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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第四十四話 長期休暇(その七)

 やはりブリゴンナお婆ちゃんの祈りが魔物の強化を抑える鍵だった。

 ブリゴンナお婆ちゃんは小柄な体を活かして穴蔵に入って、あの闘神像に祈っていたのだ。


 何故ブリゴンナお婆ちゃんが祈りを他の村人にさせなかったのか。

 今となっては知る術など無いが、私としては、恥ずかしがり屋の闘神像の意向があったのかもしれないと思っている。



 ところでオマケのように確保したドラゴンだが、コイツに関して闘神像から教えていただいたことがある。


 ブリゴンナお婆ちゃんが亡くなり祈りが絶えてから、魔物の生まれる瘴気の濃い場所は、皮肉にも闘神像の周囲だった。

 そんな所に親から逸れた卵が一つ。

 闘神像の側まで何かの拍子で転がって来て、普通なら孵るはずのない何かの卵は、そんな特別濃い瘴気に晒され続けた。

 そして生まれてしまったこのドラゴン。



「半分魔物じゃないっすか。始末した方が良くないっすか?」


 震え上がるドラゴン。


 私も最初はそう思ったさ。

 でも闘神像がさ、可哀想だから面倒見てやってくれっておっしゃるんだもの。

「しょうがないっすねえ。おイタしたら即しばくっすからね」

「クワ、クワイ……」


 半泣きのドラゴン。


 私と後輩はコイツを連れ帰ることにした。




 帰り道でも魔物と遭遇した。

 まだ魔物のレベルがダウンするまでは少しかかるだろうが、ひとまずは朗報を持ち帰れる。

 シェルリちゃんの足取りは軽かった。








 ただいま〜。


「シェルリ! 聞いたぞ! 外に出ていたそうじゃないか!」


 村長宅に戻ったらルマ氏と遭遇。

 あらら、これはもしかして。


「大丈夫だよ、もう前とは全然違うんだから」


 無断外出だったのか。


 ルマ氏はシェルリちゃんに駆け寄ると、額に手を当て瞼をめくり、口を開けさせ脇に手を……


「もう! 大丈夫って言ってるでしょ!」


 ルマ氏のこの心配しよう。

 シェルリちゃん、以前はそんなに酷かったのか。


「シェルリちゃんのお陰で調査ができました。ありがとうございます。ご心配をおかけしましたが、道中体調を崩すようなことはありませんでした。念のため後で様子を見に伺わせていただきます」

「あ、あの時の……その節は私も娘も大変お世話になりました」


 落ち着きを取り戻してくれたシェルパパさん。


「ところで調査と言うのは……?」


 さて、村の人たちに集まってもらうか……

 と思ったが私たちは他所者だしな。

 ここはまず村長ことクラパパさんにだけ伝えておこう。


 てことでこの場にいる人にだけ説明。




「ブリゴンナお婆ちゃんのお祈りのお陰で、これまで平和だったんですね」

「ソニオ兄ちゃんの勘が当たっちゃったのかー」

「調子に乗るから黙っとこっかー」


 既にソニオ君は帰宅しておりこの場にいない。

 キラミラちゃんは言いたい放題だ。


「そんなありがたい像があったとは。ブリゴンナ婆さんはどんな気持ちで祈っていたのだろうな。誰にも伝えられないまま……」


 クラパパさんは暗い顔で故人を偲ぶけど、そんな悲しい雰囲気は無かったんじゃないかなぁ。

 当の闘神像ご自身が多くが集まるのを好まないとなると、案外恥ずかしがり屋の友達に一人会いに行ける特別な立場を楽しんでたかもよ?


「ところで、その……トカゲ? は何ですか?」


 タクララちゃんがドラゴンを指して言った。


「飼うことにしたっす。檻みたいな物無いっすかね?」

「虫カゴみたいな感じの物ですか? おとなしそうですけど、逃げちゃうんですかね?」

「クワ! クワクワア!」


 私は逃げるようなドラゴンではありません。


 そんな主張をしているようなドラゴンの鳴き声。


「闘神像の一言が無ければボインボインさせた件で死刑なんすから、逃げようとしたら即ギロチンっすよ」

「クワイ!」


 はい! なのか、コワイ! なのか分からないが、ドラゴンは逃げないと思うな。

 多分コイツも闘神像の近くにいて、何かを伝えられてはいるだろう。

 ……と思いたい。


 その内大きくなって、自家用ジェットみたいに便利な乗り物にならないかしら?








 その後やっぱり村人たちを集めて、今回判明したことの説明と、今後のことを相談することになった。


「そうかぁ。婆様がなぁ。ご苦労様じゃった」

「のんびり気ままに暮らしとる人じゃと思っとったがなぁ。羨ましいと思って済まんかったぞい」


 法事の時の親戚の集まりみたいな雰囲気。

 相談の内容がために子どもたちも集められている。

 そこで決まったのは、体の小さな子どもたちを中心に、順番でお祈りをしに行こうということだった。



「私も行くことになりました」


 シェルリちゃんもパパさんを説得して行くことに決めたらしい。

 彼女には丸まりがあるからね。



 しかしまだ魔物の強さは下がっていない。

 私と後輩は、しばらく穴蔵前まで付き添うことになった。








 今日はソニオ君の番。

 子どもと言うには微妙な歳だけど、彼も丸くなれるからね。

 それにブリゴンナお婆ちゃんのことを気づいたことからも、彼には潜在的な信仰心がありそうだから。

 きっと闘神像も悪く感じないと思うのだ。



「よっしレベッカ、競争しようぜ!」

「クワイ!」


 ドラゴンのレベッカはソニオ君が大好きだ。

 トゲでチクチクするのがマッサージになるからだろうか。


 レベッカと言う名前は、ソニオ君の適当命名だ。

 雌雄不明なこの生物に何故女性名?

 私たちは“クワマン”とか“ワクワクさん”とかでいいって言ったんだけどな。

 ドラ公を見たソニオ君が「かっけー!」って目を輝かせて速攻で名前を口にして、それにドラ公が飛びついたのだ。


 まあ名前ぐらい気に入ったもので呼んでやろう。


 駆けっこ対決レベッカ対ソニオ君、彼に勝てないようではまだまだ。

 この子は二足歩行もできるけど飛べない。

 幼体ゆえなのか、鶏的に飛行能力の無い生物なのか。

 まあ立てるのであれば格ゲー界デビューすることもできるだろう。

 鍛えてラスボス枠を務めてもらうこともアリかもしれない。


「クワ?」


 また言葉に出してないのに、何かを察したのか。

 レベッカはこちらを見ようか見まいか、そんな挙動をしている。


 まあ君にとって悪い話ではないから安心したまえよ。


「ク、クワイ」


 うんうん。

 お互い頑張りましょう。








 この村で過ごすこと十数日、とうとう弱い魔物しか見なくなった。

 私たちが帰るまでに元に戻って良かった。

 今は大人たちが、祈りを捧げる子どもたちに道中付き添っているが、いずれは闘神像までの参拝道が整備される予定だ。


 明日はいよいよ学院に向けてここを出発せねばならない。

 残念ながら闘神像のことも、レベッカのことも不思議なことは不思議なままだ。

 カプルコン寺院に帰ったら、ここの闘神像のようなケースがあるのか尋ねてみたい。



「お姉様! 寂しいです!」

「お姉さんたち帰らないでよ〜」

「もっと遊びたいよ〜」

「はいはい、お姉様方は勉学に忙しいんです。無理言わないの」


 タクララちゃんがシェルリちゃんやキラミラちゃんを私から遠ざける。

 タクララちゃん妙に笑顔なのが気になる。



「レベッカぁ! お前だけでもここに残ってくれよぉ!」

「クワクワクワ〜ン……」


 抱き合って泣いているのはソニオ君とレベッカだ。

 何が彼らを惹きつけ合うのか分からないが、会ってからずっとベタベタだった。

 少々気が引けるが、魔物ではないと言いきれないレベッカをここに置いておくわけにはいかない。


「ほら行くっすよ」


 ソニオ君からレベッカを引き剥がす後輩が奴隷商人みたいだ。


 でも何だかんだで逃げないレベッカは何を考えているのだろうか。

 やはりこの子も闘神像から何かを伝えられていると思われる。




 盛大な送別会を開いてもらって別れを惜しんだ。



 そして翌日、村人総出で私たちを送り出してくれた。


 さあ、気持ちを切り替えて学院モードに戻すとしよう。

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