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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
54/138

第二十三話 出てってよ

 コンコン


 おや、この控えめな気配はタクララちゃんか。

 何事だろうか。


 今までハウスキーパーのタクララちゃんに、部屋をノックなどされた記憶が無いので疑問に思いつつ扉を開けた。


「お休み中すいません、ミサお姉様。こちらの方がミサお姉様をお訪ねしたいとおっしゃっておりまして」


 タクララちゃんの背後霊のように立っていたのは、オシティ先輩だった。

 三年五組の。


 控えめなタクララちゃんに気配を消されるとか、どんだけ希薄な気配してるんですか。



「あの、ミサお姉様?」


 私はタクララちゃんの髪をかき上げ、額やうなじ、その他体をチェックした。

 変な呪印が付けられていないかの確認である。


「くすくす、おかしな人ですね」


 先輩に言われたくありませんよ。

 授業中に突然ぶっ倒れたのはまだ四日前のことですからね。



 ――良し、呪印無し。


 して、わざわざ二年生寮にご足労いただくとは、一体何用でしょうか。


「そう、ミサさんに是非ご協力いただきたいことがあるのです」

「げ」


 つい心の声を外に出してしまった。


「まだ内容を言ってないのですが」


 小首を傾げる仕草だけで見ると、深窓の令嬢としか言いようがない。

 でもその儚げな立ち姿が映す影は……妖しく揺らめいている。


 比喩表現ではない。

 本当に影が朧に揺れている。


 どうなってんですかそれ。


「ちょっと魔法の研究に付き合っていただきたいだけなのです」


 いや大体分かってましたよ。

 何がちょっとなんですか。

 大方同じクラスの人たちに断られて、仕方なしにここに来たんでしょ。


「クラスメイトには断られて、ティティ先生には『実験はやるな』って言われて、困ってるんです」


 青鬼先生はティティって名前なんですね。

 予想外の可愛い名前じゃないですか。


 て言うかほらね、断られてた。


 先生に禁止令出されてるって、より悪いじゃないですか。

 私も先生に禁止令出されてることあるんで、同情はしますけど殺人事件が起きてからじゃ遅いんですから。

 勘弁してくださいよ。



「大丈夫です。事故が起きないためにここに来たのですから」


 私の思考を読んだかのように、先輩はそう言って微笑んだ。


「ミサさんって、凄い体力なんですって? 巨人族のタックルを受け止めたとか、魔力変換しても息切れ一つしなかったとか、そればかりか結界を強引に突破したとか」


 な、なぜそれを……

 情報源はどこ、いや、誰だ。

 これらの場面に共通して存在していたのはモルガノ先生か?


 個人情報の流出だ!

 よりによって何て人に流してくれちゃったんだ!


「あ、安心してください。ただの呪いの力ですから」


 余計こえーわ!

 呪いって何なの!?

 モルガノ先生に呪いでもかけて無理矢理記憶でも抜き取ったの?

 それとも操り人形にでもしたの?


 私の怪訝なものに向ける眼差しを受けても、先輩は変わらず微笑んでいる。

 サイコパスの疑いが出てきたぞ。


「私も立ちくらみを起こしたんですけど」


 私だって平気とは限らないとアピール。

 これで引いてくれるか?


「だからこそです」


 言葉が噛み合ってない!


 いや、半ば無駄な抵抗じゃないかって思っていたけれども。

 なにがだからこそなのか。

 立ちくらみを起こしたことが条件なら、気絶した先輩でもいいでしょうに。


「私の体力は53です」


 そんな宇宙の支配者を目指す人の戦闘力みたいに言われても。

 基準値が分からないんだから、絶望していいのか鼻で笑っていいのか分からないじゃないですか。


「これは三年生の中でも真ん中ぐらいのスコアです」


 微妙だ!

 良からず悪からず。

 だからどうした?


「その私が気絶して、その後回復しきるまでに一日を要したのです。それなのにミサさん、あなたは少し立ちくらみを起こしたのみで平然としてらっしゃいました」


 してません!

 瀕死でした!

 不死鳥の尾を使ってもらったみたいにHP一桁復活でした!


「何かしら嘘吐こうと考えてません?」


 ドキッ。


 くそぉ、確かにミコルルみたいなひ弱キャラだったら即死だよ、とか考えられるぐらいには余裕がありましたよ……



「あの、ミサお姉様が嫌がってらっしゃることを無理強いするのはやめてほしいです……」


 タクララちゃんが私と先輩の間に割って入り、上目遣いで先輩を睨んだ。


 天使か!


 よし、勇気をもらったぞ。

 きっぱりと断るんだ。

 「悪いことはしたくありません」って。


「ごめんなさい、勘違いさせてしまいましたわね」


 む?

 先輩が前屈みになってタクララちゃんに目線を合わせている。


「私が今ミサさんにご提案していることは、学院の研究史に残るような取り組みなのです。成功した暁には論文にミサお姉様の名前も、共同研究者として筆者と同列に掲載することをお約束しますわ」

「学院……残る……ミサお姉様」


 変な暗示かけられたみたいにタクララちゃんの目がトロンとなってる!

 妖しすぎる美人だからあんな間近で何かしら囁かれたら、そりゃクラクラきちゃうよ。



 結局タクララちゃんからも子犬のような目で見つめられた私は、為す術なくオシティ先輩に腕を絡め取られ連行されるのだった。


 いや! 外はまずいでしょ!

 中に入ってください!


 私は外に出ようとする先輩を部屋に引き込んだ。


 変な実験やってるって周囲にバレたら、職員室に呼び出し受けますよ。


 タクララちゃんも一緒に連れて来てしまったがいいだろう。

 しっかり口封じをしておかねばならんからな。




「ミサお姉様のお部屋……」


 蹲って何か呟いているタクララちゃん。

 ベッドのシーツの端持って何してるの?


「な、何でもありません」


「へえ」


 オシティ先輩がニヤニヤしながら、タクララちゃんの背後からスルリと手を回した。


「そういうことですか。うふふ」

「や、やめてください」


 タクララちゃんの顔に艶かしく息を吹きかける先輩。

 百合百合しいぞ!



 ハァハァ



 はっ!?

 扉の方から妙な気配が……


 気のせいか。

 とりあえず二人にお茶でも出そう。


「わ、私が淹れましょうか?」


 いえいえ、お客様ですからタクララちゃんは座ってて。

 これでもお茶に関しては淹れ続けてウン十年なんだから。



 お気に入りの茶葉を手が覚えてる適温のお湯に浸し、温めた器に注ぐ。


「おいしい……」

「あら、お上手なんですね。実家に帰った時以来ですわ。こんなにおいしいお茶をいただいたのは」


 タクララちゃんは、ほう、と溜息を吐いて、先輩は頬に手を当てて感嘆し、褒めてくれた。


 ありがとうございます。

 このままお茶会で終わりませんか?


「ではおいしいお茶でやる気も出ましたし、早速始めましょうか?」


 なんかしら口実をつけたいだけですよね?


 そう言えば私と先輩で体感負荷が異なったと言うことは、アレは割合ダメージではなくて一定ダメージだったんですかね?


「その辺りも明らかにしたいのですが、残念ながら被験者が集められないのが現状でして」


 物欲しそうにタクララちゃんを見ないでください。

 一定ダメージだと本当に死人が出ますよ。


「はい」

「あっ!」


 また呪印を付けられた。


 これって自分で消せないんですか?


「さあ。消されたことが無いので分かりませんが」


 そっちを研究してくださいよ!


「いや、自分で優位を打ち消すような研究をするのもどうかと思いますが」


 ふぬぬ、それもそうか。

 格ゲーでも最初は“めくり”攻撃をガードできなかったものだが、対処方法が判明すれば慣れた人たちにとっては、普通の飛び込み攻撃と変わらぬものとなったからな。


 でも優位を失いたくないって、暗殺者とかそんな将来を目指してます?


「そんなわけないでしょう。学年末の闘技会、私みたいな特異属性持ちは強いカードになり得ますから。個人戦で勝ち抜く実力は無くてもチーム戦ではいい仕事を期待されてるんです」


 デバフ要員ですか?

 呪い属性って何ができるんですか?

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