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メゾン格ゲー  作者: みおま ウス
第三章 勇者死すべし! 編
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第二十五話 聖地

「ほら、いたっす」


 キャミィが豆粒のようにしか見えない遠くの何かを指して言った。


「ミサもとうに気付いているようだな。立ち止まり我らを待っている」


「人なの?」

「それがしはボンヤリと……三人ぐらいの人っぽいものがいるような……」



 ダチョボに乗った七人が豆粒に近づく。


「あ、向こうから手を振ってるわ!」

「二人とダチョボだな、ありゃ」


 七人を待ち構えていた二人は、少女と老夫だった。

 良く見ると少女の肩には小さなドラゴンが乗っている。

 少女は左掌に右拳を当て、恭しく礼を取った。


「和尚、探しましたよ」

「クワ!」

「姉様! おまけにレベッカ! 」こっちこそ探したんすから!」

「ミサ、迷惑をかけたな。拙僧はこのとおり無事だ」

「クワクワ!」


 良かった、と微笑む少女を見て、カッツォとサジは身を捩り震えた。


「キレイ系お姉さん!」

「ミサちゃんと姉妹! 可愛い妹とキレイなお姉ちゃんて!」


 ローラは唇を噛んで震えている。


「美人姉妹……! それにチビドラゴン! マスコットまでいるなんて……うう、なんか悔しいわ」



「これはこれはルケア助祭。久しぶりじゃの」

「き、教皇様……ご無事、だったのですか?」

「ふむふむ? 無事じゃがどうかしたかの?」


 前から後ろから体をジロジロと見つめるルケアのことが不思議で、教皇は首を傾げた。

 そして彼女から事情を聞くと、教皇は額を手で叩き天を仰いだ。


「それはそれは、ちゃんと神の下へ参ると言って出たのじゃがの」

「ほら言ったとおりじゃないですか、誤解されるって」

「すまんすまん、ミサ殿が指名手配されてしまうのう」

「いえ、もう和尚……探していた方と会えました。後は神様とお話して帰るだけなので心配御無用です」


 ミサと呼ばれた少女は表情を動かさずに答えた。


「そうかのう? いやいや、無論儂も誤解を解くよう全力を尽くすがの」


 丁寧なミサの態度と彼女を気遣う教皇の態度で、兵士たちが心配するような害は教皇に及んでいないとルケアは思った。

 それにしてもミサを下にも置かぬ教皇の態度はどうしたものか。


「あの教皇様、神様とお話とか……一体その方と何をなさろうと?」

「ボクも思ったっす。姉様、お話って何すか? O・HA・NA・SHIっすか?」


 ミサは何か答えようとする教皇を手で制し、キャミィに冷めた目を向けた。


「違う時代にまで来て何わけ分かんないこと言ってんの。説明する時間がもったいないから、ついて来なさい」

「違う時代……その可能性はあると思ってたっすけど。姉様はどこまで知ってんすか」

「良い、キャミィ。何やら急がねばならん理由がありそうだ。黙ってミサに従おうぞ」

「さすが和尚、話が早くて助かります」


 ミサと教皇を加えた一行は、教皇の案内に従い進んだ。








 しかし、行った先には大河が広がっているだけだ。

 その向こうは凡人種以外――魔族と呼んでいた者たち――の土地で、大河には境界の三魔像の一体が居て渡れないはずである。


「泳ぐんですか?」

「ふぉふぉふぉ、すぐ分かる。ついて来なさい」



 大河に至る数百メートル手前に、石を積んで作った祠のようなものがあった。

 祠と思われたものの中は、大河の方へと向かう下り坂になっている。

 そこは九人が横に並んでも余裕がある広い幅に、高い天井の通路だ。

 そして満月の下ほどに明るく、鉱山を進んだ時のように魔法で照らさなくとも良かった。




 今は坂を進み既に大河の真下に差し掛かっている辺りだ。

 それなのに水は少しも無く、澱みの無い清浄な空気を感じる。



 やがて目の前には通路を塞ぐように巨大な建物が見えてきた。


「寺院……?」


 ミサ、キャミィ、ゴブシムが声を揃えて言った。


「聖地じゃよ。この中に御神像が御座してらっしゃるのじゃ」


「ここが、聖地」

「ルケア、知らなかったんだ」

「司教になれば聖地で洗礼を受けられるはずなんですが、それまでは神の碑文の前での洗礼なんです」


 どこか見覚えのある建物を思い浮かべる者、神聖な気を感じて感動と共に神との邂逅を夢見る者、そして。


「神様とのご対面かぁ。僕らがバトルするにはレベルが足りなさ過ぎるよね……」

「潜在能力の解放とか」

「願いを叶えてくれるとか」


 本懐そっちのけで自由な想像を巡らせている者たち、とが、建物の前に立った。



 屋根や外壁は通路と一体化している。

 埋まっていると言っても良い。


 建物内に入ると、そこには様々な神仏像、十字架や曼荼羅布などの宗教的象徴具が存在していた。

 宙に浮かび、或いは下半身など体の一部を壁に埋めた状態の物もある。


「カオスっすね」

「ふむむ? 以前までとは様相が異なるのう。これまでは燭台がほの明るいだけの何も無い空間じゃったが……」


 勇者たち異世界組は、教皇の言う変化の原因を察した。

 恐らくは自分たちの宗教観が反映されているのではないかと。

 無宗教だが無神論者ではない故の、この空間の混沌さだろうと。


 ミサとキャミィも同様のことを考えてはいる。

 だが、彼女らの観念が反映されているのなら、ここに闘神像が無い理由が分からない。

 彼女たちは首を傾げつつも、深くは考えずに前を見た。


 視線の先には巨人が手を上げても入れる程の大きな門がある。


「はて、あの門はあんなに大きかったかのう?」

「ここホントに聖地で合ってます?」

「ふうむ……」

「不安になるんですけど!?」


 教皇の記憶にあるあの門の大きさは、平均的な成人男性の身長程度だった。

 あまりにも違い過ぎて、ここが同じ場所だと断言できなくなってしまった。


「あの意味ありげにバカでかい門が、神の祀られた間ってことっすね?」

「う、うむ……」



「あ、重いよ、この門」


 カッツォが門に手を添えている。

 サジとローラも彼の横に並び、重さを確かめようと門を押した。

 だが門はびくともしない。



「これは、本当に開くのか……!」


 ブダゴルラが加わり、全力を出しても変わらなかった。



「ボクはパワータイプじゃないんすけどね」


 渋々とキャミィが押すメンバーに加わろうと近づく。

 彼女が門を押す体勢を作り、いざ力を加えようとしたところ――


「うわぁ!」


 門は独りでに開き、キャミィは肩透かしを食って門の内側へとたたらを踏んだ。


「と、と、と……って、何すかみんな。手の込んだ引っ掛けして」


 力を入れるフリだけで、門を押していなかったのではと、軽いイタズラをされたのだとキャミィは思った。


「何すか、揃ってポカンとして」


 しかしながらブダゴルラ、カッツォたちは僅かに顔を上げ目を瞠っている。


 ミサが歩いて来た。


「どうしたんすか姉様、恐い顔して」

「見てみなさい」


 肩に手を添えられ体の向きを変えたキャミィは見た。


 二本の腕を組み、もう二本の腕を天地に構えた四本腕の巨像がある。

 地面から出ているのは膝から上。

 全身に甲冑を纏っており頭頂部は天井に付いている。

 背面は奥の壁に埋もれているのか、見られるのは前面だけだ。

 顔も大部分を兜が覆っているが、僅かな隙間から見える目は厳しく、門の前の来客を睥睨している。



「と、と、闘神像!? 神様って、大地闘神だったんすか!?」

「大地闘神なのか、と問われると確信を以て肯定はできん……が」

「大地闘神とどこか繋がっているような気を感じます。行きましょう和尚」


 キャミィ、ゴブシム、ミサは堂々と神像の方へと歩く。



「こ、これが神様の像?」

「像とは思えない、生々しさ、だね」

「動き出さないよな……」


 ローラ、カッツォ、サジは神像の手や目に注意を払って慎重に歩く。



「これは、それがし共の神と同じ……?」

「こちらが、神様。何と威厳に満ちたお姿……」


 ブダゴルラ、ルケアは畏れを胸に神の下へと向かう。



「……」


 教皇は一人、背後の壁画を見た後、向き直り前へと進んだ。

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