第八話 パーティー結成
私の自己紹介の後、入学式兼始業式会場に向かうことになった。
先生、ミコルル、私と続き、その後ろにバカ軍団とお嬢様軍団が並ぶ。
気分は仮装大会の引率者である。
ドーム型天井の大ホールに集合。
そこでは初々しい一年生、凛々しい三年生が整然と並んでいた。
そんな場所にぶっちぎりに浮いた二年生が入場。
変な集団がうちのクラスだけじゃなかったのは良いが、なぜ二年生だけこうなのだろうか。
私の感性が壊れてるわけではない。
それは一年生が呆気にとられている様子や、三年生が苦笑する様子で明らかだろう。
教職員の方々は誰一人注意しない。
自由な校風でも売りにしているのか。
やがて式が始まった。
学院長が挨拶をする。
ミサイルを体一つで受け止めるどこぞの塾長そっくりだ。
無限の可能性を秘めた一年生は様々なことにチャレンジせよ。
三年生は己で限界を決めることなくより高みを目指せ。
二年生は自分を見つめ直せ。
そんなことをおっしゃった。
私も同級生に言いたい。
自分を見つめ直せと。
いつバカ軍団が「チェリーッス」とか言い出すか、お嬢様がキレるかハラハラしながら式を過ごした。
そんなアクシデントは起こらず、無事終了したが。
先に退出する一年生を拍手で見送る。
こちらをチラチラ見ている。
後輩の目がゴミを見るそれのような気がした。
次に三年生が退出。
我らは居残りだ。
やはり喝を入れられるのだろう。
巻き込まれた感が半端ない。
二年生の学年主任が登壇した。
キラーマンティス種族のデスシックル先生。
腕が妖刀みたいにおどろおどろしい光を放っている。
「心身共に成長途上の君たちは、時に過剰な行動や表現をとることがあるだろう。だが、個性を履き違えて違法なことをしたり、他人に迷惑をかけたりすることを我々は良しとしない。くれぐれもこの腕を振るわせることの無いように注意してくれたまえ」
怖いよ!
腕振るったら人の首が飛んじゃうでしょそれ!
それと今のこの状況は許容範囲なの!?
まず校則を見直せと言いたい。
ようやくミーティングを終え大ホールを出られるようになった頃には、私は軽いめまいを覚えていた。
教室に戻り私以外の自己紹介タイムが始まった。
ミコルル以外誰も彼も同じような格好して、顔と名前なんて一致するわけないだろと思っていた。
しかし私は男子二人、女子二人を覚えることに成功した。
だって彼ら彼女らは、どう見ても無理してあの格好をしているって丸わかりだったのだから。
まず男子その一、巨人族ジャガノス。
「ワシはジャガノスでごわすYO」
身長三メートルある置物のタヌキみたいな体格で、どう見てもカツラなチャラ男風金髪が不自然だ。
男子その二、グールのゾンビッシュ。
グルグル眼鏡を掛けてこちらもヅラな赤髪は刈り上げている。
いわゆる坊ちゃん刈りだ。
「ズバリそうでしょう」とか言いそうだと思ったら、案の定学級委員だった。
どうしたいんだこの人は。
「困ったことがあったら何でも僕に言いたまえ! ウェーイ」
クラスのこの現状を何とかしてほしい。
女子その一、シルフ族のアラシュ。
緑髪にウェーブのかかった、色白おっとり系女の子。
「アラシュです。風属性が得意です。よろしくお願いします」
モジモジしてる様子が小動物っぽくて微笑ましい。
女子その二、フレイム族のジャンネ。
褐色肌に赤髪の活発そうな子。
「アタシはジャンネ! 火属性が大好きだ! でございます! よろしく頼むでございます!」
この子も言葉が迷走している。
おバカキャラなのか。
この四人とミコルル以外は、正直言って見分けがつきません。
こんな日でも授業は行われる。
と言っても一年生時の簡単なおさらいだが。
ミコルル先生のお陰でなんとかチェックすべき点も見いだせた。
前の席に座るミコルル大先生が、心なしかこちらを気にしているように見える。
分かってます。
感謝してます。
この御恩は全力の修行でお返しする所存。
それから休憩を挟み三時間、ようやく授業が終わった。
「ミサ、お食事に行きましょう。今から行けば学食も空いていますから」
「お、アタシたちも交ぜてくれよでございます。アラシュもいいだろでございますな?」
「う、うん。いいけど、やっぱりやめようよこの口調。疲れちゃうし、変だよ〜」
おーっす、てなノリで声をかけて来たのはジャンネだ。
アラシュと仲良さげ。
そのアラシュにか細い声で変だと指摘されて、ジャンネはガーンって顔してる。
「たっはー。やっぱ慣れないことするもんじゃねえな。よし! 前に戻そうぜ」
「それがいいよ〜」
やはり無理をしていたようだ。
私もこちらの方が断然落ち着くので、自然と顔が綻んだ。
「ごめんね。変な流行に乗っちゃって、相当おかしかったよね〜、私たち」
「そりゃもう」
「なっはは! 参ったね!」
「何故こんなことに?」
「それは、食事しながらお話しましょう。いいですよね、アラシュ、ジャンネ」
「いいよ〜」
「おう!」
気さくな人って、私みたいなコミュ力欠乏系人間にはホントありがたい。
こうして私は、一年生時からよく一緒にいたと言う、ミコルル、ジャンネ、アラシュたち三人の輪に入れてもらえることになったのであった。
「と、言う事情だったんですよ」
「いやぁ、ヒラヒラした服とか堅苦しい言葉とかよ、一生分堪能した気分だよな。もうお腹いっぱい、十分だぜ!」
「普段どおりがいいよね〜」
四人でテーブルを囲んで、きゃいきゃいお喋りしながらお食事。
ミコルルたちから聞いたのは、どうやら学院の二年生時には、独特な感性を表に出したり、自己主張が激しくなったりする期間があるのだと言うこと。
それは最早病気のようであり、歴代の学生も漏れなくかかっているらしい。
あのモルガノ先生やヒュウガ先生も、かつてはそうだったのだと。
あの二人、やはりここの卒業生だったか。
どうりでこの嘆かわしい事態に何もしないわけだ。
自分たちも通って来た道だから大体分かっているのだろう。
漏れなくとか言ったが、ミコルルには無いんじゃないか? って思った。
でも彼女にもあったらしい。
私と後輩に対して妙に喧嘩腰だった、あの時である。
どうにも心がささくれ立って、胡散臭いミサ憎し、となっていたのだと。
何よ。
きっちり謝ってくれたから蟠りなんて無かったけど、もっと早く言ってくれれば修行をサービスしてあげても良かったのに。
特別訓練って形で。
それにしても恐るべきはその病じゃないの。
学生特有の病気って、私が罹らないのは転生者だからか?
もし風土病に近い、この学院ならではの病気だとしたら、私や後輩は一体どうなってしまうのか。
幾つもの黒歴史を生み出してしまうこと必至だ。
早急なワクチン開発が望まれる。
ともあれ、こうしていち早く病を克服した子たちと仲良くなれたことはラッキーだ。
「ミサちゃん?」
「ミサでいいよ。それともアラシュちゃんって呼んだ方がいい?」
「ううん。アラシュの方がいいかな」
「アタシはジャンネでいいぜ!」
「でね、ミサ。二年生からの実技実習って授業では、四人から六人ひと組作って課題をクリアするものがあるんだって」
「アタシはいいぜ!」
「もう、ジャンネ。今はミサに聞いてるんだよ」
食い気味に返事したジャンネを、アラシュがのほほんと注意する。
ガハハと笑うジャンネは、どこかリーレイに似た所がある。
めんごめんご。
アラシュのおっとり具合と合わさるとちょうどいい加減で、私の顔にも自然と笑みが零れる。
「誘ってくれて嬉しい。でも、私みんなから勉強で遅れてると思うけど、いいの?」
「いいっていいって! 勉強はミコルルに任せとけって!」
「そうそう」
「あなたたち……」
ミコルル師匠、そんな白い目で見ないでください。
どうか我々を優しく導いてください。
「ありがとう。これからよろしくね」
「よろしく〜。ところであと二人入れられるけど、みんなどうする?」
「ん〜、誰かいるか?」
「いらないと思いますよ」
斜め上を向いてミコルルが言った。
「え、何でだ?」
「その内分かります」
「ふうん。まあ、ミコルルが言うならそうなんだろうけど」
「アタシたちが力を合わせれば最強ってことだろ? なっはは、まいったぜ!」
いいのかな?
グループから溢れずにすんでホッとする一方、足を引っ張って失望されたらどうしようと、私は不安に襲われた。




