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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第十六話 合同授業(前編)

「あらお嬢ちゃん、ダメじゃない勝手に入って来ちゃあ。ママはどこ?」

「貴様……覚悟はできてるんだろうな?」


 女の子がモルガノ先生に絡まれてる。


 間違えた。


 モルガノ先生がクイラ先生に絡んでる。



 クイラ先生はいつもの姿。

 眼鏡をかけ、ランドセルみたいなバックパックを背負っている。

 ダークブルーのショートヘアが、頭頂部の左右で跳ねた癖っ毛もいつもどおり、猫耳のように見える。

 お陰で着ている白衣が全く大人っぽさを感じさせない、合法ロリ仕様。


 でもその指導する四組の生徒は直立不動で整列しており、噂に違わぬ厳しさ、統率力の高さを窺わせる。


「覚悟? ああ、教員としても同級生を叩きのめさなくてはならない、その悲壮な決意ならとっくに」

「メスコウモリが……! 本来なら私自ら叩きのめしてやりたいところだが、今日は私の生徒たちが、お前の生徒をコテンパンにしてやる!」



 雌コウモリってなんだよ。

 イヤラシイものなのか何なのか、分かりづらいから何て反応すればいいか困るわ。


 て言うか生徒の前でケンカしないでください。



「分かったな貴様ら! 隣の組の、ユルい生活を送る奴らに鉄槌を! 日頃の成果を存分に見せつけてやれ!」

「イエスッ! マイマスター!」


 四組の生徒がビシッと敬礼した。


 ……これはもしや病気継続中なんじゃないだろうか。








 さて、気を取り直して合同授業スタートだ。


 先生二人が適当に生徒を指名して質問をする。

 授業の進捗具合に著しい差が無いかの調査だ。


 当てる生徒は無作為のつもりでしょうが、悪意が透けて見えてますよ先生方。


 クイラ先生はジャンネとかジャガノス君とか、明らかに脳筋タイプの子を狙い撃ちしてますよね?


 モルガノ先生も同様だ。

 四組の誰を指名しようか目を光らせ、目を伏せ、或いは逸らせている子を指名している。




 周りの囁き戦術もあり、質問タイムは無事終わった。


「ちっ」

「ちっ」


 だから生徒の前で舌打ちとかやめてください。


 ジャンネとか指名された子たちは、冷や汗を垂らしながら脱力している。

 お気の毒さまだ。




 次は先生による魔法実演。


 モルガノ先生の魔法は既に知っているが、水属性のスペシャリストと言うクイラ先生の魔法は初めてだから楽しみだ。


 クイラ先生の魔法発動。

 下半身が半透明な水色の球体に包まれた。

 彼女の脚は魚のようにその見た目を変えている。

 クイラ先生は人魚族であったのだ。


 そして先生が「行け」と号令をかけ前を指差すと、球体は少し潰れたように形を変え這いずるように前進を始めた。


 前進、後退、横移動、ジャンプ、最後に先生が頭を下げると球体は横に広がりペシャンコになった。


 おお〜

 パチパチパチパチ


 自由自在なその動きに生徒たちから拍手が送られる。


「フン」


 それがどうしたと言わんばかりに、モルガノ先生が鼻で笑った。


「フン」


 クイラ先生が鼻で笑い返す。

 そして四組の生徒数名に何やら指示を出した。




 やがて男子生徒が四人がかりで運んで来たのは、どこにあったのか大きな丸太。

 私が腕を回して、ギリギリ両手の指先が触れるかどうかの太い幹周り。


「ごくろう」


 クイラ先生は鷹揚に頷き丸太を受け取り、モルガノ先生に不敵な笑みを向けた。

 と、次の瞬間、クイラ先生の下半身を覆っていた球体からニュッと二つの腕が生えた。

 ジャガノス君の腕に匹敵する太い腕だ。


 ガオンガオン


 空間を抉り取るような豪快なスイング音を立て放たれたのは、左フックと右アッパー。


 クラスメイトたちはポカンと口を開け、打ち上げられた丸太を見上げた。


 五組の生徒たちはこちらの顔を見てニヤニヤしている。


 クイラ先生は丸太に向かい、捻りを加え跳び上がった。


 水色の太い腕が丸太を抱えると、脚がもう二本生えてきた。

 脚も絡めた完璧なホールドが丸太を締め上げる。

 そしてクイラ先生は半回転しながら丸太を地面に叩きつけ、太く逞しかった丸太を文字通り木っ端微塵にしてのけた。




 モルガノ先生の歯軋りが聞こえる。



 そして私は、ああ、この感動を抑える術を持たなかった。


「ブ、ブラボーッ!!」


 自然と出たスタンディングオベーション。

 意外な所で以外な人がやってくれたものだ。


 あなたが投げキャラだったか。

 固い防御を誇る対戦相手をものともせず、ちょっと遠いかな、って間合いからでも相手を掴むパワーファイターの代名詞的存在。


 彼らの投げ間合いの広さを表す、“吸い込む”と言う言葉は、時に私を苦しませ、時に対戦相手を悔しがらせたものだ。



「何であなたが誉めてるんですかっ!? 四組の人の技ですよ!」


 何を怒ってらっしゃるんですかモルガノ先生。

 素晴らしい格ゲーキャラに称賛の拍手を送るのに、何の隔意が必要でしょうや。


「おお、見ろモルガノ。お前んとこの生徒も涙を流して感動しているではないか! はっはっは! いい気分だ!」

「あの子は特別おかしいのよ! 分かるでしょ!」


 失礼ですよ!

 自分の生徒に何てこと言うんですか!


 さすがにモルガノ先生も自分の暴言をまずいと思ったか、私から視線を外して口笛吹いてる。


「ん? ああ、そいつが例の中途入学者か。なんだ、先輩と揃って『あの姉妹がどうのこうの』言うからどんな問題児かと思えば………………凄くいい奴じゃないか。はっはっは! モルガノも先輩も随分懐が浅いと見える!」



 ピューピュー

 もっと言ってやってください!



 キッ!


 あっと、モルガノ先生がこちらを睨んで来た。

 今度は私がそっぽを向いて口笛を吹くことになった。








 散らばった木片を片付ける、四組生徒によるお掃除タイムでしばし休憩。

 私は興奮冷めやらずミコルルたちに話しかけた。


「凄かったね! 感動した!」

「珍しいですね、ミサがそんなに舞い上がるなんて」

「確かに豪快な技だったけどね〜」

「あんなちっこいのにな。水属性つって変わった使い方するもんだ」


 そうだ、あれは魔法なんだよな。

 でもああいう使い方はいいんじゃないかな。

 あれを破られる、即ち敗北って一目で分かるし。


 魔法が発動して画面が光ったと思ったら次の瞬間決着しているとか、そんな味気ないことにならなければいいじゃない。

 格ゲーに魔法をどこまで認めるかーー例えばエネルギー弾連発とか極太ビーム系はOKなのか、とかは要検討だけど。


 とにかくクイラ先生からはこれから目が離せないな!

 いずれ幻のレバー三回転投げを実現してもらわねば。








 休憩が終わり、次はモルガノ先生の魔法実演。

 我がクラスの男子が並んで応援を始める。


「アーイ、アイッ、アイッ、ちゃんモル先生への〜、愛! 応援! ピー!」


 やめたげてよ。


 モルガノ先生が顔赤くしてるじゃないか。


「ピー!」


 クイラ先生が悪ノリしてる。


 モルガノ先生の額に青筋が浮かんだ。


「わっ!?」


 その直後クイラ先生の頭を暗闇が覆って、同じ状態の人が次々と増えていく。


 これって、この前私が使った闇魔法の黒霧と同じじゃん。

 尤もモルガノ先生バージョンの方が個別ピンポイントで無駄無く強力っぽい。

 さすが先生。


 わ!

 私の視界も真っ暗に!?


「キャー!」

「ちゃ、ちゃんモル先生〜!?」


 クラスメイトにもかけている模様。

 ご乱心あそばしたか?


 暗闇にこっそりと小さな穴を開けてモルガノ先生の様子を窺う。



 ボフッボフッ


 何も無い空間にモコモコの暗闇を作り出し、殴っている先生を見た。



 教育が思うままにいかず苛立っているのか、はたまた己の至らなさを嘆いているのか。

 先生の心理はとんと分からなかったが、私はそっと目を閉じ見なかったフリをした。




 一通り混乱が行き渡り、クイラ先生が魔法を打ち消した頃、モルガノ先生は生徒たちの魔法を解除した。


「どうでしたか? 突然の異常状態に陥っても落ち着いて対処できねばなりません。わーきゃー騒ぐのはまだお子様と評価せざるを得ないでしょう」


 モルガノ先生のいやらしい視線がクイラ先生に向けられる。


 今度はクイラ先生が額に青筋を浮かべていた。


 だからケンカはやめなさいって。

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