FORGET-ME-NOT
ワスレナグサ、です。
睫に絡みついてて
瞼の裏 貼りついてて
網膜を焦がし灼きついてて
耳たぶに噛みつかせて
鼓膜をまだ震わせてて
三半規管で渦巻かせて
季節が恋を咲かせるね 蕾を膨らませる想い
春の息吹に葉を揺らすよ 一輪挿しの花束
名もない花なら 願うこともかなわずに
記憶は根を断つ 植えかわるなら日向に
忘却を責めるより 散り際にただ祈る
もう一度だけ名を呼んで
忘れたなんて言わないで
手触りだけ確かめてて
残り香まで嗅ぎわけてて
後味も味蕾に綴じ込めてて
細胞で憶えていて
脳漿に溶けあわせて
ヒト知レズ 胸の内に棲ませて
季節が恋を散らせるね 実を結ぶことのない想い
春を待たず土に還るよ 多年草を羨んだ
名もない花じゃない 忘れられてしまうだけ
記憶に根を張る 不毛な恋の日陰で
忘却に萎れてく 愛しさも枯れていく
もう一度だけ名を呼んで
君が新しい名をつけて
記憶はもう綻びてて
顔のない想い出だけで
せめて 初めての夜は消さないで
破片を拾い集めて
なにひとつ描けないで
でも あの夜の言葉は忘れて
花、詳しくないんですよね。