表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/44

推定男主人公登場(1)

 ラッセ侯爵家のガゼボにて催された、四人だけのこぢんまりとしたお茶会。和気あいあいの雰囲気で進み、今は皆で庭の散策へと繰り出していた。

 先頭を主催者である友人、セレナが行く。

 セレナは私の一歳年上で、真っ直ぐな瑠璃色の髪に淡いルビーの瞳を持つ、涼しげな顔立ちの美人だ。養女であるので侯爵夫妻との血の繋がりはない。けれど、子供のいなかった夫妻が夫人に似ているという理由で引き取っただけあって、実際夫人によく似ている。

 事情を知らない人であれば、本当の親子だと信じて疑わないだろう。夫妻のセレナに対する溺愛ぶりを知っているから、余計にそう思うのかもしれない。


「この辺りは今の季節に合わせた花ばかりですから、楽しんでいただけるかと」

「色んな種類があって、どれも満開だわ。素敵ね」

「ええ、本当に。これなんて特に良い匂い。お父様にお願いして取り寄せていただこうかしら」


 セレナの案内に、メイカ・オルウッド伯爵令嬢、次いでフローラ・マルクト伯爵令嬢が感想を口にする。

 日傘を片手に花の庭園を散策する乙女たち。そんなメルヘンな光景を隣で眺めながら、私はセレナに心の中で拍手を送っていた。


(私の精神に優しい完璧な人選だわ)


 ここにいる二人以外の参加予定者には、セレナはお茶会の日程変更を伝えたという。

 では招待客として残された二人はどんな立場かというと――オルウッドは、ノインから定期的に大量の食料を買い付けている領地。そしてマルクトは、燃料のほとんどをノインに頼っている。つまり二人とも、ノイン侯爵令嬢である私を無下にできないわけだ。例え、スレイン王子に婚約破棄されるというスキャンダルを起こした直後であったとしても。

 ――もっとも、先のお茶会での様子を見る限りでは、二人とも素でスレイン王子に対して(しん)(らつ)だったけれど。



『アデリシア様との婚約を破棄なさるなんて、ようやく分不相応とお気づきになって、王位継承権を放棄なさるおつもりかしら?』

『そうなれば、サミュエル・シグラン様が次期国王に? それは大歓迎だわ。議会もすぐに可決するのではなくて? 名ばかり王子と違って、その有能さが有名な方でもあるし』

『あら。私は今の国王陛下が新しい王妃様を迎えられて、そのお子様がというのも有り得ると思っているわ。陛下はまだお若いんですもの』

『そうですけど、既にソニア妃の喪が明けて十年以上ですのよ? それにサミュエル・シグラン様に未だ婚約者がおられないのは、陛下が直々に選考なさっているという噂もありますし。それって、やはり彼の方が内々に次期国王に決まっているからではないかしら』

『その噂なら私も聞きましたわ。あの方に決まったお相手がおられないというのは、不自然ですもの。なら、やっぱりそうなのかしら。陛下はきっとサミュエル・シグラン様に期待なさっているのね。どこぞの王子とは違って』



 その後も、キャッキャと二人の令嬢の話は弾み……私もセレナも止めなかった。

 そんな発表などされていないにも関わらずスレイン王子が次期国王から外れる前提で話すというのは、かなりの不敬にあたる。というか、もうそれ以前の問題な発言をしまくっている。王族()(じよく)(ざい)で牢にぶち込まれてもおかしくない。

 二人の令嬢も当然わかっていて、私とセレナしかいないからここぞとばかりに吐き出したのだろう。私は婚約破棄された当事者であるし、セレナはそんな私のために招待客を(しぼ)ったわけだから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ