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かつてマーリンが見たもの・モルゴース

マーリンの小屋では、梟のピュタゴラスが木の実をついばんでいた。

マーリンは回想していた。

かつてティル・ナ・ノグで見た、別世界。

ブリタニア王国と王都キャメロット。

そして、アーサー王の滅亡を。

話は、ブリタニアとゲール同盟の亀裂に戻さねばならない。

ガニエダ。マーリンの双子の姉。湖の精。そしてアーサーに聖剣エクスカリバーを渡した湖の巫女の総巫女長。

円卓の騎士の一人、ベイリンが王座の間で、母の仇として彼女を殺した。

ゲールに携わる者達は大きな衝撃を受けた。

アーサーはベイリンを城から追い出したが、その処遇は甘過ぎるという声があった。

元々、当人達を差し置いて、キリスト教中心のランスロット派と、ゲール中心のガウェイン派で亀裂が出来ていた。

そもそも、奴隷の刻印など、(いにしえ)の民やピクト族などゲールの者達は差別や過酷な境遇下にあった。

彼らガウェイン派が我慢ならないのは、王妃であったグウェンフィヴァフの処遇だった。

ゲールの多夫多妻は悪いものとされ、キリスト教では一妻一夫だ。妻の部屋に他の男が入っただけでも不義となる。

だが、グウェンフィヴァフはキリスト教でありながら、ランスロットと良く共にいた。

明らかに不義だが、何の咎めもないことに、不満を持つ者は派閥を越えて多かった。

……何より、家臣達にとって問題は、彼女が子供を産まかったということだった。

……実のところ、グウェンフィヴァフはアーサーともランスロットとも、関係を結ばなかった。潔白だった。

アーサーは、家族や、様々な男から暴力を受けて来たグウェンフィヴァフを思いやってだろう。彼女に手を触れることはなかった。あくまで保護者の立場だった。……何より彼自身、モルガンに操を貫いていた。

ランスロットも、アーサーの立場の問題や、互いの中傷を避けるためもあって、カーボネックのエレインを受け入れ、結婚した。

アーサーもランスロットも、本命は別にいた。

一方、ドルイド七賢人会議で、議長であるマーリンの処遇が問われた。穏健派として、両派閥を取り持とうとしたマーリンは、裏切り者とされ、ヴィヴィアンに森の岩屋に封印された。

ベイリンは、ロンギヌスの槍の形態をとった第一の宝で、ペリノア王を傷付けた。この悲しみの一撃で、リスティノイス王国やブリタニアの多くの土地が荒廃した。

アーサーは、第二の宝……いわゆる聖杯で荒廃した土地を癒すため、円卓の騎士達を聖杯探求の旅に出した。結果、多くの騎士が命を落とした。

パーシヴァル、ボールス、そしてランスロットの息子ガラハッドが、第二の宝を見つけ、その真の力を解放し、荒廃した土地を解放した。

パーシヴァルとガラハッドは命を落とし、ボールスのみがキャメロットに生還した。

……だが、ガウェインは父グウィアルの仇として、ペリノア王を討つ誓いを立てていた。

ガウェインもまた、聖杯探求の旅に出ていた。

そしてリスティノイス王国のカーポネック城に辿り着いた。

ペリノア王を目にしたガウェインは、父の仇として、ペリノア王に勝負を挑んだ。

かつてペリノアは、妻エレインの所有する湖の傍で、テントを張り、通りがかる騎士達に度々戦いを挑んだ。今、自分が勝負を持ち掛けられている。……断るわけにはいかなかった。

そして、ペリノアは勝負に負け、死に伏した。

ペリノア側も黙っていなかった。ペリノアの息子……パーシヴァルの弟、ラモラックが父ペリノアの仇討ちの誓いを立てた。

彼は、直接ガウェインと対決するのではなく、ガウェイン側を……内部から崩壊させることを考えた。

ラモラックは、薬草や藥に詳しい侍女に、幻を見せる藥を作らせた。

……そして、モルゴースが隠れ住む古城を探しあて、潜入し……モルゴースの杯に藥を盛って、幻を見せた。自分が、最も愛しい男に見える幻を)。

モルゴースは、寂しさもあって、ラモラックをまんまと亡き夫グウィアルだと思い込んだ。

ラモラックはモルゴースと逢瀬を重ねた。

年上の女は好みではないから、抱きはしなかった。

他の侍女と関係を持っていた。

……やがて、ガウェインら兄弟がモルゴースの住む古城に訪れた。

兄弟らは、母モルゴースが若い騎士と逢瀬を重ねていると、使用人の話を聞いた。

母モルゴースになついている末の弟、モルドレッドは、信じなかった。

だが、アグラヴェインやガヘリスは、騎士を倒しすべきだと主張した。長男ガウェインは頷いた。

ガウェイン達、兄弟は母の部屋にラモラックが入るところを押さえ、ラモラックを斬り殺した。……そして。

ガヘリスは、モルゴースを斬り殺した。

ガウェインとモルドレッドが庇おうとしたのだが……。

この話を聞いたアーサーは、モルゴースに同情し、ガヘリスをキャメロットから追放した。

問題は、ゲール同盟、盟主の座だった。

それはモルゴースから、長男ガウェインの手に渡った。


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