表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/44

自称次期王妃闖入(3)

 勢いよく立ち上がった私に驚いたのか、コール子爵令嬢が口を開いたままこちらを振り返る。


「セレナは努力をして、今の評価を得たんです。口だけは達者なあなたとは違って」

「なっ」


 侯爵夫妻は初めから無条件でセレナを大切にしていたけれど、六年前に初めて出会ったセレナは明らかに孤立していた。それでも敵陣ともいえるお茶会に積極的に顔を出し、そこで完璧に振る舞うことで徐々に認められていったのだ。

 今や(しゆく)(じよ)(かがみ)と言われるセレナに対し、コール子爵令嬢はというと……貴族以前に人としてもどうなのかという傍若無人ぶり。自分を高みに上げることより、相手を下げることに注力している。セレナ並みの努力なんて、到底できるとは思えない。

 そんな人がセレナを侮辱するなんて。――大人げないことの一つや二つ、したくもなるというもの。


「丁度、来月に皇太后様が開かれる『花の会』の演奏会にて、セレナがフルートで参加します。口先だけでないというのなら、そこでセレナと勝負をするというのはいかがですか?」


 思惑を隠し、私は冷静を装った声でコール子爵令嬢に提案した。目は()わっているだろうが、形だけでも微笑んでおく。


「演奏会で勝負?」


 私の台詞を繰り返したコール子爵令嬢が、にやりと笑う。

 彼女ならば、そんな反応を示すだろうと思っていた。


「いいですね。是非、皇太后様にご覧になっていただきましょう」


 そうやって、食い付いてくるだろうとも。

 コール子爵令嬢が、名案だとばかりにポンと手を打つ。明らかに上機嫌になった様子から、彼女の中ではもうセレナを打ち負かしたつもりなのかもしれない。そんな悦に()った表情をしている。

 身の程知らず……というわけではなかった。実は彼女、色々てんで駄目な残念令嬢ではあるが、フルートの腕前だけは一目置かれていたりする。そしてそのことを、彼女自身も知っている。

 一方、セレナの腕前も悪くはないが、名手というわけでもない。真っ向勝負であれば、おそらくコール子爵令嬢に軍配が上がってしまう。……真っ向勝負であれば。


「受けて立ちます」


 コール子爵令嬢に続いてセレナが答える。自身の胸に手を当て、しっかりとした声で。

 それから彼女はちらりと私の方を見て、小さく頷いてみせた。さすがはセレナ、私の意図を正確に汲んでくれたようだ。

 私は、すぅっと一つ、息を吸い込んだ。


「お二人どちらかが当日不参加だった場合、参加した方の不戦勝となります。よろしいですか?」

「それは勝負ですから。わかっています」

「はい。理解しております」


 セレナと目と目で通じ合って、それから私は伯爵令嬢二人を振り返った。


「では、オルウッド伯爵令嬢とマルクト伯爵令嬢が証人ということで。よろしくお願いしますね」

「え、ええ……」

「はい……でも……いえ」


 私に了承の意を返した伯爵令嬢二人は、揃って青い顔をしていた。それはそうだろう。フルートの名手と勝負など、普通に考えれば相手が悪い。

 でも心配は要らない。この勝負、セレナが負けることは絶対にない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ