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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第四十五話 帰校

 学院に帰り着いた。


「休んでいただくつもりだったのに、村のトラブルに巻き込んでしまって、しかも解決までしていただいて……本当にありがとうございました」


 トカゲ車から降りるとタクララちゃんが改めて頭を下げてきた。


「悪くない休暇だったよ」

「そうっす。ボクたち割とのんびり過ごしてたんすよ」


 後輩の言うとおり、のんびりと過ごさせてもらった。


 それに実は格ゲー的収穫も得ていたりする。

 ソニオ君のダッシュだ。

 総合的に言えば私たちの方が足が速いのだが、開始二歩までは彼の方が速い。

 そう、彼は一歩目からトップスピードで走れる縮地使いだったのだ。


 これを利用したのが、→→もしくは←←での極短距離移動、いわゆるダッシュ、バックダッシュである。

 いやはや、このような基本技能を今まで習得していなかったのは、汗顔の至りとしか言いようがない。

 空中ダッシュは目下研究中だ。


「悪くないどころかいい休暇だったじゃない。また是非行きたいわ」

「ありがとうございますミサお姉様、キャミィさん」


 首を傾げてニコッとするタクララちゃん。

 いつ見てもいい笑顔だ。


「あ、ところでレベッカちゃんはどうされるんですか?」

「クワ?」


 寮はペット禁止だったかな?

 でもレベッカって食事も排泄もしないんだよ。

 非生物と言っても差し支えないんじゃないでしょうか。


「クワクワ!」


 物みたいに言うな! と抗議でもしているのだろうか。

 口であれこれ言う限りは、私たちが何もしないと帰り道で悟ったようだ。

 口だけ弁慶みたいになりつつある生意気ドラゴン。

 部屋から出さずに置きっぱなしでいいんだろうか?


「ククワクワクワ!」


 一日一回は散歩に連れてけって?

 え〜。


 でもお世話しないのにペット飼っちゃいけないし……


「散歩、交代制ね」

「贅沢なやつっすね」


 後輩との交渉はすぐにまとまった。


 でも外に出す時どうするよ?

 こんなのが歩いてたら何言われるやら。

 デスシックル先生に見つかった日には、文字通り首が飛んでしまうのではないか。


 姿を隠す魔法でも覚えさせるか。


 そう言えばこの子の属性適正はどうなんだろう?

 まあいいや、魔法は後輩の専門分野だ。

 私は格闘技術面を見ればいいのだ。


 とりあえず散歩に行く時は鞄にでも入れて、学院外まで連れ出そう。


 そんな算段をした。








「おーす! 元気してたかあ?」


 ジャンネは聞き返すまでもなく元気でしかない。



「やっほ〜、アラシュだよ〜。みんな元気〜?」


 幼児番組のお姉さんか。



「ただいま戻りました。いい休暇を過ごせましたか?」


 出会った当初の堅苦しさを見せるミコルル。

 だが表情は穏やかで親しげだ。


 これで班員は全員集合。

 近況を報告し合う、と言うか取り留めもないおしゃべりが始まった。



 女三人寄れば姦しいのに、こちらはそれを上回る四人パーティーだ。

 あっちこっち話も飛ぶ。

 それなのによく会話が続くものだと、その輪に居ながら感心する。


 プラスドラゴン。


「え?」

「あ」


 つい出したままにしてしまった。


 って言うか気づくの遅。

 レベッカはじっとしてたから置物みたいだったけど、それに今気づくってどうよ?

 女性脳は細かい違いに気づき易いんじゃなかっただろうか?

 彼女たちの女子力が心配される。


「何だよそれ?」

「クワ!」

「うわ! 吠えた!?」


 物扱いするなって怒ってますよ。


「きゃ〜、かわいい〜!」


 どこが?


 ところでレベッカって褒められると嬉しそうにするよね。


「何ですかこの子? トカゲかと思いましたが、全然違う、愛嬌のある顔をしてますよね」

「クワ〜イ」


 あ、もう可愛がってくれそうな人に、すぐすり寄って行くんだから。

 でも早い内に班員には言っておいた方がいいか。


 実は、これこれこう言うわけでして……




「へえ。祈りが無いとそんなことになるんだな」


「ふ〜ん。この子レベッカって言うんだ〜。しょうがないからナイショにしといてあげるか〜」


「そんな闘神らしくない闘神像もあるんですね」


 レベッカを一人ずつ観察しながら手渡して、タクララちゃんの村で起こったことを説明した。


 アラシュとミコルルは大丈夫だろうけど、ジャンネにはしっかり言っとかないとすぐレベッカのことが漏れそう。

 秘密だからね、と何度も念押し。


「分かってる分かってる」


 分かってない人の返事だよ。

 しっかり分かってもらうためにも、休暇が終わるまでに散歩に連れ出す練習に付き合わせよう。


「散歩? アタシんち犬飼ってっから得意だぜ? お手とか仕込むか?」

「クワクワ!」


 犬じゃないでしょ! と抗議しているっぽい。

 犬扱いも嫌なの?


「へっへっへ。そんな風に粋がっててもな……」


 ジャンネが悪徳商人か人買いのような顔でレベッカに手を伸ばす。


「こうしてやりゃあ、みんなおとなしくなるのよ……くく」


 ジャンネはレベッカを、小型犬を抱っこするように股下に腕を差し入れ、体に引き寄せた。


「ク、クワ……?」


 毛ならぬ鱗に沿って体を撫で撫で。


 お?

 レベッカが気持ち良さそうに、目をトロンとさせているぞ。

 こんな特技があったとは。


「よし、行こうぜ!」


 しかし散歩連れて行くのに寝かせてどうするのか。

 と思いつつ四人で外出。


 向かうのはランニングコースだ。

 この山道がこの子の散歩コースとなるだろう。








「ふう、ふう。久しぶりに思い切り走ると息が上がるぜ」

「太った?」

「て、てめコノー!!」


 泣きそうな顔でジャンネは怒り、私に掴みかかってきた。


「あ〜もう、ダメだよミサ〜。ジャンネも乙女なんだから。一応」


 アラシュもミコルルも休暇中それ程だらけていないことが窺い知れる。

 が、ジャンネは違う。


 がっ


 私はジャンネの脇腹を摘んだ。


 ガーン


 明日でこの世が終わるような顔をするジャンネ。


「ミ、ミコルルー!!」


 そして彼女は優等生のミコルルに泣きついた。


「よしよし。ミサ、やり過ぎですよ」


 ピピーピュピー


 ここは口笛を吹いてやり過ごすしかない。


「おいレベッカ! もっかい行くぞ!」

「クワイ!」


 チクショー、と言いながらジャンネはもう一度ランニングに行った。


 しかしレベッカは力の余った若い犬みたいだな。

 あちこち穴を掘ったりしてはダメだぞと言っておくか。

 穴掘る習性があるか分からんけど。




「よお。君たちは相変わらず熱心だな」


 ドキイッ


 そうだ。

 この山はヒュウガ先生も走ってるんだった。

 レベッカ見つかってないかな?


「さっきジャンネが変わった鳥と走っていたが、この山で見つけたのか?」


 見つかっとる!

 走ってるとこ見られたら置物ですとも言い張れないじゃん!


「あれいいな、走るパートナーに。俺も山で見つけたら手懐けるか」


 何言ってんの!?

 もう半年近く山を走っててあんな奴見たことないでしょ!

 節穴なの!?

 それともランナーズハイをこじらせて変になっちゃったの?


「しかし山は色々教えてくれるな。こうして走るだけでも学ぶことが多い」


 今度は登山家みたいなこと言い出したぞ。

 こちらとしては話が逸れて助かるけど。


「それに気力も体力も充実しつつある。もう少ししたら気属性魔法にチャレンジしてみようかと思うんだ」

「頑張ってください。応援してます」


 ヒュウガ先生には後輩が迷惑をかけているから、応援したいのは本心だ。


「ではまたな。新学年も頑張りたまえ」


 たったった、と駆け去るヒュウガ先生。

 できればシュタッ、シュタッと、もう少し忍者的な動きをしてほしいものですな。








 残りの休暇で次第に学生も戻って来て、学院は賑わってきた。

 以前同様ユリキャットちゃんはハァハァしていた。


 そして見かけぬ顔、初々しい姿。そう、新入生が一年生寮――かつては三年生寮だった所に入って来つつある。

 新入生には有望な格ゲーキャラがいるだろうか。

 大変楽しみである。








「あんた、三年生?」


 はん?


「自分、一年だけど、これからこの学院シメルんで。……よろしくぅ」


 リーゼントにビシッと櫛を通して、襟の大きな学ラン(?)を着たビートル族の男子が言った。


 月を見るたび思い出しそうな赤い髪のツッパリだ。

 目、合わせないどこ。

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