートをはいてるの?」

「はい。母がそうした方がいいんじゃないかって言うんで。……お願いって?」

「街の酒場『黒馬亭』のマスターに頼まれてた、傷藥を作ったから届けに行くんだけど…。一緒に行かない? うちの騎士達が随分、お世話になってるから……。派手に喧嘩したこともあるって聞くし……」

「はあ。わかりました。そういえば、最近は行ってませんね。護衛みたいなもんですか?」

「まあ、そうね」

ガラハッドは聖杯の剣を背中に背負って、グウェンフィヴァルに付いて、城下町に出た。

城下町の酒場、黒馬亭は、煉瓦が敷き詰められた城門通りを少し曲がって小道に入ったところにある。

昼前の黒馬亭は、さすがに人が少なかった。

最近は看板娘のベルはダンスは踊らず、メグと一緒にウェイトレスに励んでいた。

小さなステージでは、南方の国からイスパニアを経てやって来たという褐色の肌の踊り子、アステルが、扇子を手にエキゾチックなダンスを踊っていた。

しゃらしゃらした布地の少ない衣装で、素晴らしくプロポーションが良かった。

そして、近くの席にはアステルに似た、褐色の肌の美女がいた。

の妹、ネリーだ。

明るく溌剌としたアステルに比べ、ネリーは大人しい。

髪を三つ編みに編んで、ゆったりした長いスカートを纏っていた。

「あら、久し振りね。……今、名前はグウェンフィヴァルだっけ」

踊り終わったアステルがステージから降りてきて、グウェンフィヴァルとガラハッドの元に来た。

「お久しぶり、アステル。最近は博打には行かないの?」

「あら、最近はお客相手と睨みっこするぐらいよん」

「姉さんは、最近は火の魔法を使う炎のダンスの練習をしてるのよ。やめろって言ってるんだけど……」

グウェンフィヴァルと、褐色の姉妹の話に、ガラハッドは入り込めないでいた。

「ベイリンとベイランはどう?」

「どうかしらねー。まあ、色々あるけど……どっちも似た者同士って感じね。でも、二人のナンパ癖がちょっとね……」

「姉さん、夜型で太陽苦手だから、ベイリンとあんまり話す機会ないんじゃない?」

「そうねー。それに、何だかんだであの二人、あたし達より双子同士の方が仲がいいんだもの」

文句を言う姉妹に、グウェンフィヴァルは笑いながら言った。

「貴方達も、貴方達同士の方が仲がいいじゃない。ベイリンとベイランみたいに」

「そうねー。でもベイリンとベイランの双子の仲の良さには負けるわ。ずっといつも、二人でいるんだもの。その内、あたし達も二人で旅に出ちゃおうかな。今までみたいに」

「私達、今までも、二人で旅してきたの。踊りや占いなんかして……」

「……そっちの方が気ままでは、あったわね。別れちゃおっか。だって、ベイリンって未だに他の女のこと好きだって言うんだもの」

話はその辺にして、グウェンフィヴァルは、ガラハッドを連れて酒場のマスターに頼まれていた藥を届けると、ガラハッドを連れて黒馬亭を出た。

黒馬亭から、褐色の肌のネリーが飛び出して掛けてきた。

「……ちょっと、タロットで占ったんだけど……。ガラハッド、貴方色々と慎めって」

「慎め?」

「えっとね……。難しいわねー」

「どうしたらいいんですか」

「アーサーに聞け、ですって」

「はあ」

褐色の肌の女は、一枚のカードを出した。

カードには隠者と書かれていた。

「これよ、これ。隠者」

「隠者? そう言えば、もう一人の私が出てきたんですけど、どうしたらいいですか」

「適当にあしらっときなさい、自分なんだから!でもあんまり酷いことは言わない方がいいわよ」

アステルが出てきて、ネリーの横から顔を出して、ウインクして言った。

「あたし達は自由気まま、あの双子も自由気ままよ」


カールレオン城の裏にあるマーリン小屋では、マーリンがテレビを取り付けて、サッカーの試合やニュースを見ていて、後からアーサーがやって来て一緒に見ていた。

そこへガラハッドが、マーリン小屋にやって来て二人に相談した。

「あんまり、苦手って言い過ぎない方がいいですよ。ここぞというときに使うもんです」

「そういうもんですかねー。そこまでですか」

「さあ。でも、まあ試してみるのはいいんじゃないですかね」

ガラハッドは、テレビ画面を見ているマーリンに、何となく聞いた。

「マーリン様って、好きな方いるんですか?」

「昔に、妻を失いました。彼女はいっぱいいましたね」

「……へえ」

 アーサーも、テレビを見ながらガラハッドに言った。

「マーリンて、昔、結構女にモテたらしいからな。こう見えて」

「もう、恥ずかしいからやめて下さいよ!」

「あんまり女をナンパするんで、ガニエダに乙女の城、出入り禁をくらったんだよ」

ガラハッドは驚愕の目で、可愛らしい少年姿のマーリンを凝視した。

「……えへ!」

マーリンは可愛い子ぶったポーズで、ガラハッドを見上げた。

「し、師匠譲りなんですよ! ……師匠のナンパ相手は……ちょっと性別が違いますけどー」

「……そうだ、ガラハッド」

アーサーは、かしこまってガラハッドの方を見た。

「ギリシャの海に沈んだ大陸、アトランティスに遠征する話が出てる。……邪竜教団の大司祭と配下が、そこへ向かったというんだ。……異界アンヌゥンに行くようなもんだと思う。ランスロットも連れてくつもりだ。君も一緒に来るといい」

「……私が?」

「マーリンは……君とパーシヴァルとボールスが必要なんだと言ってる」

ガラハッドは驚いた顔でいたが、アーサーの真剣な顔に頷いた。

「……はい。ご指名、ありがとうございます」

ガラハッドはアーサーに頭を下げた。マーリンが真面目な顔で言う。

「……カマーゼンのドルイド養成所の販売所で、プリドウェン号という船を買いました。ちょっと特殊な船です。この船で、遠征することになります。アーサー、僕、グウェンフィヴァル、ケイ、ランスロット、パーシヴァル、ボールス、ガラハッド。それに、カマーゼンのドルイド養成所や乙女の城から一名ずつ。以上が主なメンバーになると思います。……でも」

マーリンは少し間を空けて、ガラハッドに重々しく言った。

「貴方の力を強化しなければいけない……。まず、寄りたい場所があります。

ガリア、ブルターニュ地方の小国の王、ホエル王から、巨人退治の要請が出ています。まず、そちらへ寄りましょう。そこで、貴方の力を見極めます」

マーリンに、アーサーが言う。

「巨人族っていうと凶悪な巨人の里が、北ウェールズのスノードニア方面にあるな。

東にある竜の谷と並んで、円卓の騎士達が、力試しに倒しに行ってるらしいけど。

僕も何回か行って倒したな」

「……まあ、話が通じる相手や、大人しい奴は手を出さないように言ってますけど。ガルガンチュアは優しいですし。でも、ブルターニュに現れたのはそういうタイプじゃないみたいですね」

マーリン小屋を出て、思い詰めた顔でガラハッドが呟いた。

「……私なんかが、大丈夫なんだろうか」

城門では、赤毛の双子ベイリンとベイランが下らない話で、盛り上がって笑っていた。訓練場では、ガウェインがランスロットと共に、騎士達に剣の稽古を付けていて、若い女達から声援を受けている。そして、グウェンフィヴァルは自室で、蛋白石の首飾りを大事そうに首につけていた。

数日後、マーリンの小屋の元に時空を越えてトラックがやって来た。

マーリンがこの前、ドルイド学校で購入した商品が、宅配便で届いた。

「すみませーん。マジョーナ宅配便でーす。ハンコお願いしまーす」

「ありがとうございます」

マーリンが、宅配人から包みを受け取っていそいそとハンコを押すと、宅配人は「ありがとうざいます」と帽子を下げて挨拶して、また帽子を被り直し、トラックでどこかへと去っていった。


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