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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第一章 路上格闘者編
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第三十一話 転機

 月日が過ぎるのは早い。

 私もそろそろ十四歳ぐらいだろうか。


 格ゲースキルはと言うと、気属性でとりあえず目標の前腕や下腿など体の一部をガードできるまでに至った。

 ガードさえしっかりやれば通常攻撃でダメージを食らうことはない。

 次はこれを一瞬でも全身に広げて、必殺技の無敵時間を作ろうと思っている。


 その完成にはまだ修行が必要なようだが。




 私事はさておき、このカプルコン寺院にあれから新メンバーの加入は無い。

 リーレイの刑期も終了間近となっている。


 当初はここに格ゲーキャラが集まればいいな、と思っていた。

 しかし意思ある人を一箇所に集めると言うのは、やはり無理があるように思える。


 トンダとブランクは例外だろう。

 あの二人ならどこに行っても生きていける(腕っ節的にも、生活力的にも)はずだが。

 彼らは和尚と共に信仰に生きる道を選んだのだ。


 割と今の祈りが充実しているので、和尚も特に人が増えることを望んでいる様子はない。

 和尚の意に反して、人を増やすのもどうかな、とも思ってしまう。




 しかし格ゲー世界を諦めることなどできません。

 闘神様闘神様、私はどうすれば良いのでしょうか。


 私自身今の生活がそこそこ気に入っていること。

 しかし一方で世界格ゲー化の望みは捨てきれないこと。


 私は良くないと思いつつ、闘神像に悩みをぶつけていた。




 慌てずに待ってれば




 はっ、今何か聞こえた気が……


 分かりました。

 雑念を捨て修行に励みます。

 ありがとうございました。








「もうすぐお別れっすね」


「え、あ〜……あっはは、いやだなぁ。お別れって言っても、町に来ればいつでも会えるってば!」


「元気でやれよ」

「妹たちによろしく」

「修行、サボらないようにね」


「ちょ、ちょっとちょっとぉ!」



 私たちが次々に別れを告げると、リーレイは眉根を寄せて立ち上がった。



「何でみんなお別れを強調するかなぁ! 和尚、何とか言ってやってください!」


 和尚は頷いて立ち上がる。


 リーレイは一旦表情を緩めた。

 しかし自分に近づいてくる和尚を見ると、再び顔を険しくした。


「リーレイ」

「は、はい」

「この五年、よく頑張ったな」

「ええ、ありがとうございます。でも、」


 リーレイが何か言う前に、和尚は一枚のカードを彼女に差し出した。



「これは……私の冒険者カード?」

「そうだ。お主の、五年間ここで勤めた分の金銭が納められている」

「え、どう言う……? 勤めは、私の罪の償いじゃ……」


 和尚は頷く。


「お主の稼いだ分から、被害者への賠償は済ませておいた。後は生活費を除いたお主自身が持つべき分だ」


 和尚が被害者への賠償をしたことも、時々リーレイの冒険者カードにチャージをしていたことも、私たちは知っていた。

 知らなかったのはリーレイだけだ。


「そん、な……うっ、うう」


 彼女はポロポロと涙を流している。


「私、みんなとお別れなんて、嫌だよ……」

「今生の別れとは言うまい。だが、ここは決して近くない。お主はこれから妹たちと過ごし、また己の人生を歩むのだ。ここと縁遠くなるのも自然なことなのだ」


 泣き崩れるリーレイをみんなで囲む。


 できればその人生では、新たな格ゲーキャラを発掘してもらいたいものである。








「ちょうど良い機会だ。ミサ、キャミィ、お主らにも重要な話がある」


 ?

 このタイミングでちょうどいい話とは?


 警戒するような話ではないだろうけど、私も後輩も姿勢を正して和尚に向き合った。


「実は、お主たちに学院に行ってもらおうと思っておる」


 え? 何、学校とかあったの? この世界。


「学院? 学園アイドルっすか!? や、や、やったぁ〜!!」

「ア、アイドル? ……それは、どうなのだろうな?」


 はしゃぐんじゃない。

 何だ学園アイドルって。

 和尚が困ってるじゃないか。


 学校ってことは、アレですよね?

 学園バトルですよね?


 ええと、学園が舞台の格ゲーは……

 数える程しか記憶に無いな。


 ジャスティスなやつとか、ゴウカイさんとか……

 生徒会はやっぱり速攻なのかな?

 すっごいのは、学園枠に入れていいのかな?


 あ、もし学園がバトルの舞台でなくても、格ゲーキャラって学生かなり多くない?

 中には学生服着てるだけだろ! って奴もいるけど、公式設定が学生と言うのは少なくなかったはず。


 ペロリ


 私は思わず舌舐めずりをしていた。




「お、和尚、キャミィとミサの目がヤバいですよ? 学校なんか行かせていいんですか? なんだったら私が延長して、ここであの子たち押さえましょうか?」

「い、いや、それでは意味が無いのだ。あの子らも幼い頃からこんな人里離れた場所で暮らしておる。文句も言わずに偉いものだと、拙僧は常々思っておる」

「だが、それ故にあのように特殊な一面を持ってしまったのでは、と。和尚はそう考えておられるのだ」


「俺も、二人には同じぐらいの年齢の子と共に過ごす日々を与えてやりたいと、与えるべきではないかと思っていた」


 ブランクの声が聞こえてきた。


「そ、そんなこと思ってくれてたんすね……みんな〜、ありがとっす〜」

「ありがとうございます。ここに置いてもらえるだけでも幸せなのに、そこまで私たちのことを考えていただいているなんて……とても、嬉しいです」


 胸の内が熱くなる。

 零れそうな涙を抑えながら、私は深く頭を下げた。



「変なスイッチが入らなければ、すっごくいい子なんだよね……はぁ、この子たちと離れるのも寂しいなぁ」

「我は、和尚だけでなくこの姉妹にも救われたのだ。できることはしてやりたくてな」

「俺も。照れ臭いけど、これが親心ってやつかもしれない」



 何を言ってるかは聞き取れないが、私は今感動している。

 くぅ、できた子を持つ親とはこのような心境だろうか。

 トンダとブランクを見て、私は彼らの先輩であることを誇らしく思えた。




 その後知った話だが、学院に入るには大層な金銭が必要らしい。

 その入学金はこの十年稼いだ中から、和尚がコツコツ貯めていたお金で払うのだと。


 トンダとブランクも実はいずれ私たちがここを出ることがあろうと考え、その資金をポケットマネーから積み立てていたそうだ。

 二人が同じことを考えていたのは偶然みたいだが、そのお金も入学金に入っていると聞いて、申し訳ないやらありがたいやら。


 いつか返さねばならない。

 倍がえ……

 いや、これはリベンジを誓う言葉だった。



 リーレイは仕方ない。

 なんせ彼女は自分のお金を持てているなんて、思いもしていなかったのだから。

 それにもし彼女がお金を差し出そうものなら、私のチェインコンボが炸裂していただろう。

 タイミング良くボタン押して通常攻撃繋げるやつ。




「ところでその学院とやらは、ここから通えるのですか?」

「そんなわけなかろう。エセーヌケ王国にあるのだから、歩けばここからひと月はかかるぞ。それに元々全寮制の学び舎であるし」

「え? それじゃあ……」


 それではここに残るのが和尚、トンダとブランクの三人だけになってしまうではないか。


「在学期間は……」

「通常は三年だ。すまんが色々手間取ったせいで、ミサは途中入学となってしまうのだが……」


 後輩は新入生として入学できるそうだが、私は二年生からスタートらしい。

 いや、そんなことはいい。前世では途中まで大学にも通っていたのだ。

 今更降って湧いたような就学話に文句があるわけもない。


 後輩は三年、私は二年もの間ここを留守にする。

 せめて何人か補充要員を確保した方が良いのではないか。



「何とでもなるから心配するな。それよりもしっかり学んで来てくれることこそが、拙僧たちの願いだ」


 結局私の心配は、そう和尚たちに諭されて置いていかれた。



 じゃあ、ここを離れる前にきっちりお片付けして、料理も奮発しちゃおうかな。



「あ、そう言えばあまり入学まで期間が無いから、急いで支度するようにな」


 ちょっとぉ!

これにて第一章終了です。文章の練習と思って主人公視点の物語に挑戦したわけですが、書きやすく感情も乗せやすいし、結構楽しいものでした。


 まだ先が見たい

 見てやってもいいぞ

 いいから完結させろよ


そう思っていただけた方は、ブックマークや評価などで応援してくださると筆者のやる気が出ます!



追伸

作中に筆者の少年期に楽しんだゲームや漫画のネタが散らばっています。投稿上の規則に抵触してはいけないと思い、かなりボカしたつもりです。それでも“あ、このネタは”と分かってくださった方は素敵なオタクではないでしょうか。ネタを懐かしんでいただけたら、それもまた嬉しいです。

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