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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第五十三話 迷宮入り(その二)

 相変わらずジャンネとアラシュは口を聞いていない。

 ただの一言も。


 そんな状態でキャンプが始まってしまった。


「さあ、今日から丸四日間はこの場所で生活することになります。食事の用意、火の始末、魔物への見張りなど、班内で役割分担をしっかりしましょう。特に魔物への警戒と戦闘は気を抜かないように。大怪我に繋がりますからね」


 同じ野宿とは言え、結界で安全が確保されていたいつかの遠足よりも、ずっと厳しい環境には間違いない。

 山の中は独特の暗さと静けさがあり、それでいて木々の騒めきや生き物の気配がごちゃ混ぜになっているのだから、慣れない人には恐ろしい場所でしかないだろう。

 先生の訓示に「はーい」と気楽にお返事するクラスメイトの何人が、夜になってもお気楽でいられるのか。

 前回の遠足ですら泣き言を漏らしていた子たちの夜がどうなるやら。



 ところでこうして自分のパーティーの抱える問題を棚に上げ、他パーティーのことを気にしていて良いのか。

 良いのだ。

 ここで寝泊まりすることが何の苦でもないのだから。

 私、だけでなく私たち四人にとっては。

 去年から何度も魔物狩りはしていたし、三年生になればこの実習があることも知っていた。

 だから私以外の三人も山で野宿ぐらいできるようには訓練していたのである。


 現に、既にテントを組み立て、荷物を分け並べ終えている。

 後は食材を調達してくれば、今日すべきことは食べて寝るだけだ。



「やっぱり早いのはあなたたちね」


 敵情視察だとやって来たのはバラプドールさんだ。

 彼女は特にミコルルに対抗心を燃やしている。


 ミコルルもバラプドールさんには座学で一歩及ばないため、やはり対抗心を持っている。

 二人は良きライバル関係なのである。


 ちなみにこうして私たちと話している時のバラプドールさんは、キリリとした切れ者系美人眼鏡女子だ。

 なぜ男子が戯れ合っていると、あんなハァハァ言うぐらいに興奮して、やれ「不潔だ」、「けしからん」等々、嫌悪を剥き出しにするのか。


「バラプ」


 そんな舐めプみたいに呼ばないで、ミコルルさん。


「私たちにとってこの実習は既に最高値の評価が約束されているのです。そこに追いつこうとするあなた方が、様子見などしている暇はありませんよ」


 おお、滅多に見れないミコルルの挑発。


 バラプさんは舐めプするまでもなく勝負は決まっていると宣言され、どう思っているのか。

 眼鏡をクイ、と上げフンと鼻を鳴らし去って行った。


 一方王者的発言をしたミコルルだが、テントに入って頭を抱えていた。

 もちろんアラシュとジャンネが背を向けて装備を整えているからである。


「吹いちゃいました……」


 いつもクールな彼女もこういう時があるんだよ。


 これは先生もご存知ない一面のはずだ。

 多分モルガノ先生のミコルルに対するイメージは、勉強も運動もできていつも冷静、男女分け隔てなく優しくできる、優等生お嬢様だろうから。


 確かに出会ってすぐのような短絡さや無礼さはすぐ無くなった。

 だが、修行の時や魔物狩りの時など、彼女は普段とは違って競争心を露わにし、熱い一面を見せることも少なくないのだ。

 バラプドールさんと相対する時みたいなことは滅多に無いけどね。



 さて、ミコルルの言葉が放言にならないように活動しますか。


「ジャンネ、アラシュ。魔物狩りに行く? 二人はここで留守番して、見張りとか料理支度とかだけど」

「行くに決まってんだろ!」

「私魔物狩りに行ってくるね〜」


 二人は同時に別々の方へ飛び出した。




「いけね、忘れ物」


 ジャンネはすぐに戻って来たが。

 こういう所は緊張状態でも変わらない。

 美徳とは言い切れない所がまた彼女らしい。


 彼女の忘れ物は愛用の長剣だ。

 数打ちの一本だったはずだが、壊れることなく一年以上の付き合いになっている。

 使っている内に愛着が湧いてきたらしく、“フレイムバスター”なんて名前まで付けている。

 自分に合わせた物を注文して打ってもらおうと言う当初の思いは、すっかり忘れてしまっているかのようだ。




 火事を起こしたり無闇矢鱈に木を倒したりする行為は禁止されているが、聞こえ始めた派手な爆発音はジャンネの戦闘音だろう。


 一方アラシュの方も負けじと魔物狩りに勤しんでいるようだ。

 木の葉や土煙が舞上げられ、風切り音が聞こえてくる。



 二人とも格闘技術は向上しているのに、好んで使うのは魔法。

 私としては残念と言うほかないが、強制するのは良くないから当人のやりたいようにしてもらっている。


 それにしても、このような狭い場所で魔法を使った戦闘をここまでこなせるようになったとは。

 ただのランニングでバテバテだった最初の頃を思うと、感慨深いものがある。



「いつまで狩りをしているんでしょうか」


 そうだよ。

 感慨に浸ってしまっていたが、食料の調達だぞ。

 どれだけドロップ運が悪くても、もう戻って来ていいはずだ。


 まさかどちらが多く狩って来るか、なんて争ってるんじゃあるまいな。


「終〜了〜!!」


 少し恥ずかしいが、大声で二人に呼びかけた。




 二人はすぐに戻って来た。


 他の班の子たちも戻って来てしまった。


 ごめんなさい!

 どうぞ続けてください!


「ふん!」

「ふん!」


 ジャンネとアラシュはそっぽを向きながらジャラジャラとドロップ品を地面に放出する。


 おい、食材は十分あるように見えるぞ?

 やっぱり競争のつもりだったんだな。


「カウントしませんからね。食材以外はまとめます」


 ミコルルの宣言にジャンネもアラシュも鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。


 でもそりゃそうだ。

 これはチームプレイなのだから。

 私たちは同レベルの家事能力、魔物狩りの腕であるという前提で役目を割り振っている。

 故に評価は同一。



 この前提の前にジャンネとアラシュの魔物狩り競争は不発に終わり、一日目も無事終了した。


 どうやら他班も食事にありつけなかった所は無いようだ。

 あとは寝るなり装備の点検をするなり自由な時間を残すのみ。


 前回の遠足で懲りたのか、女子は全員洗浄魔法を習得済みのようだし……


「ハァハァ、ミサお姉様……あの、ハァハァ、一緒に体をキレイにしませんか?」


 習得済みのはずなのだが……


「ユリキャットさん! 不必要に他班と接触しないように!」


 ユリキャットさんは先生に叱られ、班員に引き摺られながら戻って行った。




 何はともあれ後は就寝中の見張りのみ。

 私は魔物が近づけば起きることはできるが、これも訓練の一環なのでちゃんと交代の見張りに参加する。


 ジャンネとアラシュが交代を引き継ぐと何か間違いが起こりそう。

 いや、無理矢理顔を合わさざるを得なくして、って言う方法もあるかもしれないが、この場はやめておく。

 就寝中の他班に迷惑かけるようなことになってもいけないし。


 今日はアラシュ→ミコルル→ジャンネ→私の順に決まった。

 明日はジャンネとアラシュの時間帯、私とミコルルの時間帯を入れ替える予定である。




「出た! 出たぁっ!!」


 夜中に大声が響き渡った。

 他班の男子が魔物を発見したのだ。


 だが魔物の気配は弱く数も少ない。


「ミコルル、大丈夫そう?」

「問題ありません。ちょっと大袈裟に騒いでしまっただけのようです」


 私とミコルルのやり取りを聞いて、起きかけたジャンネとアラシュも再び眠りに就く。


 どうしよう、この二人で見張りの引き継ぎをさせるのもどうかと思って、私とミコルルを挟む編成にしたのに。

 一緒のタイミングで寝起きするのもそれはそれで気まずさがある。

 ……いや、どのみち一緒に寝ることにはなるか。


 う〜ん、気を遣い過ぎてるのかもしれない。


 もしこの雰囲気が長引くようなら、ミコルルと二人してキレてみようかな。

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