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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
68/138

第三十七話 闘技会(後編)

 あれから先輩チームはなんと三回戦、四回戦を突破し、とうとう準決勝の相手をも下してしまった。



「いける! これは優勝いけるわね!」

「あと一戦か。思えばここまで来れたのも必然。最後も我らが勝利で決まりだな」

「ゆ、油断せずにいこうね」

「皆さん体調は万全ですか? 少しでも違和感があるなら、今のうちにキュアプリン先生に診察していただきましょう」


 完っ璧に調子乗ってます、先輩たち。

 常勝軍団みたいなセリフ吐いちゃって。



「姉様たちの推しチームっすよね? ちゃんと決勝まで来て、見事なもんじゃないすか」

「私たちも推しチーム作れば良かった」

「残念。でも来年は自分たちでここまで来る」


 私は無言で微苦笑を返した。


「姉様の言いたいことは分かるっすよ。でも、まあプロとアマの違いっすよ」


 何だ?


 分かったようなことを言う変な後輩。


「プロレスの影響だけで今回出場禁止になったと思ってるなら、姉様は来年も闘技会には出られないっすよ」

「それはどういう……」

「ミサぁ、先輩たちの調整手伝うぞ!」


「あ、うん」


 意味深な言葉の真意を問う暇も無く、決勝戦に向けた先輩たちの調整に呼ばれ、私は後輩の言ったことを忘れた。








 決勝戦は三年生チーム同士の戦いだ。

 やはりこの年齢の一年差は大きいのだと実感させられる。


 うちの先輩たちがクジ運と試合中のラッキーで勝ちを重ねて来たのなら、相手はきっと正統派実力チームなのだろう。

 なにはともあれ、良い試合を期待する。


 できれば格ゲー要素をふんだんに散らしたような、ね。




 さ、場も盛り上がってきた。

 いよいよ決勝戦スタートだ。



 ファイナルラウンド

 ファイッ!



 敵チームは巨人、オーガ、オークの前衛三人という攻撃重視スタイルだ。


 後衛は小柄なドワーフだが、試合開始と同時に防壁を築き始めたぞ。

 さすが土属性の適正ダントツな種族だけあって、構成の速度も注げる魔力量も目を見張るものがある。


 なるほど、これで速度に不安を抱えた前衛が抜かれたとしても、戻って来る間ぐらいは持ち堪えられるというわけか。


 どう出る先輩方?



 ここは先輩たちも全力で応戦。


 デュラファス先輩は最も速度のある巨人を足止めに入った。

 一対一では分の悪い戦いだが、それをサポートするのはガストン先輩。

 そしてガストン先輩は目眩しの濃霧を自陣にまで広く散布した。


 シルキル先輩は土魔法で足場を悪くし、マフラーで敵の脚を絡め取り移動を阻害する。


 オシティ先輩は呪いで相手の速度にデバフをかけた。


 徹底して相手の足を奪い、各個撃破する作戦のようだ。


 大きな歓声があがった。

 これまでその圧倒的なパワーで、立ちはだかる敵チームを速攻で仕留めてきた重量級チーム。

 それを止めたことで、観客が興奮しているらしい。



 むむ、やるじゃないですか先輩。

 でも霧で少し見にくいですよ。

 観客へのサービスが足りません。



 しかし敵も慌てない。

 じっくり歩みを進めることにしたようだ。



 おっと、ここで出た!

 オシティ先輩の、仲間を呼ぶ黒い手だ!

 ワラワラとオークに十三本全てが殺到する。


 オークも抵抗したが、気づくのが遅かった。

 十本を潰したものの締め落とされ脱落。



 一人欠けたことで観客はより沸いた。



 歓声がデュラファス先輩とガストン先輩を後押しする。

 巨人への攻勢を強めて形勢を()()()()()する。


 そう、まだ逆転せねばならない。

 未だ敵が優勢なのだ。


 巨人はデュラファス先輩とガストン先輩で互角。

 オーガ対シルキル先輩ではかなり不利。

 オシティ先輩のマド……仲間を呼ぶ黒い手はしばらく使えない。

 シルキル先輩が抜かれてしまえば、負けはほぼ確実なのだ。



 ワアアア!

 ワアアア!



 流れは先輩チーム押せ押せだ。


「くらえぇ!!」


 今度はシルキル先輩のとっておきか?

 シルキル先輩が飛びのいてマフラーを地面に放り投げると、マフラーがトグロを巻く蛇のように地面に渦を巻いた。

 そして


「ああっ!?」


 あらら?

 マフラーが前衛の三人の方に飛んで行ったぞ。


「ぐえ!」


 そしてガストン先輩の首を絞めた。


 更にガストン先輩から灰紫の毒々しい煙が噴き出して……


「ぐ、ぐおおお」

「ぬぐわあああ!」


 間近で食らった巨人とデュラファス先輩はノックアウト。


「ふぎゃああ!」

「うぐ……」


 シルキル先輩は目を回している。


 オーガは耐久力があるのかなんとか前進をしている。



 オシティ先輩このピンチを凌げるか!


 ……ってなんでそんな離れてるのにピヨってんですか!?

 ダメだ、ここに来てオシティ先輩のひ弱さが致命的なマイナスに……


 あぁ、そしてオーガがふらつきながらも先輩たちの砦を破壊。



 勝負あり!!



 ここに敵チームの勝利が宣言され、試合は終了した。








「ごめん、私のせいで。肝心な所でとんでもない暴走を……」

「僕も……調子良く勝ててたから、油断しちゃった、かも」

「いやいや! 良かったぜ、先輩たち! かっこよかったよ。マジで!」

「いい試合でしたよ〜」

「歓声の大きさが先輩たちの好試合ぶりを示していると思います」


 そうですよ。

 即負けしてもおかしくない実力差があったのに、よく食らいついたじゃないですか。


 なんて言わないけど。

 でもこんな魔法の使い方で実力差を埋めるなら面白いかな、って教えてもらった。

 心からの拍手を送りたい。


「ほら、応援してくれた観客に応えましょうよ」


 私が言うと、先輩たちは胸を張って立ち上がり、敵チームと互いを称えるように握手を交わした。


 両チームに今までで一番大きな拍手と歓声が降り注いだ。



 ……あれ?

 そう言えば実況と解説はどうしたの?

 確か一回戦では別試合会場で姿を見た気がするんだけど……



「皆さん」


 あ、オシティ先輩。


「ありがとうございました。皆さんのサポートで、準優勝なんて達成しちゃいました」

「本当に素晴らしい思い出になったよ。感謝する」

「訓練は辛かった、かもしれないけどね」

「そこは同意するよ。でもあの訓練を経験したことが闘技会で活かせた。それを思うと、私たち頑張ったんだなって、凄く嬉しくなるよね」


 言いたいことはあったが、満足気な先輩方に水を差すのも忍びなく……

 私はミコルルたちに合わせて先輩方を称えた。




 表彰式で準優勝を告げられる先輩たちを見て、先輩たち以上に喜んだのはジャンネだった。


「や、やったぜぇぇぇ!!」


 なんと言っても座学枠でも加点されるのだ。

 準優勝なのだからその加点も相当なものだろう。

 涙を流して手を組んだり地面を転げ回ったりするジャンネ。

 恥ずかしいのでやめてほしい。


 今から運営に言ってこよっかな、「加点なんていりませんよ。座学枠の加点っておかしくないですか?」って。

 多分ジャンネに首絞められるだろうな。

 やめとこ。








 最大の行事が終わってやって来たのは卒業式だ。

 初めてお目にかかる角帽と制服の、学士服のような装いをした先輩方が、誇らしげに胸を張っている。

 私たち下級生が見ている中、一人ずつ登壇し、校長から言葉を賜る。


 その様子は前世を思い出し感傷に浸ってしまいそうだ。



 送辞を述べる下級生代表はなんとミコルル。

 成績がトップクラスと言うことも選ばれた要因の一つだが、最大の要因はプロレスファンの熱烈な要望だとか。

 ミコルルには悪いけど、私じゃなくて良かった。

 勉強頑張ってくれてありがとうミコルルさん。


 頼むからみんな、早くプロレスのこと忘れてくれ!




 体育館での格式ばった行事が終わり、下級生で作った花道を通る先輩方を拍手で見送ると、後はそれぞれの交流タイムだ。

 オシティ先輩たち懇意にしていた先輩たちと別れの挨拶を交わす。


「あなたの人生に良き出会いが多からんことを祈ります」


 おお、これはこれは気の利いた祝福を授けていただいて、ありがとうございます。


 ……これ、呪印じゃないですよね?

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