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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第二章 学園格闘者発掘編
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第二章 学生格闘者発掘編 第一話 〇〇デビュー

 リーレイのお別れ会もまともにできないまま、学院に向け出発してしまった。

 本当にひと月かかるところをひと月と少ししか残されておらず、入学準備に追われたまま出発の日を迎えたのだ。


 一応言っておくと、和尚のせいではない。

 手続きはかなり前から――それこそ私が正規に入学できる一年前に間に合うぐらいに――行ってくださっていた。

 のであるが、手続きの遅延と受験票なんかが届くのが遅れて、こんな時期になったらしいのだ。



 そのため、私と後輩は今走って学院に向かっている。



「もうちょっと何とかなんなかったんすかねえ。リレイっちを見送って、とはいかないまでも、みんなと抱擁を交わし合って再会を誓って」


 戦場に行く兵士か。


 でも、後輩の言うことも分からんではない。

 そこまで大仰なことは求めぬまでも、やっぱりきっちり挨拶する時間ぐらいは欲しかった。




 さて気を取り直し、目指すのはエセーヌケ王国という国にあるエディケイン学院。


 ちなみに我らがカプルコン寺院はプレスデン皇国と言う国の端っこにある。

 プレスデン皇国にも学校はあるそうだが、身分制が厳しいようだ。

 和尚はそんな所よりも、実力主義で身分に拘らないと噂の隣国の学院を、と考えてくださったのだ。


 和尚がそこまで私たちに期待してくださっているとは。

 これは学院で劣等生にはなれぬ。

 やはり生徒会に入り風紀とかを取り締まらねばならないだろう。



 おい、そこの貴様、服装が乱れてるぞ!

 罰として必殺技一つ開発するまでカプルコン寺院で修行だ!


 なんつって。



 話が逸れたが、プレスデン皇国とエセーヌケ王国にもやはり国境と言うものは存在する。

 だが、私たちはパスポートにも使える便利アイテム、冒険者カードを持っている。

 越境に関しては問題無い。


 問題は、国境をまともに越える時間が無いと言うことだ。


 そこで私たちは山から山へと伝い、こっそりエセーヌケ王国へ進入する。

 そのまま学院へと入り、学生の身分を正式に得るのだ。


 エディケイン学院は、優秀な王国民であれば特待生制度もあるが、基本的には高い入学金が用意できなければ入れない。

 また海外からの入学生は受け入れているが、その場合学力の他に、厳格な身元保証が必要だ。

 つまり学院の生徒であることは良い身分の証明となるわけだ。


 些かならず不法入国ではないかと言う思いはあるが、順序を変えるだけで後程正式な手続きを踏むことで許してもらおう。

 ダメそうなら手続きの遅れた学院のせいにすればいいかな?


「何の心配してるんすか。入国手続きの遅れは正当な理由として処理されるようにしてくれてるって、和尚が言ってたじゃないすか」


 あれ、そうだっけ?

 バタバタしてて聞き逃してたかな。


「しっかりしてほしいっす。学院では姉妹アイドルとして活躍しなきゃいけないんすから」


 そんな義務は無い。


 そんなこと言ってると番長争奪戦に巻き込むぞ。

 友情の名を借りた卑怯必殺技の、相手を羽交い締めにする役を押しつけるぞ。



 そう言えばこうして何日も後輩と二人だけと言うのも、転生してから初めてのような気がする。

 初っ端から和尚と遭遇したんだし。


 広い世界に出れば和尚を超える猛者は大勢いるのだろうか。

 スライメン先輩みたいな……


 あんなのがゴロゴロいたら困るけど。



 でも和尚も新しい属性への扉を開きつつあったんだよ。

 その名も空間属性。


 そりゃ私は歓喜したね。

 なんたってテレポートしてもらえるって思ったんだもの。

 手足が伸びるのはやめてもらったけど、ちゃんとあのキャラに寄せてってくれるんだから、やっぱり和尚は素敵だ。

 和尚の空間属性の進展具合は、先日まではまだどこに繋がってるか分からない、拳大の穴が空中に空くぐらいだった。

 でも私が卒業するまでにはきっと、テレポートを自在に使いこなせるようになっているだろう。








 と、私はこの十年を振り返りながら山を進む。



 二日ぐらいすると、明らかに魔物の強さが一段上がった。


 ピシピシ


 でも雑魚だ。



 五日ぐらいするともう一段上がった。


 ピシバシ


 それでも雑魚だ。



 八日ぐらいすると更に一段上がった。


 ピシピシバシ


 まだまだ雑魚だ。



 十日、もう平地に出たが人里は見えない。


 ピシピシバシドフ


 魔物に少し手応えが出てきたぞ。



 この辺の大地闘神信仰はどうなってるのだ。

 ちゃんと闘神像に祈りを捧げているのか。

 ドロップ品で腹を満たしながら後輩と話し合う。


「もしかして闘神像が無い地帯かもしれないっすね」

「だから人里が無いのかな。もし闘神像があってこの状態なら、スライメン師に言った方がいいかもね」

「うわ、懐かしいっすね! そうそう、学院の推薦状には、スライメン師の一筆も加わってたらしいっすよ」

「へぇ、よく知ってるわね?」

「姉様にも伝えてくれって言われてたっす。めんごめんご」

「リーレイの真似してごまかすんじゃないの」


 私は後輩の頭を小突いた。


「てへ」




 そんな一幕もあったが、魔物の強さはそれから三日ぐらい進んだら二段程下がった。


 同時に私たちは都市と言える賑やかな人里に入っていた。








「すいません、ここって何と言う所ですか」


 道行く人に尋ねた。


「うわ小汚ねえな、浮浪児かよ!? どこって、学院都市に決まってんだろ! ほら、とっととあっち行ってくれよ!」


 しっし、と犬を追い払うような仕草をされ、私たちは少なからずショックを受けた。



「がーん。い、言われてみると私たちのこの姿……く、臭いっすか?」

「分かるわけないでしょ。私も同じなんだから」


 流石に洗浄魔法だけでは無理があったようだ。

 十日以上野山を駆けた衣服には、染み込んだ汗や草葉の汁が異様な臭いを発するようになっていた。


「私、こんな格好で入学するわけにはいかないっす。アイドルデビューが台無しになっちゃうっす」


 後輩は本気で頭を抱えている。


 アイドルデビューはどうでもいいが、確かに初っ端から汚キャラ認定されて以後の学生生活を堂々と送れるほど、私の精神はタフではない。



 幸いにも既に学院都市、エディケイン学院と隣接する都市だ。

 山を飛び谷を越え、道中駆け足交じりだったお陰で入学までにはかなり余裕ができたもよう。


「よし、ちゃんと宿に泊まって身を清めておきましょう」

「うう、人生初めてっす。汚ねえなんて人に言われたの……」


 メソメソするんじゃないの。

 事実だからしょうがないでしょ。


 私も結構グサッときたけど。








 私たちは物陰に行き、水と火の魔法で体を洗浄すると、汚れた衣服を着替え宿に入った。

 よく考えたら久々に屋根の下で休むんだ。


 はぁ、寛ぐわぁ。


 この汚れきった衣服はどうしようか。

 洗ったらまだ使えそうだが、草葉の汁とか汗ジミとか放置してたからな。

 高性能な洗剤も無いこの世界では、汚れは落としきれないかもしれない。

 まあいいや、一応洗い替えとして持っとこう。








 洗濯後部屋に戻ったら、後輩が口をへの字にして独り言を呟きながら歩いていた。


「何してんの?」

「重大な決断をしようと思うっす」

「なに?」


 うわ、反射的に聞いちゃったよ。

 どうせくだらない話なんだから、こういうのは。



「入学したら……ボクって言おうかと思うんす」



 く、くだらねえええ!

 想像以上にくだらなかったよ!

 ボクっ子デビュー?

 て言うかそんなの転生した時に済ませとけっての。



 え、なに? ボクっ子ってみんなそんな決断して言い始めるの?

 後輩のこの真剣な態度見てたら、くだらねーって思った私がなんか悪いみたいなんだけど。


「好きにすれば……ところで私とはまだ姉妹設定でいくの?」

「え、なんでそんな当たり前なことを。姉様はボクの姉様じゃないすか」


 早っ。

 もう自然とボクって使ってるじゃん。

 それに姉妹設定も当たり前って。


 まあいいや、変に設定弄るとワケ分かんなくなりそうだから。

 はいはい、それでいいですよっと。

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