第十二話 休日の過ごし方(前編)
我らがエディケイン学院には六日に一度の休みがある。
そして明日がその休日であり、我々は食堂で明日のための会議をしているところだ。
「ボクはスイーツ巡りとかいいと思うんすよ」
「そう。行ってらっしゃい」
「冷たいっす!」
ご覧のとおり、私たち四人のパーティーを見つけて同じ席に着いた後輩たちと共に。
マムマムとウルウルはサッと潜り込むようにミコルルの隣に座った。
「お、これが噂のチビ助どもか」
「チビ助じゃない」
「きゃ、かわい〜」
お姉様方に撫でられ突かれ、お供ズは困り顔を見せる。
かわい〜って、一歳しか違わないんだけどね。
カワイイと言う単語に反応して、後輩がアラシュへとすり寄って行った。
「きゃ、この子も可愛いな。ミサの妹なんだよね?」
「えへへ、キャミィっす。もっと撫でていいっすよ」
「うりうり」
調子に乗るといけないから構い過ぎ禁止です。
「で、どうするよ明日?」
「服でも見に行くってのはどうすか」
だからそっちは一年生同士で行けばいいでしょうに。
と思ってたらミコルルが微苦笑して言った。
「すいません。この子たちが私と一緒がいいって聞かなくて」
母ちゃんか。
お供ズよ、同級生との交流の機会はいいのかね?
「女子はみんな予習復習で籠るらしいっす。男子は……」
後輩が表情を曇らせる。
どうした元男子?
「キャミィは男子からの誘いに困ってる」
「あれは下心丸出し。キャミィじゃなくても嫌になる」
どうやら後輩は、胸や太ももに注がれる男子の視線に辟易しているそうだ。
前世ではあれほど注目されたがっていたのに。
性転換を伴う転生を果たしたことで、心境も変化したのか。
胸と太ももって、胸はペチャパイじゃん。
太ももだって見られたくなければ短いスカートやめればいい。
見せる格好をしてるんだから、視線を集めるのは仕方ないことだと思うのだが。
まあ劣情を悪い方に発展させる男には、気をつけなければいけないけどね。
そして、全て解決するのが修行だという考えに至る。
「ところで闘神像ってこの辺に無い?」
「さあ?」
「考えたことないなぁ」
なんてこった!
さては祈りを捧げたことも無いな! 此奴らめ。
頼みの綱のミコルルは……
「私も、気にしたことありません」
なんだよもう。
しょうがない、先生に聞きに行こう。
「ここからはちょっと距離がありますね。日帰りは無理ですよ」
分かってたけどやはりそうだった。
「でも、前期が終わった後行う遠征実習の現場近くにありますよ」
ほう! そうですか。
ではそれまで我慢しましょう。
ありがとうございましたモルガノ先生。
「で、どうするよ明日」
「え〜、お姉様たちショッピングとかしないんすかぁ?」
「アタシのガラじゃねえなぁ」
「私も、今欲しい物は特に無いかな」
やーい、却下されてやんの。
……人差し指を口に当てるな。
小首を傾げるな。
後輩のあざとさが、お供ズの教育にも悪影響を与えるのではと言う懸念が生まれる。
「魔物でも狩りに行きましょうか」
ミコルルって魔物狩り好きだよね?
何か恨みでもあるの?
「生活の一部でしたから。やってないと落ち着かなくて」
そういうの中毒って言うんじゃない?
まあ私はいいけど。
お金稼ぎにもなるし。
「一年の時はやってなかったよね? そんなこと」
「機会は作りたいと思ってましたよ。でも一人では危険ですし、あなたたちを巻き込むのもどうかと思いまして」
「お? アタシらが弱いみたいな言い方じゃねえか、ミコルル〜」
「いえ、魔法を使えばいいかもしれませんが、ジャンネの魔法を森なんかで使ったら、火事になってしまうじゃないですか」
そうだね。
素手で魔物と戦えるほど彼女たちは強くないし。
「え〜、じゃあどうすんだよ。アタシだけ置いてきぼりか?」
「あ、じゃあ買いに行こうよ」
「何を?」
「武器だよ」
武器。
そう言えばミコルルも短刀持ってたんだ。
「ショッピングっすね! やったっすー!」
結局後輩の望むようになってしまったわけか。
しかし許す。
ジャンネは侍魂っぽいキャラではないが、武器を持っても良いのだ。
ついでに輝く鎧を着ても良い。
フラッシュソー!
てことで明日の予定はウェポンショッピングに決まり。
翌日、外出簿に名前をそれぞれ記入して校外へ。
こうして何人かと連れ立って、校則と言う頸木を脱し外に出るのは妙にウキウキする。
七人パーティーゆえ、本来なら馬車が必要なところである。
だが、裏切り小僧たちにしてやられた青年の心を癒すアイテムは、どこにあるか分からないので馬と馬車は手に入れようがない。
それにしても、今思えば、かの白馬さんは凄い馬だな。
砂漠を渡り、氷の洞窟を探索し、毒ガスの出る鉱山に潜り、果ては魔界まで行く。
彼女なら走れなくなっても馬刺しになることは、おそらくあるまい。
さあて、武器屋武器屋。
武器屋行ったら、太った商人が日給百ゴールド位で店番やってないかな。
たまに魔法の撃てる剣を売りに来る人がいて、日当が爆上げしたりする日雇い労働。
「楽しそうですね」
ひう!?
突然妄想から現実に引き戻されて驚いた。
「まあな! 何にしよっかなー。鎖鎌か、スリングショットか……弓矢もいいよな!」
違うでしょ!
なんで遠距離タイプの武器ばかりなの?
あぁ、でもジャンネが剣を選んでくれるとは限らないんだ。
どうしよう。
無理強いもできないし。
「楽しみっすね〜。やっぱ魔法使いとしては、最初はヒノキの棒すかね? 僧侶なら棍棒とか銅の剣もアリっすけど」
竹ざお、布の服、革の盾とかどう?
ちょうど百二十ゴールドですよ。
私は素手に裸で、銅の剣まで貯める派だったけどね。
魔法使い辺りが雑魚になるあの瞬間がいいんだよ。
後輩は世代が違うから分からんかな。
はっ、よそごと考えてたら武器屋の前まで来てしまっていたぞ!
良策思い浮かんでないのに〜。
「おお! ファンタジーっすねぇ」
「ファンタジー?」
「武器屋らしい店内だと思うけど?」
マムマムとウルウルが首を傾げている。
そう言えば後輩は武器屋初めてだったか。
お寺にいた頃の買い出しの時は、いつも服とか飾り物の店に行ってたから。
私も覗いたことがある程度だったけど、まあその時と大差無いかな。
数打物が傘立てみたいなやつに突っ込んであり、カウンターの奥には目玉商品と思われる武器が飾られている。
でももっと、剣の他、鎌も槍もハンマーや斧もあるのかなと思っていたけど随分数が少ないな。
「このお店、量産品以外は注文制ですよ」
そうなんだ。
本格派って感じ?
「え〜、じゃあどうすんだよ。今日武器無しじゃ、魔物狩りはお預けか?」
「お試しで適当な武器買ってもいいんじゃない?」
ちょっとそれは……
素人が剣とか扱えるのだろうか。
え? 一年時の授業で剣技もあった?
それならまあ。
そしてジャンネは数打物の中から手に馴染む一本を取り、悩むことも無くそれを購入した。
数打ちと言っても決して安くないんだけどな。
こういう時に彼女たちが御令嬢であることを思い知る。
彼女が選んだのは直刃の長剣。
蛇腹剣などは元からすぐ手に入ると思ってないから、まあまあグッジョブ。
「炎を纏った剣とかできるっすかね?」
「そんなことしたらすぐ剣がダメになるぞ」
厳つい顔の店主が教えてくれた。
魔法に耐えられるような素材で作った武器と言うのがあるらしい。
ミスリルとか魔鉄とか、そう言うのですね。
分かります。
当然そんな武器はお値段それなり。
ゼロの数が二つ三つ余裕で違ってくる。
お高いんですのね。
店主に聞いてみる。
蛇腹のように伸縮する剣は作れますか、と。
どうやって?
と返された。
すいません分かりません。
しょうがない。
ゆくゆくは魔法で再現してもらうとするか。
「よし、これで魔物狩り行けるな」
そうだね。




