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アーサーとシンリック

その日、アーサーとマーリンは、マーリンの小屋で、ボードゲーム……グウィズブィルで遊んでいた。大賢者マーリンも、グウィズブィルだけはどうも昔から、アーサーに勝てなかった。

「……アーサーは昔から、戦術を考えるのは本当に得意ですよね」

またアーサーに負けて、マーリンは口を尖らせて文句を言った。アーサーが嬉しそうに言う。

「やった、また僕が勝った」

巨人のガルガンチュアは岩を運んで、この前の雨で流されてしまった橋の修理を手伝い、親指トムは、カールレオン城の尖塔の上で日向ぼっこをしていた。

先日、アーサーはマーリンとケイとランスロットを引き連れて、ウェセックスの城へ行き、国王、シンリックに迎えられ、会見した。暫くの休戦協定を結ぶためだ。

ウェセックスの城はカドバリー城から、幾分か離れたところにあり、かつてはブリタニア王国の城の一つだった。

カドバリー城は、“以前”、滅んだとき、主に皆が生活した城だった。

今は、アングル、サクソン族の七王国の一つ、ウェセックス王国との戦いの最前線の城となっている。

シンリック王は、サクソン族をブリテンに率いれたセドリック王の息子で、サクソン族の代表というべき存在だった。今、セドリック王は健在だが、引退してウェセックス王国を若い息子に任せている。 サクソン族は破竹の勢いで、後々、このカドバリー城をその内に手にするが、カドバリー城は割りと持ち応えたという説もある。

アーサー達は馬を引き、大柄なサクソン族の者達にジロジロ見られながら、西サクソン族…ウェセックスの城に通された。

サクソン族はまだまだ、海賊はたまた山賊的なスタイルが抜けず、シンリック王は、スマラサクスを履き、狼の毛皮を纏っていた。だが、それも時と共に、洗練されて行く。

シンリック王は切れ長の目に、長い黒髪を後ろで束ねた、噂通りに美形の男だった。

後ろに、似たように毛皮を纏った、大柄な男達を引き連れていた。

会見は、ウェセックスの城の広間で行われた。

さすがに侵略する側の懐に、される側が飛び込んで入ってきたので、どちらも空気がピリピリしていた。

シンリックは普段はゲルマン語だが、ブリテン語……ローマ語も喋れた。

「お初に御目にかかります。この度は招待して下さり、ありがとうございます」

アーサーは広間に通されると、そう言ってシンリック王に手を伸ばした。

シンリック王は柔和な微笑みを浮かべて、アーサーの手を握り返す。

「いいえ、こちらこそ。アーサー王」

「貴方がシンリック王ですか。噂に違わぬ、美しいお方だ。これは悪口でなく、素直な感想ですから、余り気を悪くしないで頂きたい」

「ええ。良く言われ慣れてますから、お気になさらず」

アーサーは、そう言って笑うシンリックに、内心(言われ慣れてるのかよ)でちょっと突っ込んだ。

「……アーサー王、貴方の噂も聞き及んでおります。素晴らしい聖剣を持っているのだとか、十二の戦いを勝ち抜いたとか。まあ、十二の戦いはゲール同盟の王の数で、我々が入っているので、余り話すのはよしましょう。ブリトン人とサクソン人の村と村の間では矢羽根が飛び交っている現状ですが、今日はそのことはひとまず忘れましょう」

マーリンは、シンリックを見て(自信満々なのか、余裕があるのか)と、肩を竦めた。

会見を終えると、アーサーら一行はすぐ、ブリタニア王国……現在は主にブリテンの西方とフランスの北西部だが……。に、帰ることにした。

アーサーもマーリンもケイも、シンリックは信用に足りると思ったが、やはり敵陣に変わりはないのだ。

アーサー達は厩から自分達の小姓と馬を連れて、出立の用意をした。

シンリックとその家臣らは、丁重に見送りに出た。

そこへ、明るい女の子の声が聞こえた。

「シンリック様~!」

城内から、赤いドレスを着た明るい髪色の女の子が、元気良く走って来た。

少女は、家臣の一人に「今日はブリタニア王国からの客人が来るから、大人しく待ってろって言っただろうが!」と怒られていたが、シンリックが笑顔で「いいよ」と笑って女の子の頭を撫でていた。

馬に乗りながら、アーサーとケイが呟いた。

「誰かと誰かに少し似てるな」

「ランスロットとエレインに少し似てる」

二人に言われて、ランスロットは必死で「似てないですよ! アーサー王とモルガンのが似てません?」と言い立てる。

杖に乗って空に浮かんでいたマーリンは、その様子を見て笑った。

「……ゲルマンの地は酷く冷え込んで、凄まじい数のゲルマン民族が、南に移動して来ています。……様々な民族がこの地を支配して、支配されてを繰り返してきました。でも、ローマもそう……。この地で、かつては侵略する側だった」

マーリンは広大な空と地平線を眺めながら言った。

「……いつか、皆が、仲良く出来れば。そんな日が来たらいいですね」

「……うん、そうだな」

アーサーも、マーリンの視線の先を見つめながら言った。

一陣の風が吹いた。

アーサーは、すぐ近くに見えるサクソン族の村を見て思った。

(……こっそりサクソン族の村に寄り道して、モルガン……グウェンフィヴァルに、何か買って帰ろうかな。でも、身バレしないようにしないとな)

その頃、カールレオン城でグウェンフィヴァフがモルドレッドを追い掛けていた。

「あの、何で逃げるんですか! 私、お話したいだけなのに……」

モルドレッドは、わけのわからない幻や、グウェンフィヴァフがガウェインと仲良くするのを見てから、避けて逃げっぱなしだった。

が、グウェンフィヴァフが無理矢理に捕まえようと、モルドレッドのズボンを掴んだ。

そのまま二人で転んでしまい、モルドレッドはズボンが脱げて、パンツ丸出しになってしまったのだった。

半泣きのモルドレッドと、気まずそうなグウェンフィヴァフを見てガウェインが呟いた。

「……ちっこいの同士で、何やってるんだ?」


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