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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第六十三話 迷宮化(その八)

 まだ互いに様子見の攻防を交わしただけだが、結構硬いぞベヒモス。

 ジャガノス君みたいにスーパーアーマーがあるわけでは無いのだが、その重量故かこちらの打撃を受けてもアクションがキャンセルされない。


 こちらは→→のダッシュを身につけたことで動きも鋭くなって、→→パンチでより強い威力の攻撃もできるようになったし、バックダッシュで敵の通常攻撃を躱すのも容易いのだが。


「それ、ソニオっちの技っすよね? いつの間に習得してたんすか」


 技なのかどうかは分からんけど、こういう地味な動きをモノにしていかねばならないのだよ。

 格ゲー戦士としては。


 しかしベヒモスにはそんな大したダメージを与えられていないようだし、相手は通常攻撃に交えて魔法も放ってくる。

 それがまたノーアクションで放ってくるから避けづらいんだよ。

 通常攻撃を躱してバシバシ打撃を加えてたら、突然水弾を顔に撃ち込まれて仰け反ってしまった。

 パーフェクト勝ち不能だ。

 悔しい。



「分かったっす」


 攻撃をしながら突然後輩が言い出した。

 何がだね?


「こいつ、魔法で体表をコーティングしてるっすね。水魔法でゲル状のコーティングを」


 何だ?

 じゃあこのブヨンって感触は脂肪じゃなくてその魔法なのか。


「そうっす。それで衝撃を吸収したり、魔法を相殺してるんだと思うっす」


 なるほど。

 じゃあその魔法を貫くか、防御を上回る打撃を与えればいいのかな?


「そういうことっすね。でもボクなら魔法で簡単にダメージ与えられるっすよ」


 後輩がやらせてくれ、と訴えてくる。


 え〜、魔法かぁ。

 不満はあるけど趣味の戦闘じゃないからしょうがないか。

 学院のみんなが待ってることだし。


「分かった。任せたわ」

「ガッテンっす!」


 後輩が魔力を高め始めた。

 バチバチッ、と紫電が後輩の右手を中心に走る。

 やはり水には雷属性なのか。


「サンダー・バードォ!」


 名前はカッコイイが人形劇的な特撮番組が思い浮かぶぞ。



 サンダ〜、バード〜、テテテーテテーテーテ♪


 さすがにもう再放送もやってないかなぁ。



 回想に耽っていたら後輩の手からは雷電の鳥が幾羽も飛び立ち、ベヒモスに襲いかかるところだった。



 バリバリバヂヂヂッ!



 木の板を紙切れのように引き裂いたらこんな音が出るだろうか。

 耳を破るような激しい音が鳴り、眩い光の中でベヒモスは苦痛に耐えるように身を震わす。



 やがて轟音が止み光が収まると、体色を黒くしたベヒモスが。


「グガォォォォン!!」


 怒ってますな。

 ベヒモスにとっても無視できないダメージだったのだろう。


「ありゃりゃ、まだまだ元気そうっすね。もう一発お見舞いするっすか?」


 やはりあの威力の魔法は魔力を食うようで、後輩は魔力チャージをしている。

 だがベヒモスの防御魔法は吹き飛んでいるようだし、次は私に任せてほしい。


 はああああぁ


 練った気の全てを右拳に集中させる。

 右脚で地面を思い切り蹴り、左脚で体重を受け止め、渾身の力を込めた右拳を突き出す。

 抉るように左回転させた拳で狙うのはベヒモスの心臓。

 和尚のドリルキックを参考にしたパンチだ!


 ハートブレイクショット?

 それは言わないでほしい!


 ベヒモスから放たれた水魔法を打ち抜き、硬い表皮も分厚い肉も突き破った。

 そして肘までめり込んだ自分の腕より、もっと深くに衝撃が届くようにもう一捻り、もう一押し。


「ググォァァアアアア!!」


 む、まだ足りないか。

 しょうがない。

 ここで足掻かれて時間をかけてもなんだし、さっさととどめを刺すとしよう。


「メイドボール!」

「ダサっ」


 体内で炸裂する魔法にはベヒモスと言えど耐えられなかったようだ。

 程なくベヒモスは塵となった。




 残念ながらドロップ品は無い。

 その代わりにダンジョンコアの前に張り巡らされていた、蜘蛛の巣状の光線が消えている。

 魔法や飛散する瓦礫を悉く防いでいた光線だ。


 消えた、と見せかけて実は罠でした〜


 なんてことだったら困るから一応石でも投げて様子を見るとしよう。

 えいっ!


「あっ」


 あっ、同じことを考えていたのか、後輩の放った魔法と進路が被さってしまった。

 石は魔法に弾かれダンジョンコアへと一直線に進む。

 そして見事にダンジョンコアの真ん中に当たり……


「ええっ!? 壊れちゃったっす!!」


 なんと、ダンジョンコアはあっさりと砕け散ってしまったではないか。


「問題無い。守護者を失ったダンジョンコアはあんなものだ。それにしても見事であった。戦闘力では学生の域を遥かに超えているぞ」


 学院長からお褒めの言葉をいただいている間に、目の前の景色が歪んできた。


 以前ゲートクリスタルに触れた時のようなジジジ、という音が脳内に響く。




 ビ〜ユンと景色が変わった。


「ミサ!」

「キャミィ、何処から出てきた?」


 目の前には腰を落として身構えているミコルルたちがいる。


「学院長! もしやこれは学院長が?」


 先生方が学院長に詰め寄っている。


 学院長は広い袖口に互い違いに手を差し入れ、鷹揚に頷いた。


「うむ。彼女たちの活躍でダンジョンコアの破壊を成し遂げたぞ。もう安心して良い。学生や職員に負傷者は?」


 負傷者を問う声は大歓声に掻き消された。


「やったー! 乗り切ったぞー!!」

「助かったぁ!」

「お姉様ステキ!」

「キャミィちゃ〜ん!」


 学院長ったら一人でも解決できただろうに、私たちに手柄を譲るだなんて粋なことを。


 お礼を言わねば、と思っていたらクラス毎の点呼が始まってしまった。

 幸いにも死者や命に関わる負傷をした人はいない。


 そうこうしている内に学院長は、和尚たち寺院のみんなを連れて颯爽と立ち去った。


 男子も女子も結構な人数がポーッとした顔で和尚たちを見ている。

 そうなんだよ。

 みんなカッコいいんだから。

 分かってくれたかね?


「わっはは、和尚たちの魅力が伝わったみたいっすね! ボクも鼻が高いっす!」


 生意気な。

 でもまあ同意しておいてやるとするか。








 まだ混乱から立ち直れない生徒もいるから、その日は各自寮待機。


 私と後輩は学院側からの配慮で、貸し切りの談話室で和尚たちと一晩過ごせることとなった。

 今はおもてなしの料理をつまみながら歓談中。


「そうかダンジョンコアは逃げたか」


 和尚は言った。

 破壊したと思ったダンジョンコアは飾りだけで、中身は何処かへ転移したものだと。


 そういうことね。

 闘神像が何をしても壊れないのに、それと張り合うダンジョンの中心部があんなに脆いなんて……って不思議に思ってたんだよ。


 逃げた奴はいずれまた力を蓄えて、どこかでダンジョンを作るそうだ。

 再び遭遇することがあったら、今度こそは真の破壊を目指そう。


「ねねね、そんなことよりさ。二人はもうすぐ卒業なんだよね?」


 ほろ酔いのリーレイが絡んできた。


「ボクはまだっすよ。あと一年ちょっと残ってるっす」

「え〜、ラーニャたちも会いたいって言ってたよ。早く戻って来なよ」


 シスターズか、懐かしい。


「ところでリレイっちは浮いた話とか無いんすか。トンダっちみたいに」

「っ……!!」


 トンダが慌ててキャミィの口を塞いだが時既に遅し。

 ニヤ〜、とした目元口元のリーレイがススス、とトンダに近寄る。


「先ぱ〜い、何? そんなこと町に下りて来た時言ってた? 聞いてないですよアタシ」

「ええい、あっちへ行け」


 ムギュと顔を潰されながらもトンダに絡むリーレイ。


「これリーレイ、トンダは純な男だ。静かに見守ってやれ」

「和尚……」


 フォローだか何だか分からない和尚の言葉にトンダは困り顔だ。



 うん、学院も楽しいけどやっぱり家族はまた違う安らぎがあって落ち着くな。

 卒業が寂しい気もするし、早く寺院に帰りたい気もする。

 なんとも贅沢な悩ましさじゃないか。



 そうやって何も知らない私は、ぬるま湯に浸かったような気持ちでいたのに。



 ジジジ



 ゲートクリスタルに触れた時のあの音が、ふと脳に響いた。

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