第十三話 休日の過ごし方(後編)
さて、ジャンネの武器も買ったし、いよいよ魔物狩りだ。
アラシュは魔法で戦う宣言をしている。
得意属性が風の彼女はミニ竜巻を起こしたり、突風を起こしたりできる。
自分の姿を隠し、木の枝や石ころなど風で巻き上げ武器にできる物が多い森のような場所は、彼女の得意ステージであるのだ。
まあ超能力集団最強の一角だからね。
その内、空を飛んで遠距離からタイフーンしまくる強キャラになることだろう。
さて、私はどうしようか。
お供ズはミコルルと一緒に戦うだろうし、後輩は放置しても問題無し。
適当にほっつき歩くか、アラシュとジャンネの戦いぶりでも見学するか。
「ミサがいたらアタシらの狩る分が無くなっちまうだろ」
とはジャンネ。
「え〜。近くにいてもらった方が、いざって時に安心だよ」
とはアラシュ。
二人の意見も分かれてしまっている。
「ミコルルの友達は二年生なのに弱いの?」
最終的には、お供ズのそんな一言で、私はアラシュ、ジャンネとは別行動を取ることに決まった。
私と後輩は単独行動。
ミコルルはお供ズと三人で、アラシュとジャンネは二人で魔物を狩ることになったわけだ。
「んじゃ、どのチームが一番多く倒せるか競争な!」
こういうのが好きなジャンネさん。
目が輝いてる。
よし、たまには本気で森を駆け魔物を狩りまくってみるか。
久しぶりに一人で行動することになった私は、森の奥へと入って行った。
それから何時間を森で過ごしたか。
私は後輩に確認したいことができていた。
「魔物の強さ、どう思った?」
「姉様も気づいたっすか。多分、入学前よりも強くなるエリアが町寄りになってるっすね」
やはりか。
魔物の強さの境界が人里に近づいている。
これはこの辺の大地闘神への祈りが疎かになっていることを示すのだろうか。
それとも元々このように祈りの効果にバラつきが出るものなのか。
前者でないことを願うばかりだ。
って言ってもザコなんだけどね。
祈りが絶えたとしたら、魔物はどこまで強くなるのだろうか。
ふと気にかかったが、それに答えられる人は今身近にいない。
懸念も疑問も置いといて、とりあえず魔物狩り競争の結果発表。
「よっし。せえの、で広げようぜ」
音頭をとるのはもちろんジャンネ。
「せえ、のっ!」
ババーン。
むむ、皆さん頑張ったようで。
ミコルルとお供ズは以前なんて五個ぽっちだったのに、今回はジャラジャラ音がするぐらい出している。
お、ミコルルがドヤ顔してるぞ、控えめな彼女にしては珍しい。
ジャンネは難しい顔をしている。
勝ちか負けか、その表情では窺い知れない。
「やるねー。でも私たちも負けてないでしょー」
どうよ、とアラシュが成果を披露する。
ふむふむ、パッと見は互角。
これはしっかり数えないといけませんな。
「ちょいちょいちょい、姉様のやつはともかく、ボクのやつをスルーしないでほしいっす」
私は後輩の頭に久々のゲンコツを落とした。
「こら、妹いじめたらダメでしょ」
アラシュが、メッて顔をした。
「妹まで強いのかよ。まったく、寺院ってのはとんでもねえトコだな」
魔物撃破数で言うと、強さの境界のことが気になって走り回った分、私も後輩も他の二チームよりは少ない。
だがドロップ品の品質と魔石の大きさは私たちが上。
さて勝負の結果は……
「みんな引き分けでいいんじゃない?」
アラシュちゃん裁きで一件落着しました。
「で、みんな魔物との戦闘はどうだったの?」
やはり気になるのです。
少しはデキルようになっただろうか。
今回の討伐量から見て、期待するところはあるが……
「とても良い調子でした」
「いい感じに動けたぜ! バッサバッサと斬っては捨ててだな!」
「修行の成果だよね。ブイ。でもジャンネが剣をブンブン振り回してちょっと怖かったよ〜」
やった!
修行の成果だなんて、また嬉しいことを言ってくれるじゃないの。
「私たちもやっぱり修行が……」
「でもあれをまた? ちょっと……」
「でもこのままだとミコルルについていけなく……」
お供ズが顔を突き合わせて何か相談している。
この子たちも入学前に、ちょっとだけ修行を体験しているんだよね。
学年が違うから放課後とかの都合は良く分からんけど、後輩がダメなら私を頼ってくるといい。
みっちり修行をつけてあげようじゃないか。
その代わり、格ゲー世界の主要キャラとして、しっかり格ゲーテクを習得するんだよ。
「ふんふんふーん♪」
冒険者ギルドへ向かう中、ジャンネはブンブンと剣を振り回し歩いている。
「もう、危ないってば」
どうやら上手いこと剣を気に入ったらしいが、確かに危ないぞ。
町に入るまでにやめさせなければ、狂人認定待った無し。
おまわりさん、あいつです!
そんな悲しい未来が容易に想像できた。
「ふんふんふーん♪」
やめなさい。
やめて。
やめなよ〜。
聞く耳持たないジャンネ。
「私が預かっちゃうからね!」
聞かん坊は、しまいにはアラシュに剣を取り上げられシュンとした。
冒険者ギルドに到着。
アラシュとジャンネが冒険者登録をしようとすると、途端に先輩面を始める後輩。
お供ズも便乗して後輩なのに先輩面してる。
ややこしい。
やはり後輩はお供ズに悪影響を与えると思う。
ミコルルへの注意喚起必須だ。
換金し終えて、初めてお金を稼いだ実感を得た二人は、初めて給料を受け取った新人家政婦のような笑みを湛えている。
冒険者カードではなく、手持ちのキャッシュカードにチャージしてもらう御令嬢二名。
私もまた貯金額が増えた。
お寺に仕送りとかしよっかな。
でも勝手にやったら「学業に集中せんか」って和尚に叱られそう。
資金が増えたと無邪気に喜ぶ後輩は単純でいいな。
何の資金だよ。
「なあ、武器屋寄ってこーぜー」
すっかり剣が気に入ったジャンネが言う。
数打物ではないオーダーメイドの一本が欲しくなったらしい。
いいぞもっとやれ。
君の使う剣は聖剣だ!
オーラバードォ!
「残念ながら、のんびりしてたら門限がきてしまいます。また今度ですね」
「え〜」
私とジャンネの二つの口から不満は漏れた。
「何でミサが残念がるの?」
「姉様はそういう病気があるんすよ」
私がキッと睨むと、後輩はサッとアラシュの後ろに隠れた。
よしよしするアラシュにゴロニャンする後輩。
私の直感が訴える。
この組み合わせはいかん、早々に離間を図り二人の接触を妨げるべきだと。
……いや、大人げないぞ。
何を考えているのだ。
私は鉄の心で自制をし、そして言う。
「さて、じゃあ門限になる前に急いで帰ろう。走って」
「え? 乗ってかねえの?」
ジャンネがタクシーのように乗用鳥を指差す。
「ははは、まさか」
「な、何がおかしいんだよ」
修行は帰るまでが修行と言う言葉を知らないのかね?
「いいんじゃないですか? 今日これだけ動けたのも日々の修行の成果なのですから」
お、ミコルルからの思いがけない援護射撃。
こうして私たちは仲良く、走って学院に帰るのだった。
もちろん私は後輩を追い立て、アラシュたちをぶっちぎって。
「ちょっと鈍ってんじゃないの?」
「ひい、ふう、そんなことないっすよ! 一年の体格差のせいっす!」
実際に一歳差があるか分からないのに、そんなことを持ち出すとは。
しょうがない。
「太るわよ」
禁じられた言語を持ち出すことにした。
「な、な、何言ってんすか! これからスラッと手脚が伸びてスタイリッシュガールになるこのボクに向かって……!」
「良く食べるくせに。摂取カロリーが消費を上回った時点でデブへの回路は起動するのよ」
良く食べるのは本当だ。
成長期で縦に伸びる分の栄養も必要だから、あまり言わないが。
「姉様のバカァ!」
後輩は泣きながら走り去った。
お寺に戻った時に前より弱くなってはいけないのだ。
釘を刺し終えた私は、まだ戻りそうにないメンバーを一人待つ。
みんな帰ったら食堂のお姉さんたちの所にでも顔出そうかな。




