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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第一章 路上格闘者編
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第三十話 合宿(後編)

 陸地でのデモンストレーション開始。


 私はわざと大きくサイドステップを踏んだ。

 その度に体がブレて左右の切り返しが遅くなる。


 次に上半身があまり動かないように、気をつけながらのサイドステップ。



 ここでシスターズに学んでほしいのは、合理的な体の使い方だ。

 私の動きを見て分かってくれただろうか。

 野生的な動きだけでは格ゲー世界では生き抜けないと。




 私の思いが通じたのか、シスターズは何とか反復横跳びをクリアすることができた。


 ほっと一息ついているところに水を差すようだが、次はちょっと難易度高いぞ。








 次の舞台は棒が一杯突き立っているような岩場。

 それぞれの棒の頂点は、踵が乗ればやっとと言う広さに調節されていて、高さは平均二メートル程度。


 はい、後輩お手本どうぞ。


「了解っす。じゃ、よく見てるっすよ。あと、観客は拍手と歓声を差し出すものすからね」


 強要するんじゃありません。




 後輩が踊っている。

 シスターズは魅了されたように見つめている。


 確かに後輩のダンスはレベルが高い。

 全ては可愛いを自らで体現するためだ。

 可愛さを追求するあまり修行が疎かになることはあるが、ダンスをしている限り私は咎めたことはない。

 ダンスキャラと言うのもアリだからである。


 モヒカンとか可愛いよ、って言えば騙されてくれるかな?




 踊り終えた。


「凄ーい!」

「カッコいい!」


 拍手と歓声が上がった。


「ん〜?」


 後輩は首を傾げている。

 思ってのと違うって?

 いいじゃん。

 手を振って応えてやりなよ。




「ふんぎゃ!」

「いった〜い!」


 棒の上でバランスを取り始めたシスターズは、面白いように落ちまくる。

 頭から落ちるような鈍臭い子たちではないので、ある程度放置。

 後で治療はしてあげる予定。


 ほらほら、落ちてもいいけど、しっかり受身とらなきゃ。


 棒から棒へと移り、時には一本に留まり……




 少し慣れてきた頃に終了。

 次のステージへと進む。

 青あざを治しながら移動。


 次は楽しいぞ。

 ボーナスステージだ。








 垂直に聳える岩壁に多くの穴が空いている所に来た。


「ここは? 何も無いみたいだけど」

「ノンノン。見てなさい」


 私は岩壁に近づいた。


「フシャーッ!」

「わっ!? 何か出た!」


 飛び出したのは細長い、蛇と鰐の合いの子みたいな魔物。

 ピシッと一撃与えるとすぐ引っ込む。

 で、またどこかの穴から飛び出して来る。


「な、なにコレ?」

「耐久力と回復力だけが異常に高い魔物だよ。弱過ぎる打撃だと引っ込まないから気をつけて。あ、迎撃に失敗すると噛みつかれるけど、大して痛くないから安心してよ」


 リーレイの言う通り。

 弱攻撃程度で引っ込む奴だ。


「へえ、面白そう。やってみようかな」


 ガブ


「痛ぁっ!!」



 大袈裟だなぁ。

 でも、噛むって言っても牙があるわけじゃなくて、口の中から電撃みたいなのが通ってくるんだよね。

 ドアノブ触って静電気でバチッてなったぐらいの衝撃があるかも。

 ほら、血も出てないでしょ?


「私はあれ苦手っすよ。くらうことは無いっすけど、バチッて来るかもと思うと腰は引けちゃうっすね」


 大丈夫大丈夫。

 噛まれる前に打つだけでいいんだから。



 ペシッ


 ガブ


 「痛ぁっ!!」



 だからリーレイが弱過ぎる打撃じゃダメだよ、って言ったでしょ。

 弱攻撃程度でもきっちり当てなきゃ。


 え?

 難しい?


 じゃあ穴を減らして九箇所だけにしとくか。


 土魔法で塞いでやると、もうそこからは出て来ない。



 ビシッ


 ヒュッ


 バシッ


 ヒュッ


 リズム良くやれるようになると、「もっと速く出て来い!」って急かしたくなってくるよ。



 シャッ


「きゃっ!」


 シャッ


「きゃっ!」


 ラーニャが横に後ろに身を避けながら、パンチキックで捌いている。


 これ、躱す訓練じゃないんですけど……

 あ、ほら、正面から体の中心を狙って来るのをそんな捌き方じゃ……


 ま、捌く訓練でもいいか。








 ボーナスステージ終了。

 楽しい時間を過ごしたはずなのに、シスターズの顔は緊張感溢れてる。


 うん、次はちょっと大変だからこれぐらいの緊張があった方が逆にいいかも。




 てことで次のステージへ。

 枯葉が敷き詰められたガサガサフカフカな場所。

 用意するのはレア装備品パートⅡ。


「この服は? 随分変わった質感だけど」


 光沢があり、厚めで、伸縮するスーツ上下。

 マリンスポーツとかのウェットスーツみたいな感じだろうか。


 早速ラーニャに着せてあげる。


「きゃ!」


 もちろんこれも自動サイズ調節機能付きです。


「へえ、重くはないんだ。ちょっと窮屈な感じだけど……って、きゃ!?」


 あ〜あ、説明を受ける前に動こうとするから。


「ブフーッ。あーっはっはは!!」


 ラーニャは前のめりに転び、リーレイは腹を抱えて笑っている。


「お姉ちゃん!」

「めんごめんご。それも変わったレアドロップなんだよ」


 このスーツも一着しか出てない。

 火、水、風、土の魔法ダメージを軽減してくれるハイパーアーマーだ。


「装着後は瞬間的に一定以上の力を加えないと伸びない、呪いの装備品っす」


 だから呪いじゃないんだよ!

 トンダとブランクがフーンすれば外せるんだから。



「まずは上半身だけにしとこっか」


 またすぐイージーモードに入る。

 妹たちに甘いんだよリーレイは。



「う、まあさっきよりはいいか、脚が自由なだけ。それで、何するの? 今から」


 ラーニャが探るような目付きをしている。

 心なしかそんな風に見えた。


「か〜んたん」


 リーレイは脚を振り上げ地面に落ちた枯葉を舞上げた。


「この葉っぱを十枚、地面に落ちる前に手で集めるだけだよ」


 そしてもう一度リーレイが葉っぱを蹴り上げて……


 ラーニャは一枚も取れずに立ち尽くしている。


「動けないんだけど?」

「だから言ったじゃん。瞬間的に一定以上の力を加えないと伸びないって。見てて」


 リーレイがスーツ下半身パーツを身につけた。


 ボッボッボッボッボッボッボッ


 ひと蹴り毎に蹴り脚を変えてリーレイがお手本を見せた。


「力を抜いて。突きとか蹴りの瞬間だけ爆発するように力を入れるのがコツなんだ」

「ふうん……ふっ!」


 お、そうそう。

 筋がいいぞ。


 動けることが分かったラーニャも笑顔で頷いている。


「おお、凄いじゃないすか。これ結構硬いっすから、コツが分かっただけじゃ動かないんすよ」

「えへへ。これでも結構鍛えてるんだ。でもホント硬いね。かなり強く打ってやっとだよ」


 弱攻撃無限連打には欠かせないから頑張れ。








「はぁ、はぁ」


 八枚八枚八枚九枚九枚九枚八枚九枚。

 もう一歩が遠い。




 小休憩を挟みラーニャは深呼吸をした。


「スー、ハー」


 そして全身脱力。

 カッと目を見開いて


 ズババババババッ



 彼女の手には十枚の葉っぱが収まっている。


「で、できたー!!」


「やったね!」

「おめでとう!」

「よし、じゃあ次行こう!」


「え、ちょ、もう限界……」




 もちろんこの後も合宿メニューは続いた。

 限界と思ってからが伸び代を引き上げる、ゴールデンタイムだよね。








 一日が終わってからは、十分な栄養と回復力強化魔法付きのマッサージサービス付き。


 三日間みっちりやるよ、と告げるとシスターズは涙目になった。

 感動しているのだろう。

 私はますますやる気になった。



「姉様は私が抑えるから安心するっす」

「本気出されちゃ、さすがに心配だからね」



 後輩とリーレイがカウンセリングとか言って、シスターズに何か言っている。

 弱いけど気にすんな、って言ってんのかな?








 何はともあれ三日間の強化合宿を無事終えた。

 私としてはあと三か月は最低欲しいが、シスターズはすっきりした顔を見せている。

 多少なりとも参考になったのなら、それは喜ばしいことだ。



「リーレイお姉ちゃん、やっぱりお姉ちゃんはいつも頑張ってたんだね」

「ううん。みんなを見て、私ももっと頑張らないとって改めて思ったよ」


 あんなに弱いんだから、リーレイがしっかりしないとね。



 リーレイとシスターズは抱き合って別れを惜しんだ。



 じゃあね。帰ってもしっかり鍛えるんだよ。

 冒険者稼業は程々に、堅実に働くんだよー。

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