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ファースト侍  作者: 真山砂糖
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第35話 ドラゴン間一髪

今回は、ボッチデス湖の小島でのお話。

 コニタンたち皆がモンスターと戦闘をしている間、ボッチデス湖の小島の教会でも、おかしなことが起きていた。

 教会の入り口付近で、20人の海賊の内、5人が栗金団(くりきんとん)大総統によって戦闘不能にされたのだ。しかもそれぞれがたったの一撃で。栗金団の右腕の骨は手のひらを貫通している。骨が出るくらいに強く海賊を殴ったのだ。

「……ヒッヒッヒッ……」

「こいつ、イカれてやがる……」海賊。

「人間は他人を殴る時、自分の身を守るために力を抑えて殴る。だが、こいつは今、100%以上の力で殴った」アルチュール。

「お頭、でもこいつはもう右で殴れま――」海賊。

 言い終わる前に、その海賊は栗金団に殴られた、右手で。そしてふっ飛ばされた。栗金団の右手は血まみれで、突き出た骨が折れてしまっている。

「……こいつ、マジで痛みはないのか……」海賊。

 アルチュールとロペスエールも剣を抜いて戦闘態勢に入る。

「みんな、気を抜くなよ」ロペスエール。

「へい」海賊。

 海賊たちは少し距離を取って、栗金団を取り囲むように広がった。

 栗金団は右腕をだらりとたらしている感じで不気味に微笑みながらゆらゆらと立っている。そして左手でコートの内ポケットから拳銃を取り出して撃つ。

 バキューン! バキューン!

 海賊二人が撃たれて倒れた。

「連発銃か!?」アルチュール。

「おい、みんな! 盾を装備しろ! なかったら、幅の広い斧とかを装備しろ!」ロペスエール。

「……ヒッヒッヒッ……」


 前線の左側、ここは小島の教会と数百メートルしか離れておらず、最も教会と近い戦場である。ここでは、空から状況を確認したり、モンスターを背面から攻撃したりと、ゴンとマモルが大活躍していた。

「ん? マモル、今、銃の音がしたな?」ゴン。

「いや、俺は聞こえなかった。火縄銃は全て使い物にならなくなったはずだが」マモル。

「わてには聞こえたで。わての聴力は人間の数百倍や。向こうのボロい建物からやな」ゴン。

「ボロい建物? あの地獄の門の後ろの建物か?」マモル。

「そうや」

「気になるな。誰かがモンスターと戦闘してるのか?」マモル。

「行ってみよか」ゴン。

「よし、行こう」マモル。

 ゴンは教会へと飛んでいく。


 教会の4階のバルコニーでは、頭が朦朧(もうろう)としている状態で、殴られたマルテンが壁を背にして座り込んでいる。アマザエが心配そうに寄り添っている。

「……どうしてこんなことに……」アマザエ。

 そこへ、突然遠くから近づいて来たドラゴンに驚くアマザエ。マルテンも薄目で見ていて驚いているが、体を動かすことができない。

「……君たちはこんな所で何をしているんだ?」

 マモルはマルテンを見て心配そうに言った。アマザエは不思議そうに尋ね返す。

「……あなたは?」アマザエ。

「俺はジャポニカン王国の戦士マモルだ。ここで何があった? その男は怪我人か?」マモル。

「降りるで、マモル」ゴン。

 ゴンは静かにバルコニーに着地しようとした。ところが――

「痛っ!」ゴン。

 糸のような細い何かが赤く光ってゴンに反応した。

「どうした?」マモル。

「なんか、結界みたいなもんがあって、これ以上近寄れへん」ゴン。

「よし、じゃあ、俺が飛び降りる」マモル。

 マモルはゴンからバルコニーへジャンプした。そしてマルテンの方へ状態を確認しに近づく。

「強い力で顔を殴られたのか、ひどいな。撃たれてはいないのか?」マモル。

 アマザエはこくりと頷く。マモルは腰の袋から薬草を取り出してマルテンの顔に当てる。白いほのかな輝きが広がり、マルテンの顔の(あざ)が薄くなった。

「少しマシになったはずだ」マモル。

「……マルテン……」アマザエ。

「……マルテン?」マモル。

「……うっ、君はたしか、ノダオブナガ国王の側に控えていた衛兵のマモル殿だな」マルテン。

「……まさか、水の森王国のマルテン国王!?」マモル。

「……そうだ」マルテン。

「どうしてこんな場所に!?」マモル。

「……ぐっ……」痛みが続くマルテン。

 マルテンは何かを言いたそうだが、目を(つむ)って息苦しそうだ。

「一体、何があったんだ?」マモルはアマザエに尋ねた。

「……」アマザエ。

 強い眼差しをマモルに向けてから、下を向いて深く考えるアマザエ。マルテンは気遣うように、アマザエの肩にポンと手を置いた。それに反応するかのように、アマザエは意を決して言う。

「私たちをここから逃がして下さい。アルチュールの企みを知らせないと!」アマザエ。

「アルチュール? 企み?」マモル。

「アルチュールは、悪魔の力を利用して、この大陸の国を全て滅ぼすつもりです」アマザエ。

 マモルはそれを聞いて驚いたが、その途端、殺気なく4階へと上がってきた男に驚いた。ふらつきながら頭を押さえた青年が目に入った。

「誰だ!」マモル。

 そこにいたのはポンジョルノだった。

「うう、耳鳴りが止まらない……」ポンジョルノ。

「ん? 何だ……」マモル。


 そうこうしている間、嘔吐しながら小島に到着した男がいた。

「お頭、助けて下せえ」

 ふらふらと顔色の悪いブルースが教会の方へやって来たのだ。

「ブルースか」アルチュール。

「お頭、コロスウイルスに感染しました。特効薬を、早く」ブルース。

「何だって!」海賊。

「入って来るな!」海賊。

「特効薬をやるから離れてろ!」海賊。

 海賊はテーブルの上の箱を見る。しかし、栗金団はそれを注視していた。そして拳銃でその箱を撃ち抜く。

 バキューン! バキューン!

「あーっ! 薬が!」海賊。

「しまった……」アルチュール。

「何てことだ」ロペスエール。

「ヒッヒッヒッ、特効薬はなくなったぞ」栗金団。

「クソっ! 2階へ上がれ! ひとまず上の階へ退避だ!」アルチュール。

 海賊たちは皆2階へと一目散に逃げていく。

「ブルース、お前は上がって来るな!」アルチュール。

「そんな、お頭……」ブルース。

 絶望するブルースを、栗金団は右手で殴り飛ばす。ブルースは毛糸の側までふっ飛ばされてしまう。

「俺もウイルスに感染したかもな。毛糸、お前もウイルスに感染したかな? そんなに至近距離にいるからな」栗金団。

「……」毛糸。


 アルチュールたちはテーブルを集めて階段を塞ぐ。この時、ポンジョルノがいなくなっていることに何人かが気づいた。

「おい、ポンジョルノはどこだ?」アルチュール。

「そういや、さっきからいねえですぜ」海賊。

「俺が見てきます」ロペスエールは上の階へ探しにいく。


 4階バルコニーに現れたポンジョルノに、不思議な感覚を持つマモル。

「君は?」マモル。

「この人は、海賊の、アルチュールの仲間です」アマザエ。

「海賊だって!」マモル。

「俺は……ポンジョルノ……」しんどそうなポンジョルノ。

「マモル殿、彼は、いい奴だ」マルテン。

「ええ、殺気を全く感じません」マモル。

 そこへ、ロペスエールが階段を上がってバルコニーまでやって来た。真っ先にポンジョルノに声をかけようとしたところ、巨大なドラゴンが目に入って、顎が外れそうなくらいに驚いた。

「はぁ! 何だと! ドラゴンか!」ロペスエール。

「はあ? わてがおったらあかんのかいな!」ゴン。

「喋るモンスター。ドラゴンじゃねえか、おい」ロペスエール。

「お前は何者だ?」マモル。

「何者だと? それはこっちが聞きたい!」ロペスエール。

 マモルはマルテンたちに目をやる。マルテンは体を動かせずに息が上がっている。アマザエはロペスエールに対して怒りの眼差しを向けつつ、恐怖を感じているようだ。

「おい、ポンジョルノ! お前は何をしてんだ?」ロペスエール。

「……頭が……痛い……」苦しそうなポンジョルノ。

「あの男はロペスエール、海賊だ……」マルテン。

 ロペスエールは剣を抜いてマモルに向けた。マモルも剣を抜いて戦闘態勢に入る。まず、ロペスエールが斬り込んできた。マモルは華麗に剣をさばく。ロペスエールは何度も斬りつけてくる。その剣は、速く、しかも重い。だがマモルは華麗に剣をさばく。今度はマモルが反撃に出る。ロペスエールは力任せに剣を押しきる。それから、双方激しい剣撃の応酬が続く。

「強い」マモル。

「何だこいつは、俺と対等にやりあうなんて」ロペスエール。

 両者、距離を取って睨み合う。そこへ、下の階から海賊が3人、上がってきた。

「げえっ、モンスターがいるぞ!」海賊。

「大丈夫だ、建物内には入ってこれねえ!」海賊。

「ロペスエール、どうなってんだ!」海賊。

「知らねえよ!」ロペスエール。

 海賊は巨大な斧を装備している。

「……こいつは分が悪いな」マモル。

「どうするよ?」海賊。

 海賊たちはロペスエールと対等に戦ったであろうマモルを見て、どうしようか考え中だ。また、マモルも、怪我人のマルテンと、アマザエ、それに敵か味方か不明なポンジョルノがいる手前、どうするべきかと考えている。マモルはゆっくりと後ろへ下がり、ゴンに向けて手を出す。ゴンは背中の鞍の槍を器用に落とす。それをマモルは手に取る。

「アマザエ、だったな? マルテン国王とゴンの背中の鞍に飛び乗れ。手綱をしっかりと握れ。ゴン、二人を連れて逃げるぞ」マモル。

 アマザエはマルテンを抱え起こしてゴンの方へ歩く。

「させるか!」海賊。

 海賊は向かってくるが、マモルが槍で応戦する。それを見て、ロペスエールも残りの海賊も一斉にかかってくる。マモルは槍で距離を取ったまま攻撃しながら、アマザエとマルテンがゴンの背に乗るのを見ている。この時、ポンジョルノが剣を抜いて、海賊の攻撃を防いだ。

「何だと、こら! ポンジョルノ!」ロペスエール。

 ポンジョルノは軽い剣さばきで海賊たちをあしらう。それを見て、アマザエはラッパの入った木箱を取りに戻ってから、手綱を掴んでゴンの鞍に乗る。

「早く行け!」ポンジョルノ。

「すまない!」マモル。

 マモルは二人がゴンに乗ったのを見てから、自分も鞍に飛び乗った。

「また後で来てくれ。俺も連れて行ってほしい!」ポンジョルノ。

「ほな行くで!」ゴン

 ゴンはバルコニーから離れ去る。バサバサッ!

「あの男は大丈夫なのか?」マモル。

「ポンジョルノは強い……だが……ロペスエールと互角だ……」マルテン。

 それを聞いて、ゴンは旋回する。そして、マモルは言う。

「ゴン、あの男も助けるぞ!」マモル。

「おうよ!」ゴン。

 ゴンはバルコニーに近づき、羽をばたつかせて体を斜めに傾けながら空中で停止する。

「おい、掴まれ!」マモルは手を伸ばす。

 ポンジョルノはバルコニーの柵に足をかけてジャンプする。マモルは手をのばす。ギリギリのところで、マモルはポンジョルノの手首を掴んだ。ポンジョルノもマモルの手首をしっかりと掴んだ。

「オッケーだ!」マモル。

「よし、行くで!」ゴン。

 ゴンは急いで教会から離れ去る。すぐに風に乗って湖を越え、戦場の後ろの方へ。そして、ジャポニカン軍陣営へと飛んでいく。

「ふうーー、間一髪やったな」ゴン。


 教会入り口の外では、栗金団大総統がタバコを吸っていた。

「フーーーッ……ヒッヒッヒッ……」

 その気味悪さとは別に、毛糸は急に息苦しくなり、寒気を感じた。

「ゔぉぁ……」毛糸。

「感染したな」栗金団。

「……」毛糸。

「ここは石造りだが、一部は木で造られてある。燃えるな。毛糸、火をつけろ」

 栗金団はそう毛糸に命令した。毛糸は壁のカーテンにタバコの火を押しつけた。カーテンに火が移る。テーブルの上のワインを、窓枠、テーブル、ソファーにかけて、マッチで火を付ける。そして、ワインの瓶を数本、階段の手前の床に叩きつけて、そこにも火をつけた。火はすぐに木製の手すりに燃え移る。

「ヒッヒッヒッ……」栗金団。

マルテン、アマザエ、ポンジョルノが逃げましたね。

栗金団大総統、何者なんでしょうか。

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