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001 運命的な出会い

私の拙い文章を読んでくださる方は例えどんな方でも愛しています

「また冬か…」


 冬の空の下、僕は白いため息をついて呟いた。

 繰り返される季節と、行き来する凡庸な人々。


__全く、反吐が出る。


 これからの季節、外は寒い。家族がいない未成年の僕には家がないので、上手いこと路地裏で猫と戯れていよう。


「さむ…。でも、ここならネットも繋がるか…」


 路地裏も悪くない。

 僕は孤児だ。親はいない。親は、というか、兄弟も祖母も祖父も、ましてや子供も生まれたときからいないのだけれど。まあ、僕にとってそんなことは至極どうでもいいんだ。知らないものが無くたって困らないだろう?原始人にスマートフォンは必要ないんだから。


…いけない。


「僕レベルのドルオタが配信の見逃しをするなんて、死刑確定だよ…」

液晶をつついた。僕の、僕だけの推しが、サイコさんが、この小さな箱のなかで生きている。

__キラキラのステージ、ひらひらの衣装。これこそが、推しこそが僕の美学なんだ。


ドンッ


「うわっ!い、痛…」

北の方から走ってきた誰かに、物凄い勢いでぶつかられた。


「おい。お前、謝罪もしないで走り去るつもりか」

「あ…失敬。痛かったね…申し訳ない。」


女の子の声だった。口調は飄々としているが、声はすっかり衰弱していて、今にも死んでしまいそうだった。


「待て。あんた倒れそうだぞ。それに、濃い血の匂いがする…」

目の前で死なれちゃ御免だ。…とりあえず、コイツの、顔まで覆うようなこの頭巾を…

「…あ、ちょっと!」


「…え」

__長い睫毛と、ローズティーのようにほんのり染まった頬。そんな儚く美しい顔立ちに飾られた、二つの輝く瞳。そして、ゆるく跳ねさせたダスティな色の髪…


__間違いない、貴女は…


「さ、サイコさんかよ…?!」


憧れであり嫁であり、綺麗で、かわいくて、イケメンなところもあって、ユニットのリーダーで、モコモコの衣装もひらひらの衣装も似合って、きっといい匂いがして、というか実際ほんとにいい匂いで、変わり者で、背が小さくて、

そんな、僕の自慢で、推しの彼女が。

目の前に、いる。


その事実が僕にとっては強烈すぎて、彼女が人間の頭部をかかえていることも、とんでもなく衰弱していることも、忘れてしまっていた。


今まで、「加工でどうにでもなれるだろ」だとか、あほらしい事を言う奴らはいたけれど。


「…やっぱり、超かわいいじゃん…」


そう感嘆を漏らす僕を見て、彼女は、まるで配信のときのように余裕そうに、


「…私のことをご存知なんだね。どうしたものかねぇ…」


と力なく呟いて、血まみれのまま、

ぶっ倒れた。


はは。ぶっ倒れたいのは僕の方だ。

さすがサイコさん。


え?ぶっ倒れた?

とりあえず頑張って続けますので

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