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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第七話 学院生活始動

 あと四日で新学年が始まる。

 新二年、新三年生も戻りつつあり、学院も賑やかになって来た。



「はあはあ、ミサ、あの、ゼェゼェ、一つ、提案があるのですが、はぁ、よろしいでしょうか?」


 ひ弱なミコルル&お供ズは、私と後輩の修行を体験したいと言った。

 誤解から起こったプチバトルの後のことである。

 私は喜んで受け入れた。


 後輩もお供ズとちゃんとお友達になれて嬉しそうだった。


 カプルコン寺院と違って、良好な自然環境と便利魔物を使った修行はできない。

 その分私は張り切って、ひ弱用のメニューを考えたのだが……


「なあに? まだウォーミングアップ終わったばかりだよ」


 そう、ミコルルたち三人は、想定以上のひ弱だったのだ。


 貧弱、貧弱ゥ!


 と罵られても反論できぬ。

 いいえ、違いますとは言い返す余力も無い。


 大自然の申し子じゃないのかよぉ。

 しっかりしてほしい。



 そう言えばミルミルの種族が判明した。

 雪女だって。

 雪女だから寒さには強いけど、暑さ耐性は低い。

 体温が上がると割とすぐダウンする。

 だから彼女には熱管理をしっかりさせるし、こちらも気をつけて修行させているのに。



 早く呼吸を整えて。

 次は百秒息を吸い続け、百秒息を吐き続ける訓練だよ。


「いや、だから提案が……」


 ちぇっ、忘れなかったか。


「ミサは一年を飛ばしていますから、授業について行けないと心配です。今日から座学を重点的に勉強しませんか?」


 う……確かに魔法知識にはイマイチ自信がない。

 和尚は博識だったが、体験を通じて得た知識だから、学校で学ぶ学問とはまた異なるかもしれないのだ。


 う〜ん、落ちこぼれるわけにはいかないし。

 それに格ゲー世界の実現に使える知識もあるかもしれないか……

 ここは素直にミコルルの申し出を受け、授業に遅れないようにさせてもらうとしよう。



「上手くやったっすね。ミコルル先輩」

「しっ。キャミィさんなら分かってくれますよね。物事にはちょうど良い加減というものがあるのです。ここで休憩を挟むのがきっとベストだと、そう私の体が訴えているのです」

「姉様も変なスイッチ入るとヤバいっすからね。ま、同級生として姉様が暴走しないよう気にかけてやってあげてほしいっす」

「うう、がんばります……」



 私は迷った末に、ミコルルと魔法勉強をする……

 否、ミコルルから魔法講義を受けることにした。


「助かった」

「心臓が爆発するかと思った」

「良かったっすね、マムっち、ウルっち」


 後輩め、私と同じで公式の魔法学を学べたわけではないのに、その余裕は何だ。

 いや、そうか。奴は一年生だった。

 うむむ、不公平だ。


 しかしこのままでは体育の時にだけ張り切る脳筋キャラになること必定。

 ここで少しでも先行者との差を縮めねばならない予感は痛い程感じている。








 そして休みも明け、本格的な学院生活が始まる。


 ちょっと思い出せないぐらい昔ぶりの、勉強漬け生活は苦しかった。

 せめて勉強のやる気が出る漫画でも手元にあれば良かったのに。



 東大なんて簡単だ!



 とかそんな漫画が。


 ミコルルの肌がツヤツヤしてる。

 やはり彼女は勉強と相性の良い優等生だったらしい。



「まあざっくりとおさらいした程度ですが、これだけやっておけば授業で何を言ってるか分からない、と言うことにはならないでしょう」


 不幸中の幸いだったのは、学んだ内容がゲームやアニメなんかの魔法世界の設定と似ている所があったことだろう。


「ありがとうございました、ミコルル先生」

「ふふふ、いいんですよ。私のフクシュウにもなりましたし」


 復習とは何と勤勉な。

 お手本のようの優等生のミコルルさんには今後もお勉強面でお世話になりそうだ。




 そう言えばクラス発表は既に終わっており、私は幸運にもミコルル様と同じクラスになることができた。


 寮の女子生徒への自己紹介も、ミコルルが気を利かせてやってくれたお陰でスムーズに済んだ。

 年頃の女の子たちだが、大体みんな真面目で上品そうだった。

 やっぱり育ちのいい子女の集まる学校なだけある。


 女子がこれだけ御嬢家の令嬢ぽい子たちばかりならば、男子だって最低でも柿野君以上の子ばかりなのだろう。

 友達んことか、そう言う独特な感性を持ったお坊ちゃまがいないことを望みたいものだ。








「ミサさん、参りましょう」


 今から教室に向かう。

 ほほほ、と同級生に誘われた。


 少し前世の学生時代を思い出して、胸がチクリと痛んだ。




 教室に入ったがまだ男子は来ていないようで、私は女子に囲まれるように椅子に座らされた。

 まるで護衛に囲まれているようなんだけど、これは一体どういうことなのだろう。


「ミコルル、これは?」

「私は大丈夫って説明したのですが、周りの子は心配してしまって」


 何を? と尋ねる間もなく廊下が騒ついてきた。


「来たわね」


 男子がですよね?


 女子たちの妙に険しい顔つきが気になる。




 そして教室のドアが開けられた。




「チィーッス」

「チョリーッス」

「ウェーイッス」


 柿野君でもおぼっちゃまでもねえじゃねえか!


 チャラ男とヤンキーを足して、パーリーピーポーで割ったような……


 手短に言えばバカっぽい。


 私世代にはちょっと受け入れ難い種類のバカさだ。

 私は同じバカなら魁の塾の方が好ましいと思う派なので。


 そしてそんなバカが大半……って言うか全員?

 これは異常じゃないか。

 一人だけなら個性的だろうが、全員これなら一周回ってもはや没個性だろう。



 バカ軍団がこちらに来る。


 お嬢様軍団が行く手を阻む。


「ちょいちょいちょい! どいてくんね? マジで。転校生来てるんしょ? イチモク拝ませてちょんまげ!」


 言葉が迷走しているぞ。




「んだテメェら! うちらの姫に絡んで無事で済むと思うなよ!?」


 ビクゥ!


 お嬢様方が豹変した。

 下から舐めるようにメンチ切ってる。

 眉毛がハの字になって、頭の上に「!?」が浮いてるんですけど。


 鶴翼の陣と魚鱗の陣で戦が始まりそうな勢いだ。

 突然ヤンキー漫画化した教室で私はどうすればいいのか。


 ミコルルさん!

 助けてください!

 首振ってないで、ほら。




「はい、みなさんおはようございます!」


 その時、教室の扉がガラガラと引かれ、モルガノ先生が姿を現した。


「センコーだぜ、着席着席〜」

「ちゃんモル先生チィーっす」


 せ、先公……

 ナマで初めて聞いたわ。

 しかもそれがお嬢様のお口から吐き出されるなんて。



 和尚、私も時代に流され不良にならなければならないのでしょうか。

 帰った時「チィーッス」とか「ゴブ公」とか言ったら折檻でしょうか。

 ここで格ゲーキャラを獲得することに、私は自信を失いそうです。



 苦笑いを浮かべる私をよそに、モルガノ先生はパンパンと手を叩いて注目を集める。


「はい、静かに! 今日は新学年のスタートです。そして私たちの仲間に、一人新たに加わる喜ばしい日でもあります。はい、皆さん拍手」


 わー、わー! ピーピー! パチパチパチ


 違う意味での歓迎を想像させる盛り上がりだ。


「さ、ミサさんこちらへ」


 こちらへ、じゃねえわ!

 この乱れた雰囲気なんとかしてくれ!

 学級崩壊極まれりだ。



「ファイト!」


 囁くようなエールがミコルルから飛んで来た。



 ファイトと言われれば退却するわけにはいくまい。

 そうだ。ここにいるのはストリートファイトにヤジを飛ばすギャラリーに過ぎない。


 私は宙返りをして教壇に立った。


 ピピーピー!


 ギャラリーは一層盛り上がる。


「カプルコン寺院から参りました、ミサです。二年からと言う途中入学で、皆さんについて行けるかとか不安はありますが、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします!」



 ピューイ! ピピュー!

「変なことしないで大人しくしてほしいわ」

「勉強だけ精一杯でお願いします」

 ピューピュー!



 一部聞き取りにくい音声が混じっていたが、私の無難な挨拶は受け入れられたようだ。


 ふう、緊張した。

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