第十一話 超必を受け止めろ!
保健室の常連になりつつある私たち四人。
プリン先生はいつ見てもお美しい。
そんなお世辞もオホホ、と受け流され、今日もジャンネは背中をバシンと叩かれた。
幼稚園児みたいにしょっちゅうケガをするんだから。
「まったくあなたたちは。いつもいつもケガをするけど、あまり危ないことはしてないでしょうね?」
全然ですよ。
ジャンネがランニングコースをショートカットしようとして崖を飛び越えられず転落したり、ジャンネがよそ見して目の前の枝に顔をぶつけたり、そんな程度ですから。
後はまだまだ受身の下手なミコルルとアラシュが、打ち身とか軽い捻挫とかするぐらい。
私もプリン先生の回復魔法を間近で見られるので、保健室はいつでも通いたいとは思っているが。
「ところでキュアプリン先生は液属性を使われないのですか?」
スライメン先輩と同じ種族だから使えるかもしれない。
「オホホとんでもない。そんな属性持ってたら、私はこんな所で保健室の先生なんてやってられないわ」
希少中の希少属性だから、そんな属性あったら特殊機関やら何やらに目をつけられ、とても自由な生活などできないだろうと言う。
特殊機関って何ぞ……
まあスライム族がみんな液属性持ってたら、スライム無双だ。
この世はスライムに支配されてしまう。
一般的なスライム族は水と光に適性があるそうです。
それにしてもプルプルですね。
思わずつつきたくなるプリン肌。
若い頃はさぞ多くの学生を魅惑したことでしょう。
ヒュウガ先生とか。
種族違うからイマイチかな?
プリンプリンな回復魔法を見ていると、回復魔法はやはり光か水でやった方がいいかな、と思える。
どの属性でも回復魔法はあるけれど、色んなゲームでも回復と言えば水や光だもんね。
「しゃあっ! 完全回復だぜ! さあ、一ラウンドやろうぜ!」
「オホホ、元気ねえ」
ジャンネにはタンコブでも作らせて、プリン先生の回復魔法また見せてもらおうかな。
バシバシバシバシバシバシバシバシ
うん、かなり目が慣れて来たし、捌く動きも様になってきた。
そろそろ間合いを少し詰めようかな。
増えた死角にどこまで対応できるか。
そうそう、捌いて捌いて。
予想と認知と行動、動作が体に染みつくまで繰り返すのだ。
いい感じに格ゲー技術を身につけていく友人三人に、思わず私も目を細めてしまう。
お礼だと言って三人は、それぞれ得意の水、火、風の属性魔法を叩き込んでくれる。
文字通り叩き込んでくれる。
キャッキャウフフな戯れを邪魔してはいけないと思うのか、他のクラスメイトは遠巻きに見るだけだ。
見ると言うか、見たと思ったらすぐ目を逸らすような感じだけど。
そんな、視線まで邪魔になるとか言わないから存分に見てくれていいのに。
そしてボロボロになった私もプリン先生のお世話になる。
すいません、今日もよろしくお願いします。
今日の魔法実技は巨人族のジャガノス君がお手本……
と言うか、彼は強化と言う特殊属性なので、こんな魔法もあるんだよ、と言う紹介だ。
「ガッチョ*#¥♪€%$!」
腕を上げ力瘤を作って、意味不明な雄叫びを発したジャガノス君の体が赤く光る。
彼のパーティーである、グールのゾンビッシュ君たち、ジャガノス君のパーティー四人がスクラムを組んだ。
ジャガノス君が突進。
敢えなくスクラムは崩壊、四人は見事に撥ね飛ばされた。
「はーい、ジャガノス君ありがとうございます。……ジャガノス君? 解除してくださいよー」
「ガッチョ*#¥♪€%$!」
「ちょっと、なに重ねがけしちゃってるんですか!?」
「ぼ、暴走です、先生……ぐふっ」
「ゾンビッシュー!!」
返事が無い、ただの屍のようだ。
ゾンビッシュ君が息絶えた。
「何?」
間違えた。
うなだれてただけだ。
紛らわしいマネしないでほしい。
ただでさえ顔色悪くて死人っぽいのに。
それより暴走とは?
「狂化してます! 皆さん逃げて!」
狂化は思考能力の低下&凶暴化とセットらしい。
バーサーカー状態だ。
そして低下した思考力下、ジャガノス君の取った行動は更なる強化。
重ねがけ可能なのか。
強化二回目で異常回復魔法も受け付けない。
最悪である。
時間経過しか解除方法は無いらしい。
そんなの使わせちゃダメじゃないですか。
どうやって解決するのかと思いきや、取られた手はなんと強硬手段。
治らないなら倒してしまえ。
そんな感じでクラスメイトが攻撃魔法を放ち始めた。
「ちょっと、皆さん待ちなさい!」
先生が止めようと声を張り上げるが、クラスメイトもジャガノス君も止まらない。
しかしダメージを受けても止まらないジャガノス君は異常だ。
これは……
スーパーアーマー持ちか!
一定ダメージを受けるまで仰け反り無効のチート能力!
しかもあの突進!?
進路の女子は反応が遅れている。
私は頭を突き出し女子に突進するジャガノス君を見て、我慢できずに飛び出した。
「ミサさん!」
「キャー!」
先生やクラスメイトの悲鳴が聞こえる。
だがナマのヘッドクラッシュだぞ。
体験せずにおられるか!
ガガガガガガガ
おお、削りが発生している。
必殺技相当の威力があるということだ。
む、しかし止まったか。
まだ完成ではないようだ。
そしてまた強化をしようとするジャガノス君。
もう分かったからいい。
技を完成させて出直して来なさい。
立ち弱キック→中パンチ→中キック→強キックのチェインコンボ。
やべ、中パンチの段階でスーパーアーマー解除してたのに中キックまで繋げちゃった。
ジャガノス君ダウン。
だ、大丈夫ですか?
あ、でも立ち上がって……良かった良かった。
ピヨリ状態だけど。
おや? でもみんなジャガノス君そっちのけで私に駆け寄って来た。
「ミサさん! 大丈夫ですか!?」
「ええ、まあこのとおり」
ちょっと腕がヒリヒリする程度ですよ。
それより先生、ジャガノス君はいいのですか?
「あたた。みんな、すまんでゴワス」
あら狂化は解除されたのね。
それにまあタフなこと。
あんなに魔法食らってたのに。
「ミサさん……」
危うくヘッドクラッシュを受けそうになってた女子が、目を潤ませてこちらを見ている。
「もう大丈夫よ」
危機は去ったから、そんな泣きそうな目で見ないでほしい。
「ミサさん……」
うえっ!?
よく見たら他の何人かの女子も、同じような目を私に向けていた。
「やったなミサ! おいしいトコ取られちまったぜ!」
「ミサ、やりましたね。かっこよかったですよ」
ジャンネとミコルルが私の体にタッチして祝福をしてくれた。
あーりがとぅ!
ミコルルに合わせて、外国人忍者風に勝利ゼリフ決めてみた。
「ちょっと二人とも……空気読まなきゃ……」
アラシュだけはコソコソと周りを窺うように視線を移ろわせている。
うっ……!
目を潤ませていた女子たちが、ハンカチ噛んでキーッて顔してる。
なんかハァハァ興奮気味な子もいるし。
一体どうしたと言うのだ。
「私は巻き込まないでね」
なぜ離れる?
説明してくれアラシュちゃん!
なにはともあれ、ジャガノス君はじめ、彼のパーティーメンバーと私は保健室に行くことになった。
私は軽傷、ジャガノス君も何と軽傷。
一発ヘッドクラッシュを受けただけのゾンビッシュ君たちの方が、痛みを訴える情け無い有様。
それでもジャガノス君は体の表面積大きいから、プリン先生も椅子に乗ったり後ろに回ったりしながら治療をして大変そうだった。
あれだけの攻撃を受けて軽傷で済んだジャガノス君は、体力ゲージが五本分ぐらいありそうだ。
体力バーが常に満タンに見えてしまいボス戦を辛く感じさせるアレだ。
色が変わるから慣れればむしろ、モリモリ削ってやるってやる気が出るんだけどね。
飛び道具無しの超パワー型ボス級キャラ。
直線的な動きは読まれやすく、時に弱点となるだろう。
だがそれも一撃で逆転し得る可能性を持ったスーパーファイター。
有望な巨人族の将来性を考えると、私は舌舐めずりを堪えることができなかった。




