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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第九話 魔力チャージ

 様々な種族がいて、それぞれ得意な属性がある。

 先生はやはり強い魔法をお持ちだが、それも適正のある属性だけだ。


 例えばモルガノ先生の場合、得意属性は闇で、やや適正があるのは土と無。

 影を操ったり、相手の生命力を奪ったりすることに関しては、生徒ではとても足元にも及ばない。

 しかし、他の基本属性はちょっと熱を上げたり水を滲ませたりできる程度、生活魔法と呼ばれるレベルが扱えるに過ぎない。

 つまり属性によっては、生徒の方がよほど強い魔法を使えるというわけである。


 だから先生は、理論を教えることはできるが、生徒の前で魔法をやって見せるのは自分の得意属性のみ。

 他の属性は得意な生徒にやってもらうことになっている。



「では、火の魔法を……今日はジャンネさんにやってもらいましょう」

「うっし、まっかせとけぇ!」


 こんな風に。



「では炎の大きさは自身の体程度。速度は走る速度ぐらいに設定を。魔力計算はできますね?」

「お、おう! ええと……」


 さっきまでの勢いはどうした。

 視線を彷徨わせ、ジャンネはこちらを見た。


 サッと私は視線を躱す。


 ミコルルが何かジェスチャーしている。

 ジャンネの表情が明るくなった。



「行くぜ!」


 ボッ、と火柱が上がった。

 身長の半分ぐらいの高さで幅も狭い。

 そして速度が速い。


「おわわ! ちょ、ちょっと待てよー!!」


 構成を間違えたらしい。

 ランプを使ったクロービスのように、火柱を追いかけ走るジャンネ。

 ループするマップでの無限経験値稼ぎを紹介していた攻略本を思い出す。



 ちなみに凡人種である私には、先生からお手本として指名されることはない。

 基本属性ほぼ全てに適正はあるけれど、適正値とやらが低いのが我々凡人種だからである。


 悲しき器用貧乏。

 第二王子。

 だが第二王子は大器晩成型なんだぞ。

 低レベルクリアに必須の人材なんだぞ。



 話を戻して、この適正値と言うのは魔法を使う際の効率を、大まかに表した指標である。

 フレイム族のジャンネは得意な火属性が百、それ以外の適正属性で風属性五十、無属性五十、と言った具合で。


 それが私たち凡人種では、無属性五十、その他二十〜三十程度である。


 同じ威力の魔法を使おうと思ったら、適正値二十の人は五倍魔力を使わないと適正値百の人には敵わない。


 魔力の容量は人それぞれと言え、五倍の差は容易に埋められるものではない。

 つまり、凡人種が別種族と得意属性で張り合おうとするのは無駄なのだ。


 ま、私は後輩と違い魔法使いになりたいわけではないから、その辺こだわりはない。

 無属性の適正値が多種族と変わらないだけで十分。


 ただ魔力量は伸ばしたいものである。

 ゆえに今からの魔法講義は、しっかり聞かなくては。




「はい、では今年からは魔力の回復と増加に関して学習していきたいと思います」


 わー、ぱちぱち。

 私の目はモルガノ先生に釘付けだ。


「皆さんご存知のように、魔力不足だと魔法が出ないだけですから、日常生活ではほとんど影響が無かったと思います」


 そのとおりです。

 魔物倒すのに魔法が無きゃ困るとかそう無かったし。


「ただ、これから実習をしたり、または先々魔法を研究しようという時に、魔力が足りない、では不便ですよね」


 格ゲーでも不便だろうか?

 気属性で必殺技を作ろうと思ったら困るかもしれない。


「魔力の回復には幾つか種類があります。分かる人は手を挙げて」


 はい! はい! はい!


 私は挙げない。

 みんな優秀だなぁ……


 時間経過、回復薬、マジックドレイン。

 ふむふむ。


「そうですね。もう一つ、皆さんに覚えていただくのはこちら、“自力回復”です。いいですか、自力回復、ですよ」


 通販番組の人みたいな紹介の仕方だ。

 自力で回復できるなら使いたい放題と言うこと……

 ではないんだろうな。


「マジでえ? 超使いたい放題じゃん。ポイポイポポイ」

「ピーピー」


 少なくともこの人たちには使い放題されたくない。


「もちろんそんな都合の良い話はありません」


 ほらね。



「自力回復分の魔力を生み出す原料は、自分の生命力です」


 ああ、なるほど。

 HP消費型の魔法みたいなものだ。

 際限無く魔法を使おうと思えば命を削らねばならない。


 モンスター級の体力を誇るならそういう方法もありかもしれない。

 が、パーフェクト勝ちは無くなってしまう。



 魔法使い放題と言っていた人たちのテンションはダダ下がりである。

 モルガノ先生はそんな生徒の様子を見て苦笑い。


「さ、今後の人生で使う使わないはともかく、覚えてはもらいます。テストもしますからね。それと生命力と言っても、無理し過ぎなければ、寿命に関わるとかそういうものでもないので安心してください」


 実技初テストだ!

 しっかり習得するぞ。

 先生のお手本を見逃すまい、とガン見する。


「はぁぁぁあああ」


 モルガノ先生が集中している。

 体の隅々に意識を巡らしているのだろう。

 そして額に汗を浮かべて――

 体力を魔力に変換し終えたようだ。



 う〜ん、別に難しいものではなかったな。

 難易度で言うと気属性発動が星六、魔力変換が星二ぐらいのイージーモード。

 真のエンディングが見られないレベルだ。



 ふん!


 ほらできた。


 多分、血液とか筋肉とか臓器とか、そう言う体を構成するものから魔力になる謎の力を絞り取るのだろうと思ったが、その推測は当たっていた。


 こちとら前世で体のどこにどんな臓器があるだとか、筋肉を動かすエネルギー源だとか、栄養素の運搬だとかは一応学んできたのだ。


 うろ覚えもいいとこだとしても。




 そうだ、どうせならこの機会に魔力ゼロからフル充電するには、どれぐらい生命力とやらを使うのか検証しておこう。



 せっかくだから最近覚えた闇属性魔法放出。


 闇属性魔法を使うコツは、全てを受け入れる寛大さ、それに静かなイメージを持つこと。

 どうりで今まで使えなかったわけだ。

 恐怖とか暗黒面とか、そんなイメージを持っているようでは。



 実害の無い黒い霧を発生させる。

 モクモクモクモク。


「きゃ! 急に辺りが暗くなりましてよ!?」

「ちょ、何も見えねえんだけど! マジダクってんすけどぉ」


「これは……闇魔法。誰ですか! 黒霧使ってるのは!」


 やば、先生怒ってる。


「ごめんなさい」

「ミサさん、どう言うつもりなんですか?」


 かくかくしかじか。


「なるほど、魔力を空にしようと思って、害の無い黒霧をね。とにかく早く霧を飛ばすように」

「はい、すいませんでした」


 黒霧は風で散らした。


「魔法が使いたいなら、隅っこで土でも掘り返してなさい」


 バカなの、ってまた言われるかと思ったけど大丈夫だった。

 私の考えに一定の理解はしていただけたようだ。




 土を掘り返しては埋める。

 掘って埋めて掘って埋めて。



「畑でも作る気なんですか、あの子は」

「いつまでやるんだろ?」

「いい魔力量じゃねえか、なっはは!」



 ようやく魔力が空になった。


「随分魔力多いわね……回復させるのはいいけど、倒れないように気をつけなさい」


 はい! いきます!

 はぁぁぁあああ



 ふう、充電完了。


「え? それだけ? 体調は?」

「? いえ、なんとも」


 繰り返せば少し疲れるかもしれないが、せいぜいその程度だ。


 て言うかこれって、龍虎の気合い溜めじゃん。

 はあああ、ってやって、オラオラァ、で減っちゃう気合いゲージ。

 満タンで超必殺技撃てちゃう。



 ヤバい。

 何か気分が盛り上がってきた。

 魔法ぶっぱ系格ゲーには賛同できぬと言っておきながら、気合い溜め→必殺技(魔法)→気合い溜め、と言うサイクルに心惹かれつつある。



 頭を振って周りを見た。


 クラスメイトも魔力充電を次々に成功させていた。

 結構みんなゼェハァ言ってるな。


「おや、ミコルルさんもあまり疲れて無さそうですね。あまり魔力が減ってなかったのですか?」

「いえ先生。少し体力がついたかな、って思ってます」

「休みの間に頑張ったのですね。感心感心」


「ちょ、何だよ〜それ、ミコルル〜」

「抜けがけかな? じーっ」


 ジャンネとアラシュがミコルルに絡んでいる。


「抜けがけだなんて、ちょっとミサと修行しただけです。ねえ、ミサ」

「へえ、マジかよ。アタシもまぜろよ」

「自主練? 私も暇だから付き合おうかな」


 ミコルルの口の端が片方だけ上がった。

 何故だか二人から顔を隠すように。

 嬉しいなら素直に喜べばいいのになぁ。


「いいですかミサ?」


 もちろん私はOKした。

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