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やっぱり悪役令嬢でした(3)

「「…………は?」」


 間抜けな声が重なったのは、スレイン王子とコール子爵令嬢だった。

 私はといえば……声すら出せないほど混乱していた。

 おかしい。レンさんの存在を隠すはずが、その当人が堂々と私との仲を認めてしまっていて。ましてや不純な関係を否定しなくてはいけないのを、子供ができたらなんて仮定を語ってしまっていて。

 いやその前に、王家の直系? レンさんの『妃』……?


「な、何を仰っているのです!? 父上!」


 んんんんん!?

 聞き捨てならない台詞に、思わずスレイン王子を見る。

 父上。父上と呼んだ? 王子がレンさんを?

 確かにそれで話は通じるけど……それでしか通じないけど……!?


「アデリシア」


 答に辿り着いた方が混沌(カオス)の始まりだった私の耳に、静かな父の声が届いた。

 振り向けば、その声と同じように穏やかな微笑みを浮かべた父がいた。


「ここからは、お前の婚約者にエスコートしてもらいなさい」

「え……?」


 知っていたの? ――そう、聞くまでもない表情を父はしていた。


「陛下とはもう喧嘩はした後だから、今からまた始めたりはしない」


 喧嘩はした後!


「シア」


 今度は父のものではない静かな声が、私を呼んだ。

 私の腰に回された手はそのままに、レンさんのもう片手が私の手を取る。その手の行方を反射的に目で追って。追った先で、私の目は釘付けとなった。


「‼」


 私の手の甲に、レンさんがキスを落とす。視線を上げた彼と目が合う。

 思いがけず出会った真剣な眼差しに、ドクンと大きく心臓が波打った。


「改めまして、アデリシア・ノイン侯爵令嬢。僕は今日から君の婚約者となった、レンブラント・ロークだ」

「あ……」


 私は過去に、レンさんに家名を尋ねたことがあった。そのとき彼は、「無いよ」と答えた。

 レンさんは冗談は言っても、嘘は言わない人だった。だからその答を聞いた私は、彼を平民だと思ったのだ。当然、わざわざ「平民ですか?」とは聞かなかった。

 でもそうだ、ローク王国には家名を持たない者が平民以外にもいる。家名ではなく国名が身分を表す者が――


「お、お待ちください! 俺がアデリシアの男を見たのは、平民が行く商店街ですよ? あんなところに、父上がおられたとでもいうのですか?」


 (がん)(しよく)を失ったスレイン王子が、見つめ合う私たちの間に割り入ってくる。その横では、コール子爵令嬢が呆然とした顔をしていた。


「スレインが紛れ込めるくらいなら、僕がいてもおかしくはないんじゃない? 僕は髪も肌の色も、祖母譲りの平民に多い色合いをしているし。それこそスレインがその他大勢の男と僕を見間違えるくらいに、周りに溶け込めていたと思うよ」


 身なりは華やかであるのに、中身はまるっきりいつものレンさんだ。話し方もまんまであるのに王子がそこには驚いていない辺り、城でもこうなのだと窺える。

 と、いうことは――


(変装もしていないのに自分の父親がわからなかったの、この王子……)


 痛い。それは痛い。「お前がどこの馬の骨ともわからない男と一緒にいたのをこの目で見たぞ」的に意気込んできたのが、その男が自分の父親だったとか。しかも、「王家の血筋の子供かどうか」と嘲笑ったのが、本当に生まれたとしたら自分の兄弟となる子だったとか。痛すぎる……。


「元は息子の婚約者だった者をご自分の妻になど、醜聞が立ちます‼」


 どうやら本物だったと判断したスレイン王子は、切り口を替えて反論してきた。

 しかしそれにもレンさんが、「ははっ」とまったく取り合っていない笑いを返す。


「……っ」


 不意に、王子が(あと)退(じさ)った。

 同時に、レンさんを()め付けていた彼の表情が一転して怯んだものに変わる。

 皆が固唾を呑んで見守る中――


「醜聞? そうかもね。でも仕方がないだろう? 真実の愛を見つけてしまったのだから」


 静まり返った会場に、どこかで聞いたような台詞が響き渡った。


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