栞
君とのおしゃべりが楽しいけれど、いつまで続くのかな。
君はクラスの人気者で、僕はぼっち。
なんで、僕なんかと付き合ってくれるのか分からない。
そのせいで、クラスのリア充にいじめを受けたこともある。
フルシカトしてたら、校舎の裏に呼び出しって、いつの時代だよ。
僕は、ぼっちだ。そんな僕が、君といていいのだろうか?
気さくに話しかけてくれるのは嬉しい。
友達だった頃のことを、思い出して見る。
「優しくてかわいいと、好きになってしまうから。構わないでくれないか」
ある日、そんなことを君に伝えたら、悲しげに微笑んで、一冊の本を渡された。
「これ、読んでみてね」
渡されたのは、古い恋愛小説で、栞の挟んでるページを捲ってみると、女性が、男性に告白するシーンだ。
それが、どうしたのか、よくわからなかったので、関わらないでくれと言った手前、次の日聞いてみた。
「……それは、私の告白だよ。友達じゃないけど、側にいてあげるって意味だよー、恥ずかしいなー」
ひとしきり恥ずかしがった後君は、頬を赤くして僕を見る。
「……で、あなたはどうなの?」
「僕も、好きだよ」
考えるまでもない。憧れていたんだから。
こうして、付き合うことになったんだ。
「…別れよっか?」
「いやー、別れてやんない」
自信のない僕とは裏腹に、君の笑顔は、自信満々で僕の言葉に、傷つかない…訳は無いだろうけど。
「自信の無いからの別れはしない。あなたが私を好きでいる限り」
君と別れられない。
君との出会いは、桜も散って、若葉がきらめく頃だった。
高校に行く途中。前を歩く君が、なんか歩き方変だなと、女子と話すのが苦手だけど、声をかけた。
「靴擦れ起こしたみたいー」
君はそう言って苦笑しながら、ひょこひょこ歩くので、無言で肩を貸した。
「え?え?いいよ!」
「…いいから」
引かれたらそれならそれでいい。
でも君は、そっと身体をあずけて、ありがとうと言う。
君を助けたのも、校内で見かける君に恋をしていたから。
二年に上がり、君と同じクラスになって、僕がぼっちとしって、君は驚いたよね。
あの時の行動力が、印象深かったこらかな?
「これからよろしくね」
「こちらこそ」
あの時の笑顔を見て、可愛いなと思い、君は僕に、よく話しかけるようになった。
「どうして、いつも一人でいるの?」
ある日の帰り道、たまには一緒に帰ろうと言われ、ドキッとした。
誰とでも仲が良いから君にとっては普通なんだろう。
「……昔から、すぐに下に見られることがあって、めんどくさいんだ」
あの頃は独りになりたくなくて、そう言う奴等と、無理して関わっていた。下に見たり、いじったりしない奴と関われば良かったんだろうけど。そう言うちゃんとしてる人たちには、コンプレックスを感じて関わらなかったのかもしれない。
「ふーん。遠回りしたんだね」
「遠回り?」
「そ。遠回り。遠回りして私と出会ったんだね」
「言ってて、恥ずかしいよね?」
「うるさーい!ともかく私とは友だちなんだからね!よろしくー」
そう言って、にこにこする君と果たして、友達でいられるだろうか?案の定だったけど。
君のお陰で、ぼっちには変わらないし、同性に対しては、めんどくさいとは思うけど、君といて、楽しい時間を過ごせてる訳だし。
「ねえ、栞」
「なあに?」
「僕も、別れてやんない」
「えー?男が言うと、なんかこわーい!」
そう言ってクスクス笑う君の隣に、もっといれたらいいなと思う。
本に挟む栞のように……なんちゃって。