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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第一章 路上格闘者編
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第二十五話 気合いだ!

 リーレイ加入から一月経過。

 彼女にもようやく魔法に着手できるぐらいの余裕が出てきた。



「私の属性? 風はあるんだけど」


 ハーピーらしい属性だね。

 でもそれだけ?

 チンピラリーダー蹴り飛ばした時、なんか出てたじゃん。

 オーラ的なやつ。


「ふむ、それをもう一度やって見せてもらえるか、リーレイ」

「あ、はい」


 和尚は何か心当たりがあるのだろうか。

 真剣な顔で観察する体勢を取った。




 トントン、とリーレイは軽やかなステップを踏む。

 手の力は抜き胸の前付近でブラブラさせている。


 だからそれは


 「ホー、ワッチャー!」


 キャラが違うでしょ……



 あの時と同じような蹴りが空気を裂いた。


 う〜ん、でも何も出てないぞ?

 オーラはどこ行った。

 迫力もあの時の方があったぐらいだ。


 修行の成果も出ないなんて、ちょっとじゃなく寂しいぞ。



「あれぇ? なんか違うなぁ」


 なんか違うらしい。


「その時は、どんな気持ちだったのだ?」


 和尚の質問にリーレイがモジモジしている。

 何、その恥ずかしがってるような仕草。



「え、と。みんなが私のこと助けに来てくれてぇ、すごくドキドキしてぇ」


 内股でクネクネするんじゃないよ。

 まさか恋属性なんて言わないよね?


「私にもできる気がしてぇ、その気になってぇ、気合い入れてみたらぁ」


 イラッ


「すっごい体に力が漲ってきたん」

「なるほど」


 ほら、和尚もかぶせ気味に話してきた。



 で、何がなるほどなんですか、和尚。


「お主の属性は“気”じゃな」

「き?」

「気力、気合いの“気”のことだ」


 気って、属性、それ?

 なんて言うか、魔力とか魔法とは別種のパワーなんじゃないんですか。


「ええ〜、属性なんすかぁ? 『はああああっ!』って力入れたらオーラがボッて出て、戦闘力が上がるんじゃないんすか?」


 ほら、後輩も同じイメージ持ってる。


「お主とミサは時々意味不明な観念を持ち出すな?」


 すいません。

 育ちのせいです。

 メディアが悪いんです。


「違うんすか」

「これは基本七属性ではないが、比較的有名な属性なのだ。無属性に近いとも、その亜種とも言われておるな」


 ふむ?


「無属性に近いゆえ、素質があるものは時々現れる。その性質は、体の力を集中、分散させることだそうだ」


 体力を操作するってこと?

 それ別に気属性の魔法必要なくない?


「代表的な使い方は体を硬化させたり、受けた攻撃を分散させたり。リーレイの蹴りは集中と、もしかしたら放出も加わったのやもしれんな」


 ほほう! 近接戦闘で威力を発揮できそうですな!




 はっ!

 天啓のように以前後輩が言った防御法を思いした。


「答えはズバリ――地面に衝撃を逃がす! これっすよ」


 とかなんとか。



 衝撃を逃がす……集中と分散、分散……




 後輩、トンダ、ブランクが静かに後ろへ下がって行く。


「え? あ、まさか!」


 何かに気づいて後退しようとするリーレイをガッ、と掴んで引き止めた。


「まだ甘いっすね」

「変化を敏感に察知して迅速に動くべし」

「俺、後で教えてやる。空気がピリッとしてくるから、気をつけろって」


「いやぁ! 見捨てないでえ!」



 何を騒いでいるのやら。

 防御の実験ではないか。

 もし成功すれば格ゲー化への道がまた一歩近づくのだから、光栄に思ってほしいぐらいだ。


 それにやってもらうのは簡単なこと。

 私の攻撃を受けてもらう。

 たったこれだけだ。



「あれは『たったこれだけだ』なんて思ってる顔っすよ」

「我は弱パンチ無限連打とか言うのに付き合わされたぞ」

「俺なんかその無限連打を延々受けさせられた。あの後しばらく、腕に変なチクチクする感じ残ってた」

「マジおかしいっすからね。三時間ぐらいずっとパンチ連打できるんじゃないすか?」


「ひいっ!」


 リーレイの顔が青褪める。


「何バカなことを」

「そ、そうだよね!?」

「弱パンチだったら半日ぐらい連打できるに決まってるじゃない。時間無制限ラウンドだったらどうすんの」

「い、意味が分からないんだけどっ!?」


 実践する暇は無いけど、今ならそれぐらいは可能だと思う。


 もちろん今回の試行も有限の時間内でのことである。

 それに、私の考える防御をリーレイが成功させればその時点で終わって良いのだ。

 ほんの数分で済むかもしれない。



「じゃあ、気属性で私の攻撃の威力をしっかり分散させてね」

「ど、どうやって」

「頑張って」

「やだぁ!」








 ピシピシピシピシピシピシピシピシ


 それじゃあ腕で受け止めてるだけだよ。


 ピシピシピシピシピシピシピシピシ


 ほら、しっかり


 ピシピシピシピシピシピシピシピシ


「これが罰、なのかな」


 ピシピシピシピシピシピシピシピシ


「う、腕が上がらなくなって……」


 ピシピシピシピシピシピシピシピシ


「なんか、気が遠く……」


 ピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシピシ

「お姉ちゃん頑張って!」



「……はっ! あ、あんたたち?」


 リーレイシスター&ブラザーズじゃないの。

 珍しい、見学に来たのかな。


 ん? 和尚……

 和尚に連れて来られたのか。

 集中が乱れなきゃいいけど。

 いや、むしろ分散のきっかけに?



「おねーえちゃん! おねーえちゃん」


 懸命なシスターズたちの声援が微笑ましい。


「こ、こんな情け無い姿……」


 おや、リーレイの目が


「がーんばれ! がーんばれ!」

「そんなじーっと……」


 ぐるぐる回って


「お姉ちゃーーん!!」

「見ないでーっ!!!」


 おわっ! 急に妙な圧力が来た!

 ぶわっと。


 ここだ!

 ここで決めるんだ!



 私はリーレイから謎圧力を受け、逆に、突き動かされるように渾身の中パンチをお見舞いした。


 バシッ


 リーレイの腕から私の拳に伝わって来たのは、飛沫(しぶき)が上がるような感覚。


 弱パンチで悲鳴を上げていた彼女の腕は……


 ビクともしていない。




「お?」

「おっ」

「おおっ!」


 後輩たちも変化を察したようだ。

 そんな遠くで見てないで近くに来なよ。


「うむ、これが気属性か。見事」

「リーレイお姉ちゃんすごーい!」

「やったね!」


「や、やったの? ……ありがとう、みんな」


 ふふふ


「こっからっすよ」

「油断すると酷い目に遭うからな」



 何を言ってるやら。

 私とて力無く下げられたリーレイの腕を見て、これ以上を望もうとは思ってない。


 一歩踏み出す私を見て、ビクッと身を硬くするリーレイの腕を取り、私は回復魔法を使い始めた。


 回復魔法は苦手だけど、時間がかかってもいいのだ。

 その分聞き取りができるから。


 と言うわけで、ここからは気属性発動の要領を明らかにする時間である。


「休ませるようで休ませない、さすが姉様っす」

「まだ今回はマシだと思う」

「今日は少し、リーレイを労ってやるか」


 ……








 聞き取り完了。


 手本無く使う魔法だから、感覚的な所に頼りがちなのはどうしようもない。

 もう一度小パンチ無限連打が必要かと考えていると、私の思いが通じたのか、リーレイは一生懸命に思い出し言葉にしてくれた。




 生命の危機を感じて、恐怖か興奮かよく分からない思いに襲われた。

 一時期何も考えられなくなった。

 シスターズたちの声援に感動した。

 そんな感情がごちゃ混ぜになって、グルグルにかき回された。

 そして、これ以上打たれ続けるだけの無様な姿を見られたくないと、恥ずかしさが破裂した。


 その結果、あの境地に至った、と。




 はっきり言ってよく分からんけど、私は彼女の言葉を正確に記憶に留めた。








「何、気属性を使えるようになりたい?」

「はい和尚。私の祈りをより強くするには欠かせないものと判断しました」


「なるほど、祈りに、か」



 翌日、私は気属性の習得をせんと和尚に相談していた。



「いかんせん拙僧が使えぬ属性をどう教えれば良いやら」

「しかし無属性は誰でも使えるはずです。それに近いならば必ず道はあるものと存じます。何かヒントでも、ご存知ありませんか」


 すいません和尚。

 でも格ゲー世界の実現には欠かせないのです。


 和尚は考えている。


「拙僧が知っておる気属性の使い手は、皆鍛えられた精神と肉体を誇っていた。彼らの気属性の才能が如何程かは分からぬが、その辺りに光明が見出せるかもしれんな」


 リーレイは飛び抜けて気属性の才能があったと言うことか。


「しかしお主の言うとおり、誰にでも使える可能性があるならば、研究せぬわけにはいかんな」


 和尚……


「よし、皆で試みてみようではないか。もちろん鍛えるために、今まで以上に修行に励まねばならんぞ」


「……! はい、和尚!」

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