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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第四十三話 長期休暇(その六)

 シェルリちゃんの絶対防御アピールが成功し、私と後輩は彼女に道案内をしてもらうことになった。


 何故かタクララちゃんがソニオ君を睨んでいる。

 キッ! て感じで。


 プルプル震えながら手を振ってくれるタクララちゃんは気になるが……

 善は急げ、早速シェルリちゃんを伴い出発だ。




「なるほど〜。この尻尾、外側が硬い鱗で覆われてるんすね」

「本当だ。それでいて内側は弾力があるんだね」

「うはは。お姉様たち、ちょっとくすぐったいですよ」


 シェルリちゃんの尻尾を持ち上げ、矯めつ眇めつ撫でつ。



 彼女の丸まりは、体をきゅっと小さくしてこの尻尾を体に巻き付けるものだ。

 モーフィングボールを取得することで可能となるものとは異なる。


 この丸まり状態で転がることもできれば、弾力を利用して大きく弾むことも可能であり、大ジャンプ時は私たちの跳躍に匹敵する程高くまで上がれる。

 ただ跳躍時に打撃を食らうと、やはりその弾力でゴルフボールの如く遠くまで飛ばされてしまうので、魔物が出たら丸まり状態でじっとしておいてもらわねばならない。




「やっぱりお外はいいですね! 気持ちいいです」

「シェルリっちは病気だったんすか?」

「う〜ん、多分?」


 曖昧な彼女の答えだが、彼女が頻繁に熱を出すようになったのは、一年半ぐらい前かららしい。

 当初は風邪が長引くな、と思っていたら、小康と再発熱を繰り返す状態が続くようになったと。

 それがこの前あげたポーションで、体の不快感がすっかり無くなって快調だと言う。


 ポーションで体力が戻って病原を駆逐できたということかな?


 ……あれポーションだったよね?

 毒じゃなくて良かったわ。



 そんな快調なシェルリちゃんは元々人懐っこいのか、私にすぐくっついてくる。


「楽しいですね! お姉様」


 ハートマークが付きそうな語尾だ。

 子どもだから外に出たくて仕方なかったのだろう。

 私たちと離れると危ないから、と注意したからくっついてくるが、もう少し離れた方がお互い歩き易いかな。


「私は大丈夫ですよ」


 そうですか?




 時々現れる魔物は彼女に丸まってもらってる間に、私と後輩がやっつける。



 そうしてしばらく歩き、例の穴蔵とやらに到着した。








「これは、ボクと姉様では入れないっすね」

「それにしても荒れてるわね」


 草花が芽吹く時期だからしょうがないけど、穴蔵の周りが草ボーボー、穴の入口に土砂も積もっている。


「とりあえず拝んでみましょうか」


 作法は違うかもしれないが、三人揃って拍手拝礼。


「ブリゴンナお婆ちゃんは、一体何に祈ってたのでしょうか?」


 シェルリちゃんの問いに、私と後輩は沈黙したまま。


「お姉様?」


「ここ、何かいるっすね」

「そうね」


 これは何だろうか?

 魔物ではない。

 だが小動物とはまた少し違う気配を感じる。


 そしてまた、ここを壊してはいけないような、直感に働きかけてくる何かもある。


「ここに入る必要があるんですね! じゃあ、私が行ってきます!」

「あ」


 シェルリちゃんが丸まりで入ってしまった。


 ゴロゴロゴロゴロ……

 結構奥行きがありそうだ。



 ボイン!



 突然ボールが弾んだような音が穴蔵から響いた。



 ボインボインボボボイン!



 激しいな!


「おーい大丈夫っすかあ? うわ!?」


 呼びかけてすぐに、後輩は穴蔵に突っ込んだ頭を素早く出した。

 と同時にボールのようなシェルリちゃんが穴から勢いよく飛び出してきた。


「ほいっと」


 ナイスキャッチ。

 後輩はシェルリちゃんを無事受け止めた。


「ほ、ほわわわわ……」


 丸まり解除したシェルリちゃんは目を回している。


「へ、変なのが、いました〜」


 それだけ言って彼女は再び丸まった。

 うん、いい選択だ。


 それで、何が穴から出てくるのか。



「クワアアアアア!」


 出て来た!

 そして弾丸のような勢いで飛んで来たソレを、デコピンで打ち落とした!


「あ〜」


 後輩が墜落した飛行物体を見て咎めるような声を上げる。

 目の前に来るから、つい反射的にやってしまったんだよぉ。


 ところでデコピン一発で撃沈されたその飛行物体は……


「ドラゴン?」


 そう、白に近い銀色で、鳩より少し小さいぐらいの。


 ヒョイ、と首根っこを掴んでマジマジと観察してみる。

 蛇とかトカゲっぽくて胴体が大きく、翼のあるあのドラゴンである。


「ク、クワ……」


 目が合った。

 暫し考察……格ゲー界にドラゴン……

 ちょっと合ってないかな。

 廃棄、没、そんな単語が頭を()ぎる。


「クワクワ! クワァア!!」


 急にジタバタし始めるドラゴン。


 おかしいな。

 口に出してはいないはずだけど。


 だけどこの気配、魔物じゃないまでもどこか不思議な感じがあるんだよなあ?

 やっぱり処分……


「クワワ! クワワワクククー!!!」

「姉様は思ったことがすぐ顔に出るっすから。貸してくださいっす」


 首根っこを掴んだまま後輩にパス。

 後輩はドラゴンの股下に手を入れ、犬を持つようにドラゴンを抱えた。


 ドラゴンは少しホッとした様子。


「アイドル×ドラゴン…………イマイチっすね」

「クワァァァ……」


 後輩の冷酷な気持ちが伝わったのか、ドラゴンは項垂れ力無く鳴いた。


「あ、あの」


 私たちがドラゴンの処遇を考えていたら、シェリルちゃんがおずおずと言ってきた。


「その子はもしかして、この穴の中のものを守ってたんでしょうか?」

「クワ! クワキュキュキュー!」


 そうなんです!

 怪しい者ではないんです!


 とでも言いたいのだろうか。

 キュとか言って、ちょっと媚び入ってませんか?


「クワク〜」


 また項垂れたドラゴンを差し置いて、シェルリちゃんに質問。


「穴の中にあったものって?」

「え、と。これぐらいの、石の像です」


 シェルリちゃんが手で石像のフォルムをなぞる。


「お地蔵さんっすか?」

「闘神像とか」

「こんな小さなっすか?」

「まさかね」


 ははは、と私と後輩は笑い合った。


 しかしすぐ二人して顔を見合わせて、ううむと唸った。


「確認するしかないっすね」

「でもどうやって? 穴蔵ごと壊して広げるわけにはいかないよね」

「這って頭から入るしか……」


 いやあ、まあ、それしかないんだよなぁ。

 でも結構奥行きあるよ?

 下手すれば中にすっぽり入った頃に抜けなくなって、醜態を晒すことになるんじゃないかと心配です。


「一メートルぐらい入れば、その先はしゃがんで進めるぐらいには広がってました」


 そうなのか〜。

 そうなってるなら入ってみるか。


 一応より小柄な後輩の方から。




 戻って来たのは頭からだ。

 確かに反転するぐらいのスペースはあるようだ。


「どうだった?」

「乱暴禁止みたいっす」


 ?


 入れば分かる、そう言う後輩の言葉に、今回は素直に従うことにした。


 匍匐前進、そしてハイハイ。




 目の前に現れたのは地蔵。

 ではなく、後ろを向いて顔の横に手を当てた像だった。

 これも闘神像、なんだろうな。

 性格はとても分かりやすい。


 拍手拝礼し、指で突いてみる。



 乱暴はやめてね



 頂戴したのは闘神像らしからぬお言葉。

 そして私はこの恥ずかしがり屋の闘神像に、あれやこれやとお尋ねした。




 なるほど。

 こんな闘神像もあるんだなぁ、と思いながら、もう一度拍手拝礼。

 そうだ、あのドラゴンはここの守護者とかでしょうか?



 知らない



 あのヤロウ……それっぽく振る舞いやがって。



 でも……



 そうですか。

 そうおっしゃるのであれば、まあ。

 ――私は礼をしてその場を後にした。




 穴蔵脱出。

 ふう、探検家気分終了。


「こんな闘神像もいるんすね」

「同感。遠足の時に変わった性格の闘神像は見たけど、こちらはまた一際、ね」


「あの、どうでしたか?」


 そうそう、シェルリちゃんに説明しなきゃね。

 まずは一番大切なことから。


「大丈夫。ここの状況はぐっと良くなるよ。今まで、ブリゴンナお婆ちゃんがしてくれてたみたいにお祈りを欠かさなければ、ね」

「え! やったぁ!」


 シェルリちゃんは飛び上がって喜んでいる。


 そして私はドラゴンを抱えた後輩と向き合う。


「コイツ、別に守護も何もしてないらしいよ」

「へ〜。そっすかぁ。ボクたちを騙そうとするとは……なかなかやるじゃないっすか」

「ク、クワ?」


 もしかして、オラオラですかあ!?


 そんな顔のドラゴンに、私たちはニヤリと笑いかけた。

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