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テーマ詩集:花壇

FORGET-ME-NOT

作者: 歌川 詩季

 ワスレナグサ、です。

 (まつげ)に絡みついてて

 (まぶた)の裏 貼りついてて

 網膜を焦がし()きついてて


 耳たぶに噛みつかせて

 鼓膜をまだ震わせてて

 三半規管で渦巻かせて


 季節が恋を咲かせるね (つぼみ)を膨らませる想い

 春の息吹に葉を揺らすよ 一輪挿しの花束


 名もない花なら 願うこともかなわずに

 記憶は根を断つ 植えかわるなら日向(ひなた)

 忘却を責めるより 散り際にただ祈る


 もう一度だけ名を呼んで


 忘れたなんて言わないで



 手触りだけ確かめてて

 残り香まで嗅ぎわけてて

 後味も味蕾(みらい)()じ込めてて


 細胞で憶えていて

 脳漿(のうしょう)に溶けあわせて

 ヒト知レズ 胸の(なか)()ませて


 季節が恋を散らせるね 実を結ぶことのない想い

 春を待たず土に還るよ 多年草を(うらや)んだ


 名もない花じゃない 忘れられてしまうだけ

 記憶に根を張る 不毛な恋の日陰で

 忘却に(しお)れてく 愛しさも枯れていく


 もう一度だけ名を呼んで


 君が新しい名をつけて



 記憶はもう(ほころ)びてて

 顔のない想い出だけで

 せめて 初めての夜は消さないで


 破片(かけら)を拾い集めて

 なにひとつ(えが)けないで

 でも あの夜の言葉は忘れて

 花、詳しくないんですよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 昔自分で書いた作品にもワスレナグサを題材にしたものがあったので、タイトルを見てぴんときました。和名も英語名も非常にロマンチックな花ですよね。 ワスレナグサからこのような切実で懸命な言葉が想起…
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