表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第一章 路上格闘者編
3/138

第三話 教えて和尚様

 有名な言葉がある。


 “食べ物を粗末にするな”


 人の顔をしていようと鳥は鳥。

 ありがたく頂戴いたしましょう。




 ――と言うことで私は今ゴブシム和尚に申し出て解体を手伝わせてもらっている。


 家政婦と言えど解体から調理をするのは初めてだ。

 こっちを見るような人面鳥の目を見ないように、獲物に向き合う。



 和尚は大きなタライに獲物を載せて、解体に用いるには頼り無い小ぶりのナイフを持ち出した。


 首を落として血抜きとかじゃないのかな?


 疑問に思う私をよそに、和尚は獲物の首下から胸元辺りにナイフを突き入れる。


「うえっ!?」


 変な声出た。


 だって和尚ってばナイフごと手を突き入れて、ズボッて何か引っこ抜いたんだもの。


 それは鶉の卵位の大きさの、翡翠みたいな石だった。



「何、コレ……」

「うむ? 魔石を見るのは初めてか?」


 私の呟きを耳聡く拾った和尚が言う。

 魔石、あるんだ。


 でも私の思う魔石と違うかも。

 和尚に聞いてみよ。



 と、考えてたら――



「うわっ! 鳥が肉とクチバシになっちゃった!?」


 人面鳥がブロック肉に姿を変えた。


 推定五百グラムの肉塊二つ。

 手羽元無し。


 思わず口を突いた驚きの声に和尚が唸る。


「ううむ。魔石を知らねば魔物のドロップも知らぬは当然か? 一体どういう生活を……」


 言いかけて和尚は首を横に振った。


「その様子ではキャミィも知らぬな? では食事がてら教えようか」


 私は和尚に言われるままに後輩を呼びに行った。








「へえ、戦利品ドロップ式なんすね。グロ無しなら見に行けば良かったっす」


 調子良く軽口を叩く後輩。

 魔石と聞いてテンションが上がっているようだ。




 戻ると和尚は肉を鉄串に刺していた。


「おお、来たな。では見ていなさい」

「はいっす!」


 和尚は透き通った赤い石を取り出して私たちに見せてくれる。


「これは火の魔石だ。これに魔力を注ぐと熱を発する。火を付けるには便利な方法だろう」

「魔力! 魔法!」


 後輩の目はキラッキラに輝いている。


「言葉は知っているのだな。どうも知識に偏りがある子らよ」


 和尚が苦笑して独り言ちた。



 この世界で通用する知識じゃないと思うから、ちゃんと教えてもらわなきゃ。

 出しゃばる後輩を抑える私。



「魔法は個々人それぞれの得意属性のもの以外は使えないが、こうして魔石を使えば、弱いながらも魔石の属性に合った現象を起こせるのだ。これは火属性の魔石だから発熱するし、水属性の魔石なら水が出る。魔力は自前だぞ」

「はい! はい! 魔力はどうやって使うんすか!?」


 和尚への警戒は何処へやら。

 この後輩の張り切りようよ。


 和尚は鷹揚に頷く。


「ふむ。成長すればいずれ誰でも使えるようになるものだぞ。焦ることはあるまい」

「え〜、使いたいっすぅ! 教えて、和尚様!」

「むむ、だがそれには修行がな……」

「やるっす! っすよねえ、姉様!」


 こっちに振るなと言いたいが、これに関しては反対できない。

 もちろん私も使ってみたいのだ、魔法を。


「落ち着くのだ。修行をするからには半端はいかん。しばらく考える時間をやろう」


 う〜ん、しょうがない。

 絶対ダメと言われているわけではないし、ここは一旦和尚の言うとおりにしよう。


「じゃあ我慢するけど魔法見せてください」


 しかしながら言ってみた。


 後輩がニヤニヤして見てくる。

 くっ、少し待てば良かったか……どうせコイツも見たいって言っただろうに。



「分かった分かった。そう物欲しそうな目で見るでない」


 子どもに弱いっぽい和尚。

 ホント人は見かけに依らないって言うか。








 室内は危ないから外に出た。

 せっかくだからって串肉も持って。

 何がせっかくなのだろうか?




 和尚は枯葉や枯れ木を集めてお山を作った。


 そしてコオオォ、と波紋を練るが如き呼吸を繰り返す。


 そこからぁ

 大きく息を吸った和尚が少し胸を反らせぇ

 目を見開いてぇ――



(かあ)ーっ!」



 喝だカーッツ


 球界のご意見番を彷彿とさせる気合いが耳を打つ。


 尻を突き出し上体を前に傾けた和尚の口からは何と一塊の炎が!


 あ! なんか思い出しそう


 って、勢いが良すぎて枯れ枝の山を吹き飛ばしちゃったよ。




 慌てて消火する内に繋がりかけた何かまで飛ばされたようで、スッキリしない気持ちを抱えた。

 むむむ、そこまで出かかってたのだけど。




「いやはや、すまんすまん。やはり魔石に頼った方が良さそうだ」


 和尚が照れ隠しで話しかけてきて、じっくり思い出す時間を与えてくれない。


「拙僧は火の属性と無属性に適正が強いのだ。拙僧と言うか、火はゴブリン全般に言えることだがな」


 種族ごとに適正があるのかね?


「お主たち凡人種はほとんどの基本属性に適正があるはずだ」

「よっしゃあっす!」

「その代わりにどの属性も弱いらしいがの」

「ショボンヌっす!」


 ふむふむ、個人差はあるけどやはり種族的な属性適正があると。



 そして和尚は語る。


 この世には火・水・風・土・光・闇・無の七属性を基本に、幾つもの未解明の属性があるって。


「おぉ、特別な属性って良さげな響きっす」


 能天気か。

 それが特異属性だわ。

 ピヨリ値にプラス補正。


 おっと、思いがけず強能力になってしまった。

 後輩にはもったいないね。



「それも才能ある者が果て無き修行を経て開眼するのだ。憧れだけでは手は届かぬぞ」


 苦笑する和尚はそそくさと枯れ枝を集め直して魔石で火を付けた。


 人面鳥のドロップ肉の焼ける香ばしい匂いが鼻をくすぐる。


 おえっ。


 不覚にもあの半端な人面を思い返してしまった。

 いかんいかん、せっかくの食事に雑念は無用である。

 無念無想で、「いただきます」。




 あら美味しい。


 軍鶏のような引き締まった肉質に、味にはコクがある。

 あと塩もかけてないのにこの絶妙な塩加減は……


 オエッ、汗かいて塩噴いたオッサン鳥を想像してしまった。



「美味いのか不味いのか、よく分からん不思議な表情をして食べるの。お主は」


 和尚に怪訝な目で見られてしまった。


「おいしいです!」


 悔しいです! みたいな言い方になっちゃったじゃん。

 俯いて小刻みに震えてる後輩は後でシバく。




 和尚にはその後なんとか、食事に満足した私の本心を分かってもらった。

 そう言えば和尚って生臭OKだったのかね?


「魔物の肉は天の恵み故に良いのだ」


 ふうん。

 やっぱり普通の獣はダメなんだって。








 食事の後片付けをしながら色々質問は続けますよ。

 魔法は見せてもらったけど、そもそも魔力って言ってたじゃん。

 それってどこから来るんだろ?


「ウムム、子どもの疑問は難しいものだ」


 あらら、和尚もその辺りの知識は無いらしい。

 と言うか、気にする人は殆どいないってさ。

 呼吸をするように魔力を練るものだって。


「魔石に触れたことも無ければ魔力の自覚も無いか。考えてみたら、そういうものかもしれん」


 和尚は私たちに青いビー玉をくれた。

 これ魔石ですよね?


「それを握ってなさい。やがて水の滴る時が来るだろう。その時に体を巡る感覚をよく覚えておくのだ」


 魔力が発生したらこの水属性の魔石を通して水が発生するみたい。

 検知器扱いされる魔石の切なさよ。


「りん! ぴょう! とう! しゃ! ……」


 手を上下にずらして握り、人差し指を立てた忍々ポーズを取って九字を唱える後輩。

 意味を知らないコイツが唱えてもただの怪しい呪文である。


 和尚は「やがて時が来る」って言ってんだから待ってればいいでしょうに。

 魔法が使えれば元の世界に帰れるって言うなら頑張るけど。


 ――いや、元の世界戻っても体はグシャグシャだよね。

 死んだはずみで転生したんだろうし。


 ふと、未練が心を吹き抜ける。

 あ〜あ、せっかくの夢の家が。

 メゾン格ゲーでの生活が……


 ぐすん。

 泣きそうになるのをズボンの位置を直すことでごまかそう。

 もぞもぞもぞもぞ。

 拭いきれぬ悲しみを収めるようにズボンをいじっていると――




「あ! お漏らし!? やだもう姉様ったら!」


 気づいたらお股付近がジワッと濡れていた。


「ち、違っ……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ