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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第四十一話 長期休暇(その四)

 タクララちゃん宅で一夜を過ごした翌日の朝食後。


「お父さ〜ん、カッコ悪いよ、それ」

「そうだよ〜。ミサお姉さんとキャミィお姉さんにお任せしようよ〜」


 キラミラからの容赦無い言葉は、武装を始めたパパさんに向けたものだ。

 バケツを被って鍋の蓋と竿竹を持った感じの。


 言っちゃ悪いが、確かにとても弱そうで似合わない装備だ。

 でもそんなこと言っちゃうと、パパさんは傷ついてるぞきっと。


「そんなこと言わないの。お父さんだってやる時はやるんだから」

「そうだぞ。それにやはり、お客人を村のゴタゴタに巻き込むのはな」


「気にしないでください」

「そうっすよ。魔物狩りはミサ姉様の趣味みたいなもんっすから」


 こら、今日は自分にやらせてくれって言ってたでしょ。

 そこは「ボクの趣味」って言いなさいよ。


「……そうかい?」


「あなた……」

「お父さん……」


 俺に任せろ的なことを言ったパパさんの、速攻弱腰変化。

 クラママさんとタクララちゃんの目から光が消えている。



「ついて行きますね」

「レッツゴーっす」


 板挟みになったクラパパさんの目はグルグルしている。


 意地悪してるわけではない。

 パパさんには悪いけど、変な見栄を張ってケガしてもしょうがないからね。

 あのレベルの魔物で大慌てになるぐらいだから、格ゲー的に有望な人もいないだろう。


 アクションゲーなら有望な子はいるけど……



「サクッと済ませてくるから、心配しないで」

「バビッとやっつけてくるっす!」


「ミサお姉様、キャミィさん。お父さんを、よろしくお願いします」


 私はタクララちゃんの頭を撫でた。


「お姉ちゃん顔が赤いよ」

「変なお姉ちゃん」

「う、うるさいの!」



 パパさんがタクララちゃんに手を伸ばしたら、スッと身を引かれた。


 悲しみのパパさん。


 まあまあ、思春期の娘たあそういうモンですよ。

 私と後輩はパパさんを慰めながら、村の人が集まるのを待った。








 あ、ソニオ君みっけ。

 隣の似た子がヘイジ君かな。

 こっそりとソニオ君に手を振ったら、直立姿勢で思い切り頭を下げられた。


 あ、あれ?

 そんな上下関係教えてないんですけど……


「しばいたんすか?」


 違うよ!


「あのヘッジホッグ、昨日戻ってから元気が無いと思ったら一機姉様にやられてたんすね。でも、2Pキャラもいるみたいっすから、多分大丈夫っすね」


 人の話を聞かないな、この後輩は。


 いや、私も2Pキャラかって思ったけど……

 赤の兄より少し背が高くてブレーキの効きづらい緑の弟……


 ゲームが違うだろ!


 バシッとツッコミ。

 ズン、と音がして後輩の体が揺れる。


 何故かソニオ君がぶるりと震えた。


「みんな集まったようだな。では閉じ込めた魔物を倒しに行こう。残りは、二体だ」

「三体じゃないのか?」

「知らないのか。昨晩倒されたんだよ」

「なんと! 誰が!?」


 騒つく村人たち。

 注目を浴びる雰囲気になりつつあるのかな。

 嫌だなぁ。


「じゃあ大したこと無かったと言うことか!」

「そうかもな! 残りも早く倒しちまおう!」


 誰かのお気楽な意見のお陰で、私は注目を免れ、周囲の意気は高揚した。


「二手に別れるか!」


 そんな意見も出て、多過ぎる人数はちょうど半分ずつに分けられることになった。

 私と後輩はもちろん別グループに別れた。


「あれ? 何だその子たちは?」

「うちのお客さん、昨日帰って来たクラの友達だよ」

「おお、クラちゃん帰って来たのか。元気か?」

「都会の空気に染められてねえか?」


 リラックスモードに入ったのか、緊張を紛らせているのか。

 日曜日の町内ゴミ拾いみたいな空気になっている。


「しかし女子は危ないんでないか?」

「大丈夫だよ」

「ん? なんだソニオ。危なくなったらおめえが抱えて走るってか?」


 ワハハ、とおじさんたちが冷やかす。


 ソニオ君は鼻で笑うようにあしらった。

 私の方への意識をわざと外している。

 そんな感じを受けた。








「じゃあ引き上げるぞお。準備はええかあ?」


 私たちは井戸の方に来ている。


 井戸を取り囲んで村人が武器を構えた。

 出てくるなり集団でボコスカにしてしまおうと言う作戦だ。


「せえの!」


 ガラガラと滑車が回り魔物を載せた桶が上がってくる。

 誰も井戸を覗こうという人はいない。

 それどころか腰が引けている。


 この状況を見て頼もしさを感じる人はいないだろう。



「キシャアアア!!」



 ただ、そうやって腰が引けていたお陰で、魔物が引き上げられた瞬間の、尻尾での薙ぎ払いを食らった人がいないのが幸いだったろう。


 魔物の体はチワワぐらいだが、尻尾だけが三メートル近くある。

 魔物は体が井戸の上に出るなり、尻尾を地面と水平に一回転。

 尻餅を突いた引き上げ手の頭を掠めた。

 空気が引き裂かれるような鋭い尻尾の一撃で、村人はすっかり気圧されている。


 私は魔物の前に進み出た。


「あ、こら!」


 村人が制止の声を上げるが、集まった人たちにこの魔物の相手ができるとは思えなかった。


「キシャアアア!!」


 魔物が今度は体を一回転させ、私を両断するように尻尾を振り下ろしてきた。


「ふっ!」


 私の蹴り上げた足が尻尾と衝突する。


 ズン


 私の足が少しばかり地面にめり込み、魔物の体は逆回転し地面に叩きつけられた。


「い、今だ!」


 わっ、と村人が魔物に殺到する。

 そして棍棒やら何やらで袋叩き。


「こいつ! しぶとい奴め!」


 声だけだと威勢が良さそうなのだが、やっぱり腰が引けたままなので、なかなか倒せない。

 ゴキブリを叩くに叩けないとこんな感じになった記憶が蘇る。


 あまり思い出したくない記憶を頭の隅に追いやりつつ、たまに飛び上がりそうになる魔物を、その度に私が魔法で押さえた。




 そうこうしている内に魔物を倒し、ドロップに変わって村の人たちはへたり込んだ。



「い、一体でこれか」

「武器庫の方は大丈夫なんだろうな?」


 と、そんな話をしていると、その武器庫班の人たちの方からやって来た。


「何だ? 魔物はどうしたんだ?」


 もしや手に負えずに援助を要請に来たか。

 そんな心配をして尋ねるこちら側に対して、向こうの代表は苦笑いで手を振った。


「おおう、楽勝だったぞい」


 向こうの中心では後輩がブイブイしてチヤホヤされている。


「寺院の関係者って言ってもこんな女子が、って思ったらよぉ、とんでもなく強いんだからまいったわ」

「キャミィちゃんみたいな強くて可愛い子が来てくれたのはラッキーだなや」

「まあまあ皆さん、そんな褒めると照れるっすよ」

「うちの村に嫁さ来ればええのに」

「残念っす〜。ボクはみんなのアイドルなんすよ〜」


 そこまで嬉しそうにできると、褒める方も気持ち良かろうよ。


 うん? ヘイジ君がこちらに来たぞ。


「なあ」


 なんだね?


「あんたも、あの子と同じぐらい強いのか?」

「大体同じぐらいじゃない? 本気の勝負をしたことは無いけどね」

「そうなのか……」


「おいヘイジ。あまり失礼なことを言うなよ」


 ソニオ君が弟君に注意した。

 君の中の私はどんな位置付けなんでしょうか?



 場の空気がすっかり弛緩した頃、クラパパさんが前に出た。


「よし、これで村内の魔物は一掃された。次は外部との連絡だが……誰か町まで行ってくれる者はいるか?」


 しいん……

 返事をする者は無い。


 私と後輩はこの辺の地理を知らないから名乗りも上げられない。


「ソニオ、ヘイジ、どうかな?」

「うん、足は俺たちが一番速いんだろうけど、このレベルの魔物が出るんですよね? 二人だけじゃとても魔物を振り切って隣町まで行ける気がしないすよ」


 ソニオ君は弱気だ。



 魔物の強さが、とみんなが言い始めると、その魔物を蹴散らした私と後輩に視線が集まるのは自然なことだっただろう。


「私たちなら構いませんが、案内は必要ですよ。そしてそれは、自分の身を少しでも守れる人じゃないと」

「まずは、この村周辺の闘神像の位置とか、今までの魔物出現状況とかを知りたいっす」


 うん。

 突然魔物が強くなった理由は何なのか。

 外から来た私たちが状況を聞けば原因が分かるかもしれない。

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