52/52
振り回す人
あいつは、なんでそんなに僕を、傷つけるんだ。
こっちの気持ちを知りながらも、男をとっかえひっかえして。
君は彼氏の話しばかりだ。もうやめてほしいんだけど。
大学の講義で、たまたま隣に座ったのが運のツキ?
君に一目惚れしたのが間違いだった。
こっちの気持ちに曖昧に答えるだけで、君はすぐに彼氏を変えている。
そんな日が続いてもう僕は、君といるのが嫌になった。辛い片思いはもうしたくない。
「もう、君とは関わらないから」
ある日、君を呼び出して伝えた日。飲んだコーヒーが、やたらと苦かったのを覚えてる。
「そうしよう。私もなにも言わない人とはいたくない」
君は、悲しそうに微笑んだ。僕に対する嫌がらせじゃなかったんだ。
僕だけが辛いんじゃなかったのか。行動しない僕も君を傷つけていたのか。
店内に流れるクラシックが、胸を締め付ける。
コーヒーの味が余計に苦く感じる。
「さよなら」
「さよならの前にもう一杯どうかな?」
立ち上がり去ろうとする君を、呼び止める。
君の言葉に重ねて僕は勇気を振り絞る。
君は座り直して笑う。
「じゃあ、このお高いパフェをご馳走してもらおうかな?」
「うげっ!」
あの日以来、君とは上手く続いている。
君は僕の気を引きたくて、他の男に逃げることもなくなった。
コーヒーを飲む度あの日のことを思い出す。




