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自称次期王妃闖入(1)

 ガゼボに戻り、散策前と同じく左から私、セレナ、オルウッド伯爵令嬢、マルクト伯爵令嬢の順で長椅子に座る。お茶会を再開した私たちの話題は、卒業パーティーへと移っていた。

 父がエスコートすることになったと話すと(うらや)ましがられ(ですよね!)、そこですかさず少しスレイン王子への愚痴を漏らすと――まあ釣れる釣れる。伯爵令嬢二人から、彼の悪い評判が次から次へと飛び出した。先のお茶会での様子から行って、予想通りの反応だ。

 ピンからキリまである噂(という名の事実)の中でも、特に酷い……というか(まず)いのが、コール子爵家が貿易をした際に払うべき関税を肩代わりしたというもの。百歩譲って王子の個人資産からそうしたというのなら、せいぜい(ひい)()だと陰口を叩かれるだけで済んだだろう。が、何を思ったか――いやきっと個人資産が既にすっからかんだったせいだろうが、彼はローク王国の税金から出してしまったらしい。

 正確にいえば、こうだ。

 辺境伯領の役人が馬車で上納金を運んでいたところを、王子は私兵を使って取り囲みその一部を巻き上げた。そして彼は、田舎領主が訴えたところで父上は信じないと高笑いしたわけだが、国王陛下は役人の方を信じた。それも即時というのだから、王子の日頃の行いの悪さが窺える。ついでに、無知さも。

 辺境伯領は確かに田舎ではあるが、国境――つまり防衛の要の土地。そこを任される領主となれば、国王陛下の覚えがめでたいに決まっている。

 そのとき王子に巻き上げられた分の辺境伯領の上納金は、免除された。そして陛下の個人資産から()(てん)された。

 そんなことをされたなら、普通は自分を恥じて、陛下にも感謝するところ。しかし後日、辺境伯を招いての謝罪の席で王子はあろうことか「自分はこんなにも父上に愛されている」と(のたま)ってしまった。

 いやいやいや、おかしいでしょ。どうしてそうなる、まず謝罪しろ。あと金を返せ。もうどこから突っ込んでいいのかわからない。

 スレイン王子の評判が悪いことは知っていたが、ここまでとは思っていなかった。きっとこれまでは、婚約者である私の耳になるべく入らないよう配慮されていたのだろう。

 夫になるのであれば大問題。しかし、逆ざまぁをするなら好都合。こんな聞けば聞くほど事故物件な結婚相手、改めてコール子爵令嬢に引き取ってもらって正解だったと思う。

 と、またフラグを立ててしまったのがいけなかったのか――


「こちらにいらしたのね」


 何がどうなった。まさにそのコール子爵令嬢が、私たちの目の前に突如として湧いていた。


「セレナさん、私も今から参加します。席を用意していただけますか?」


 しかも、いきなりわけのわからないことを言い出した。

 全員がぽかんとして彼女を見る。それはそうだろう。

 今日はセレナが招待客を絞った、私のためのお茶会だ。さらに言えば、元々予定していた参加者にしたって伯爵令嬢以上のみ。コール子爵令嬢はそこからして対象外である。


「あ、こちらの端で構いません。空けて下さい」


 そして「空けて」と指定したのは、私の隣だった。

 ここまで来ると皆の反応がぽかんから、引いた感じに変わる。私も()()(ぶん)()れず。

 おかしいでしょ。親しくもない、それも侯爵令嬢であるセレナに対してさん付けとか。「今から参加します」という台詞にしたってそう。無礼講の自由参加パーティーじゃないんだから。

 あと平然として私の隣に座ろうとするのも、気が知れない。もうどこから突っ込んでいいのかわからない。

 って、あ、これついさっき同じことをどこかの王子に対して思ってたわ。


(これが『()(なべ)()(ぶた)』……)


 彼らの『真実の愛を見つけた』という発言は、あながち嘘でもないのかもしれない。

 私は今、そんな妙な悟りを得てしまった。


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