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君と僕の物語  作者: かずねこ
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雨のいた世界

みんなには、大切な出会いはあるだろうか?




僕にはある。それが悲しさを含む出会いだとしてもその出会いがあったから僕は進めたんだ。




冬のあの日。街は馬鹿みたいにクリスマスにメイクして君の歌声がこの街に響いていたあの日。

それに気づいていたのは僕だけだった。





君はいつも窓際の席で過ごしてる。綺麗で静けさを纏った君は、誰からも話しかけられることなく孤立している。



僕が話しかければ困ったように微笑み、だけど静かに話し相手になってくれる。

周りからは変な目で見られる。

しかし、気にしない。君のお陰で僕の人生は光を得た。

こんな恥ずかしいことは口には出せないし、君にも言わない。




「……晴矢。お願いだから私に話しかけないで」

ある日君は困ったように。けどはっきりと僕に伝えた。

それは、決意が込められていて僕は怯む。

怯むけれど変えることもない。


「なんで?僕は君に感謝してるんだよ。君と友達にはなれない?」

ホントは付き合いたいけど、まずはちゃんと友達として。そう思ってる。

「…なれないよ。晴矢は私に構わない方がいい。今を生きてほしい」

君は、そう言うと静かに廊下へと出ていった。

クラスメイトの目が変な者を見るような視線だけど僕はもう慣れた。



廊下へ出ると君の姿はもう見えなかった。

「……雨。どこへ言ったんだ」




君の名前は雨。梅雨の日に僕は君が駅前で歌ってるのを見かけた。

その歌は優しく僕の心に響いて彩りを与えてくれた。


だから、毎日のように聴きに来た。それが僕の救いだった。

クラスメイトのリア充どもにいじめを受けて教師も見て見ぬふり。

そんな世の中に絶望してふらふらしてる時に君に出会ったから。



だからびっくりしたんだ。雨が同じクラスの女の子で。いつもは目立たずひっそりと過ごしてることに気づいたのは。


君はいじめを受けてる訳ではないのに何故かクラスでいないように扱われていた。


なので僕は普通に話しかけたら君はびっくりしていた。


「……あなた、私が見えるの?」

「変なこと聞くね。見えるよこの前駅前で歌ってたよね?それが素敵だったから礼を言いたくて」

君はすると少し照れたけど、すぐに悲しそうにうつむいた。


「そう。あなた私の歌に惚れたのね?毎日寝る前に耳元で囁いてほしいくらいに。私の歌は誰にも届かないと思ってた」

「そう?あんなに綺麗な歌声なのに。だ~れもギャラリーがいなかったのが不思議だった。後、耳元で囁いたら昇天しちゃうから止めてくれ」

「ねんねころりよ~おころ~りよ♪」

君がふざけるものだから、ギャップに吹き出す僕を見て周りは変な者を見るような感じだ。

ほんとに不思議だった。デビューしててもおかしくないのびやかで人に寄り添うような歌声。

なのに通行人はなにをそんなにせかせかしてるのか、立ち止まらないで通りすぎるばかり。




ともかくそれをきっかけに君と話し出してからはクラスのリア充が絡んできても、君の歌があるから僕は勇気を出して反発するようになった。

それ以来リア充どもがうざがらみいじめはなくなったが、周りのクラスメイトも関わらなくなった。リア充になにか言われてるのだろう。



ともかく周りに君のことを聞いても変な顔をされる。鬼気迫る思いで聞いたらそんな子は存在しない。お前が頭がおかしくなったんだと言われた。先生に聞いても知らないと言われた。



そんな馬鹿なと思った。確かに君はそこに存在するのに他の人には見えないと言うのか?


それとも物語でたまに登場したイマジナリーフレンドと言う奴かとも思ったがそうでもないみたい。



君が学校に来なくなったのでどこにいるのか?

いるとすればあそこだ。駅前だと思った。

海岸通りを駆けながら君のことを考える。

そこまで長く一緒に過ごした訳でもないけれど、君を街で見つけた時から、君の歌を聴くのが楽しみだった。


一緒に帰路につけるだけでも楽しかった。

夕焼け空の下で海を見て二人で黄昏てるのも幸せだった。

そうだな。気づかぬふりをしていたけど君のことが好きなんだ。



駅前広場には舞台とストリートピアノがあり、市長が夢のある者がパフォーマンス出来るように設置したのだと言う。


そこで歌う人はいたけど、君じゃない。だけど君に似た容姿で君があの日歌っていたあの歌だった。



「……あの」

その人が歌い終わり僕は話しかけたものの、どう話していいか迷っていると。

「こんにちわ。もしかして私のマイナーなファン?」

君に似たその人は君と違いロングヘアで背も高い。性格もどちらかと言うと明るい感じだけど、君に似ている。


「……その歌、前にも聴いたことあるんですけど」

「……ああ、妹のファンなのかな?ありがとう。あの娘も喜んでるよ」

その人は一瞬悲しそうにした後笑顔で答えてくれた。


「あの。雨は、歌わないんですか?」

「……え?そっか、あの子はもういないの」

一年前に交通事故で亡くなったと言う。

それ以来この人、雨のお姉さんは雨の変わりに月命日に歌っているという。


「……そうですか」

僕は呆然としていたが、なんとか会釈するとその場を後にした。

のろのろと歩いてる内に海へとついていた。

冬の海岸は寒い。風に揺れて波もせわしない。

しかし、気にならない。雨がいないことに比べれば。


考えないようにしていたが

幽霊なのか?

だとしても何故僕にだけ見れるのだろうか?




どれくらい経っただろうか。いつの間にか宵闇が世界を支配していて空は静かに星が瞬いていた。

冬の夜の海は寒くて心から冷え込む。

ここにいても仕方ない。帰ろうと踵を返そうとしたら君がいた。


「……雨」

「やあ。そんなに私が恋しくて探してくれたの?ありがたいことです」

君は悲しそうに、だけどおどけるように澄んだ声で呟いた。


「……君は幽霊なの?」

「うーん。ちょっと違うかな?私、生きてるの」


「でも、君のお姉さんは君が交通事故で……」

「……そう。こっちの世界の私はもういないみたい」

「……?」

こっちの世界の私はいない?なんだ?こんな真面目な時にふざけてるのか?

「あ、ふざけてないよ。私はもう一つの世界線から来たの」

「いや、それこそドラマや漫画みたいなこと……」

言いかけて口をつぐむ。雨がこんな時までふざけたりしないか。

でもそんなことあり得るのか?


「あのね?こっちの世界の私は、交通事故で失ってるけど、私のいた世界では私は普通に生きてるの。歌手として」

もう一度言い聞かせるようにゆっくりと話す。


「それは、おめでとう……だとしてなんで君はここにいるんだ?」

「ありがとう……うん。私はあなたに……晴矢に会いに来たの」

「……僕に?向こうにもいるんだよね?」

雨の言うこっちの世界だのがホントならわざわざこっちの僕に会いに来なくても言いと思うんだ。


「いたよ。だけど私が高校に上がる前に交通事故で亡くなったんだ」

それを聴いて雨は、悲しそうに顔を伏せる。

こんな時、なんて言えばいいんだろう。君がこっちの世界にいないのに別の世界で生きてるなんて。

悲しい気持ちもまだ実感がわかない。

君はまだそこにいるのだから。

だけど、今の僕に出きるのはこれだ。


僕は、雨に近寄ると抱きしめた。


「……会えてよかった。ずっと言いたかった。好きだ」

「……私も…だよぉ」

雨は声を震わせながら僕を強く抱きしめてくれる。

君はきっといなくなる。この世界の君でないなら。

それでも今、君を抱きしめることは出きる。想いも伝えられる。

悲しみも叫びも、後で一人ですればいい。

それが、いつもの僕の行動で。伝えよう君に。



「雨、ありがとう。君の歌を聴いて僕は生きれるようになった」

「……私が消えても前を向いてね」

「……出来ないかも知れないけど、君の歌は忘れないよ」

「なにそれ、頼りないなー」

「なら、行かないでくれ」

「駄目だよ。私はもう帰らないと。ここは私のいる場所じゃないから」

「……いやだよ、いやだよ、雨」

「……うん、私もいや」



君との久々のやりとりは唐突に終わりを迎えた。

聴こえるのは冬の波音だけで、君のぬくもりも、最初からなかったみたいに。




あれから僕は、雨の歌を聴きながら日々をなんとか歩いてる。

世界は彩りを持って輝いている。

君が教えてくれたものだよ。




おしまい

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