表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
48/138

第十七話 合同授業(後編)

 先生同士の不毛な争いの決着は、生徒同士の模擬戦に持ち越された。


 いや、私としては先程の先生二人の魔法実演は、クイラ先生の圧勝で良いと思うのだが。

 当事者たる先生たちのほか、生徒の大半は互角だと判定したらしい。



 模擬戦は四対四のパーティー戦。

 公平を期すためモルガノ先生はクイラ先生の組の生徒を、クイラ先生はモルガノ先生の組の生徒を指名して臨時パーティーを組ませる。

 男女半々になるようにだ。


 モルガノ先生が指名したのは……

 面倒だから敵の一番二番三番四番でいいや。


 一方クイラ先生が指名したのは……

 未だに名前の分からない男子二名、パリピの一番二番にしておこう。


 女子の内一名は、ユリキャットちゃん。


 ……私にハァハァしてくる子だ……

 猫人の、三つ編みお下げの。


 今は指名されて「え? え? 私?」って驚いている。


 女子のもう一名は、なんとアラシュ。

 こちらもクイラ先生に指名された瞬間、ビクッとして不満顔してた。



「え〜、当てられちゃったよ〜。やだなぁ」

「何言ってんだ、羨ましいぜ。アタシなんて『当てろ当てろ』って、あんだけ念を送ったのに外れたんだぜ」



 両先生のチョイスに共通しているのは、まず自分からガツガツ出て行くようなタイプの子ではないこと。

 それと、こう言ってはなんだが、強そうに見えないこと。

 燃えすぎなジャンネや、体格的な面で目立つジャガノス君は、候補から最も遠い生徒だったことだろう。



「あら、応援しますからね、アラシュ」

「ファイト」

「全員ぶっ飛ばして来いよな!」

「棄権って選択肢は無いのかなぁ」


 アラシュの力は大体知ってるからいいんだけど、他の人の戦いっぷりを観察したいんだから真面目にやってほしい。

 ほら、行った行った。




 ルールの解説が先生からなされる。


 勝利条件は二つ。

 相手パーティー全員を脱落させるか、相手陣地に立った旗を奪うか。


 今回は安全性に配意して、ヘルメットと小手、肩、胴、脛を守る防具を身に着け、そこに有効打をもらうと脱落。

 対戦格闘と言うよりはスポーツ寄りの競技のようだが、今日は初めてのパーティーバトルだから、慣らしの意味が大きいらしい。








 ようやく競技が開始される。

 四組と五組の選抜メンバーは、それぞれ一列に並んで向き合って礼。


 東西の陣地に分かれて、奥に立った旗を守る陣形を作る。

 どちらも旗を守る一人を残し、三人を前方に配している。


 これが初期陣形なのだろうか。

 やはり皇帝を変えフォーメーションを研究している兵士に話しかけないと、新たな陣形は覚えられないのかもしれない。

 インペリアルアローとか。




 あれこれ考えている内に両先生が東西の中央に立った。


「準備はいいですね。それでは、試合開始っ!」


 ラウンドワン、ファイッ!


 我が五組の旗守りはアラシュ。

 頑張れ〜って感じでニコニコ前衛を見ているけど、向こうの旗守り、敵の四番は遠くから魔法を撃って味方を援護してるぞ。

 君も見習いたまえよ。



 敵の一番二番は風属性が得意で、敵の三番は火属性が得意っぽい。

 左右に走りながら風弾と火弾を撃ってくる。


 我が五組の前衛も敵と並行に走りながら魔法弾を撃ち応戦。


 どちらもまだ様子見と言ったところだ。



 両先生は戦闘の状況に合わせて縦横に走り回っている。

 サッカーの審判みたいだ。



「えいやー」


 お、やっとアラシュの援護か。

 敵の旗守りに魔法弾発射。

 敵の旗守りは不意を突かれたようで慌てて身を躱す。

 そしてアラシュと敵の旗守りは睨み合いに入った。


 これで我がクラスの前衛もハンデ無し三対三が実現できる。



「パリピ弱いぞ! パリピ狙えパリピ!」


 岡目八目とはよく言ったものだ。

 敵クラスの皆様は我がクラスの弱点を的確に見抜いてらっしゃる。


 足手まといパリピ二名を必死でフォローするのは、女子の前衛ユリキャットちゃん。

 猫人だけあって中々機敏な動きを見せてくれる。

 敵の魔法弾をスレスレで躱し、パリピに当たりそうな魔法弾を自分の魔法で相殺してあげている。


 見学人もユリキャットちゃんへの応援が大半だ。


「ユリキャットさん頑張れー!」

「アラシュ仕事しろー!」


 応援は私の、ヤジはジャンネの言葉である。


「ミ、ミサお姉様!」


 あっ!?

 ユリキャットちゃんが急に体勢を崩した。


「危な〜い」


 アラシュナイスフォロー。

 バランスを崩したユリキャットちゃんに向きそうな敵の意識を、魔法を撃って上手に逸らした。


「ハァハァ」


 ユリキャットちゃんは体勢を立て直した。


 そのハァハァはいつものハァハァと違うハァハァだよね?

 頑張ってるハァハァだよね?

 あ、でもそうしたらいつものハァハァを頑張るハァハァと違うハァハァだと認めることになる。


 自分で言っててワケが分からなくなってきた。

 考えるのやめよう。




 動かない敵の旗守りとアラシュは置いといて、走りながら魔法合戦してる六人は次第に息が上がってきている模様。


 て言うかいつまでやってんだか。

 決定打にならないって分かってるんだから、早く次の作戦に移行すればいいのに。


「つまんねーぞ!」

「ダラダラやってんじゃねえ!」

「お見合いか!」


 打ち合わないボクシングのようなヤジが飛ぶ。


 パリピの一番二番とユリキャットちゃんは、ヤジに反応して動揺している。


 敵は平然としているが、敵は何か作戦があるのかもしれない。



 そんなことを思っていたら、両者の動きに違いが見られるようになってきた。


 敵はまだシャキシャキ動いているのに、こちらは体が重そう。

 体力不足は明白だ。



 ああっ、敵の一番二番がパリピの一番に突進。

 パリピの二番とユリキャットちゃんが、魔法弾を大きく避けた隙を上手く突いた形だ。


「一本!」


 あっと言う間にパリピの一番脱落。


 弱っ!



 そして三対二の状況を覆せる技術も体力も無い二人は、それからあっさり敵に一本取られて脱落した。



「ちょっと〜、四対一は無理だよ〜」


 残されたアラシュは泣き言を吐きながら敵の攻撃を凌いでいたが、最後は旗を取られて試合終了。


 終わってみれば四組に完封負けを喫したのであった。








「よくやったぞ貴様ら! 私は鼻が高い!」

「ありがたき幸せっ!」


 四組はまたクイラ先生が生徒たちを整列させている。


 その生徒たち、さっきは敬礼していたのに今回は正座して頭を下げている。

 武家社会なのか西洋軍隊式なのかはっきりしてほしいものだ。


「隣のクラスのヘナチョコ相手に完封だ、完封! ワハハ!」


 ちびっ子先生の、とても先生の言葉とは思えぬ暴言である。




 モルガノ先生は聞こえぬフリをして私たちを集めて反省会を開いた。


「え〜、今回残念ながら負けましたが、問題点はどこか、皆さんどう思いましたか?」

「男子に決まってるぜ!」

「そうよそうよ! 何よあの弱さ! チャラ男なだけで超情け無かったわ!」

「ダサすぎー」


 パリピの一番二番ほか、男子一同は正座して項垂れている。



「はい、分かりました」


 モルガノ先生が手を叩き、パリピバッシングがエスカレートしようとするのを押さえた。



「良かった点もあります。ユリキャットさんもアラシュさんも、良い動きを見せてくれました」


 褒められた二人は照れ照れだ。


「でも」


 モルガノ先生のお話は終わってない。


「ユリキャットさんは男子二人を気にするあまり、必要以上に細かく切り返し、結果体力不足に陥りました」

「はい……」


「アラシュさんは、相手の旗守りを牽制した上で、味方の援護射撃をする余裕があったように見受けられました。それをしなかったのは、さて何故でしょうね」


 怠慢ですよね?


 図星のようでアラシュの目も泳いでいる。

 おっと、まだ追撃があるようだ。


「それと判断ミスもあったと思います。こちらが一人欠けた時点で、思い切って飛び出すべきではなかったか、と言うことです。相手の実力とこちらの疲労度を考えれば、数の不利を覆しようが無いことは明らかだったのではないでしょうか」


 敵ドリブラーと一対一になったゴールキーパーが、飛び出すか構えるかと言う選択肢かな。


 先生の指摘は正しく、敵には完敗し、我が五組はしょんぼり意気消沈であった。


 私もこれと言った見所が無くがっかりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ