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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第四十六話 ヤバい新入生(前編)

 授業が始まった我がクラスでは、早速例のツッパリ一年生のことが話題になっている。


「とんでもない乱暴者だ! 彼は!」


 憤っているのは目の周りを青く腫らしたゾンビッシュ君だ。

 バカなことはやめたまえ、って注意したら「生意気だぞ」って殴られたらしい。


 そんなこと言って殴るのは音痴なガキ大将ぐらいだと思ってたよ。

 恐らく日本一有名なガキ大将。


 生徒指導の先生に言ってやる! ってプンスカしていたゾンビッシュ君だったが、「一年坊にやられるのって、情け無くね?」と言った誰かの言葉が効いたようだ。

 膝を抱えていじけてしまった。



「大丈夫! 俺たちが仇討ちしてやるぜ!」

「おう!」


 お、彼の班員が熱い友情を見せようとしている。

 ゾンビッシュ君と肩を組み合い額を突き合わせる。


「任せとけって! な、ジャガノス!」


 ズコー!

 ジャガノス君頼りかよ!


「やあね。男子は乱暴だわ」

「バカだわ」

「不潔だわ。ハァハァ」


 ハァハァしているのはユリキャットちゃんではない。


 バラプドールさんだ。

 彼女は眼鏡をかけた三つ編みの、委員長っぽい真面目お姉さんキャラなのに、たまにこういう風になってしまう不思議さんである。

 男子が二人以上密着すると大体「不潔だわ」って言う。


 確かに汗臭そうだが不潔は言い過ぎであろう。




 さてそんなツッパリ君に関するネタを、授業と授業の合間に情報ツウが早速仕入れてきた。



 ツッパリ君は一年一組、名前イリオ、ビートル族で身長二メートル。

 幼少期から格闘道場に通っていて腕っ節に自信あり。

 この学年の番長を目指していて、既に一年生の掌握を完了しつつある。

 一年生であの体格だからこれから成長期を迎え、ますますいいガタイになるだろう、と。



 その話を聞いたゾンビッシュ君の班員はゾンビッシュ君の肩を叩いた。


「復讐は何も生まないって聞いたことがある」

「番長争いなんて無益な争いに巻き込まれるから近づかないどこうぜ」


「薄情者!」


 臆したチームメイトをゾンビッシュ君が詰る。


 おいおい、そんな揉み合ってたらまたバラプドールさんに不潔って言われるよ。


 しかし格闘技か。

 様々な流派との出会いは格ゲーの醍醐味でもある。

 ……いいじゃない。

 番長には興味無いけど、イリオ君には一度当たってみようかな。


「放っておいても一年後には闘技会があるのに。男子はおバカだね〜」

「いいんじゃね? アタシはそういう熱いの好みだぜ?」

「ジャンネ、あなた対戦しようとか思ってませんか? 入って間もない一年生をイジめるのは感心しませんよ」


 うっ……イジメになっちゃう?

 いや、でも向こうからやってきたなら反撃は当然なわけで〜。

 でも確かに三年生と一年生の差は大きい。

 イジメって言われて否定は難しい。


 ううむ、何かすぐにツッパリ君の実力を測るいい方法は無いものか。








「姉様ぁ、助けてほしいっすぅ」


 いい考えも浮かばぬまま二日が過ぎ、放課後のこと。

 後輩が泣き言を繰りながら私を訪ねて来た。

 マムマムとウルウルを連れず一人だけだ。


「どうしたの? また男子にイヤラしい目で見られでもしたの?」

「それはいつものことっすけど……」


 いつものことなんだ。


「助けてほしいのはマムっちとウルっちのことなんすよぉ」

「キャミィさん、あの子たちがどうしたのですか?」


 保護者代わりのミコルルが心配そうに身を乗り出してきた。


「ミコルっち先輩、知らないんすか? ヤバいんすよ」

「な、何が」

「じゃあ来てくださいっす。一目見れば分かるっすから」


 後輩が悲しみの顔で先導し、ミコルルが不安の顔でついて行く。




 いや、その辺歩いてるだけで分かったわ。

 二年生のアレが始まったのか。


 ミコルルも苦笑いだ。


「あの子たちは発症してしまったんですね」

「え?」


 そう、一目見れば分かる困ったこととは、昨年の我がクラスにおける男子のパリピ化、女子の淑女化である。

 二年生をピンポイントで襲う謎の風土病と思しき流行病。


 そしてお供ズ発見。



「オラオラぁ」

「何メンチ切ってんの、コラ」



 は、迫力()ええぇ。


 髪型リーゼントにして襟立てちゃってるんだけど、二人とも小柄だし声が軽いから、子どもがお遊びでヤンキーごっこしてる風にしか見えない。


「マムっちとウルっちが、不良になっちゃったっすー!」


「放っとけば?」

「な、な、何言ってんすかね! この姉様は!?」


 半泣きだった後輩が瞬間湯沸かし器の如く怒り出した。


 何か怒らせるようなこと言ったかな?


「不良って言ったらボクの嫌いなもの上位に食い込む、あの不良っすよ!」


 知らないよ。

 なんなのあんたの嫌いなものって。


「チャラ男、ヤンキー、モブ、バカ、デブ、ガリ、マッチョ……」


 大半の男だろ!

 って、お供ズは女子だからヤンキーでもいいじゃん。


「ダメっす! ヤンキーちゃんはヤンキー君を呼ぶって知らないんすか?」


 ヤンキー君が眼鏡女子とイチャイチャするのなら知ってるけど。


「それは漫画の中だけっす。現実はヤンキーはヤンキーを、マッチョはマッチョを引きつけるんす」


 類は友を呼ぶと言うが、マッチョはそうでもないだろ。

 マッチョの友達もマッチョって……世間では一般的なの?


「つまり、マムっちたちがヤンキーを呼び寄せるのは必然なわけで……」


 ははは、考え過ぎでしょ。

 後輩は心配性だなぁ。



「おうおうパイセンよお! んなカッコして、俺らにケンカ売ってるわけ? なに、テッペン取る気でやってんの? あぁーん!?」


 あぁん!?

 って女子寮前で因縁をつけて来たのはツッパリ男子ABC。

 見たこと無い顔だから一年生だろう。


「ほら! ほらほらぁ!! 言ったとおりじゃないすか!」


 頭を傾けて、上から押し込むように、下から押し返すように睨み合いを始めるツッパリ一年生vsお供ズ。

 それ見たことか、と騒ぐ後輩うざし。


「ケンカするようなら先生呼びますよ」


 ミコルルが溜息を吐きながら、やれやれ顔で忠告した。


 私はストリートファイトのギャラリーよろしく、いけいけやれやれをしようとしていた手をそっと下ろして素知らぬフリをした。


「ちっ! 真面目ちゃんは面白みがねえんだよなっ!」

「ちっ」

「ちっ」


 一年ヤンキーとお供ズはミコルルに舌打ちをし、互いにメンチを切ったまま退いた。


 ミコルルの額に青筋が浮かんでいる。

 お供ズまで舌打ちしちゃダメだったんだ。


「あ、あの時期特有の病気だから……」

「分かってますよ。私は怒ってません」


 怒ってるじゃん。

 歯がギリって鳴ってるもの。


「あ、あいつらのせいっす! あいつらが一年生の雰囲気を一気に不良学院風に変えたから、マムっちとウルっちも影響受けちゃったんす!!」

「一理ありますね」


 そう!?

 さっき私が病気だからって宥めたら、分かってますって言ってたじゃん!



 あ、でもこれは使えるかも……


「そう言えばミコルルぅ、一年生の不良化って、あのイリオとか言う一人の不良から始まってるんだよね?」

「そう、でしたね。イリオとか言う腐った果実が一つ。そうでしたね」


 ブツブツ呟くミコルルちょっと怖いよ。

 でもいい流れだ。


「腐ったミカンが他のミカンも腐らせてしまうアレっすね」


 きた!

 ここで一気に畳みかけるんだ!


「腐ったミカンがマムマムを」

「腐らせて!」

「腐ったミカンがウルウルを」

「悪の道へと!」

「そんな腐った汚物は?」

「消毒っす!」

「排除しましょう」


 ミコルルと後輩は目に暗い炎を宿らせて、危険な意見を一致させた。


 くくく、これであのツッパリ君の力を安全に測るための、こちら側の態勢は整ったわけだ。

 後は一年生側だな。

 さて、どうやって奴一人を誘導しようか。

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