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『秘密の恋人』が終わるとき(6)

 明日は卒業パーティーだ。

 一ヶ月前までは学校行事の一つでしかなかったそれが、今はこんなにも気が重い。

 再開された王妃教育に登城した私は、数刻前にまた例の二人に遭遇してしまっていた。あれで()りずに庭園を通ってしまった私も私で()(かつ)だったと反省している。


『明日の卒業パーティーには、父上もいらっしゃるそうだ。俺とジェニーの婚約発表をして下さるに違いない』

『嬉しい! スレイン様……』


 蔓薔薇に囲まれた噴水の前でひっしと抱き合う二人。それはもういいと真顔になった私を置いて、言うだけ言った彼らは「あはは」「うふふ」と嵐のように去って行ったのだった。


「どうしました? アデリシア。考え事ですか?」

「あ……」


 名を呼ばれ、私はハッとして現実の光景に注意を戻した。

 その現実において真っ先に目に入ったのは、向かい合ってお茶をしていた絶世の美女――皇太后様。御年五十七と記憶しているが、本当、いつ見てもお美しい。

 皇太后様の生家はローク王国であるが、確か生母様はかなり遠方から嫁いで来られたと聞いている。何でも当時の辺境伯様が一目惚れをして、そこから二年欠かさず手紙と贈り物を送り続けてのゴールインだったとか。この美貌の血筋なら、その辺境伯様の努力もわかりみしかない。

 血筋といえば――と、ついシグラン公爵令息の顔を思い浮かべてしまった。金の髪にエメラルドグリーンの瞳まで同じ、そして超絶美形。彼は絶対に祖母似である。


「明日の卒業パーティーについて、少し……」


 考え事をしていたことには違いないけれども、あまりに胸の内が混沌としていて。私はどう言い表せばいいかわからず、皇太后様に曖昧に返してしまった。

 『卒業パーティー』は『悪役令嬢』の鬼門。何かが起きる予感しかない。

 本日の王妃教育にもこの場にも、控えている使用人さんたちを除けば私と皇太后様だけ。そんなコール子爵令嬢と皇太后様の関係から見て、スレイン王子の言う「俺とジェニーの婚約発表」は無いと判断できる。が、別の婚約発表――即ち、私とシグラン公爵令息のそれなら充分に有り得る。

 もしや今、私が皇太后様を見て彼を連想してしまったのもフラグなのでは……?


(本当に私とシグラン公爵令息の婚約発表だとしたら、噂の広まり方は婚約破棄のときの比じゃないわ)


 国王陛下が卒業パーティーにお見えになるという話は、これまたスレイン王子が言いふらすことで多くの人の耳に入るだろう。というより、たまたま私が今日聞いただけで既に知れ渡っていることかもしれない。

 この場合、代理を立てていた貴族たちも予定を変更して当主が来るだろう。卒業する子もいないのに、親戚だか友人の子だかと理由をつけて来る可能性さえある。謁見の手続きを踏まずにお近づきになれる機会を、貴族たちが逃すはずがない。

 私は優雅な所作を維持しつつ、心の中だけで溜息をついた。


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