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君と僕の物語  作者: かずねこ
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お彼岸

私は今帰省中である。特に理由はない。あるとすれば、母と過ごした田舎を懐かしく思い見たくなったからか。丁度三連休だしね。


車窓を流れる景色は人生のように速い。起きて朝かーと思いきや、すぐに夜である。人間何が楽しくて生きてるのやら。

持ってきていた文庫本を読み終わりそんなことを思考したりする。


新幹線の車内は、時期外れとあって家族連れの帰省はほぼいない。

社畜ばかりである。いや、私もだけど。

でも、彼等、彼女よりは自由かもしれない。

好きなことをする。はっきり伝えることにより、もれなく私はぼっち。

家族は既に他界しているからだ。


終点の新潟に着くと、東京と一気に空気が変わる。

重たい空気が爽やかになる。いや、まだ寒いか。それよりも乗り換えのために移動する。

ホームに電車が止まっているのでボタン押して乗り込むのは地方ならでは。


すごい揺れに懐かしさを覚えて発車するまで待つ。

車内で会話する学生たちを見ると学生時代の自分を思い出して懐かしいと言うか苦笑する。


はっきりして空気を読まないので、友達はほぼいなかった。いても、もう結婚して別の土地で平和に暮らしている。

母の実家はあるがじじばばも他界してるので、あまり会話もしないいとこのみ。

つまり、仲の良い人間がいない。


瓢湖で白鳥や鴨と戯れるために来たのか?否、当時の思い出を思い出したかったからかもしれない。



発車した電車に揺られていくつかの駅で停車。

新津で羽越本線に乗り換えるその時異変が置きようとは。


他の客が乗車してきたのは良いのだが、見覚えのある人。いやむしろ他界した筈の母が呑気そうに乗車してきたのである。ハハノンキダネ!


じゃなくて。見間違いだろうか?頬をつねり確かめるが痛みはある。

本物のようだ。向こうもこちら気づきのそのそやってくると片手を上げる。


「よっ」

「よっ」

母は何事もなく私の目の前の席に座る。

「あらあら、こんなに大きくなって。私に似て美人?あはは」

「……あはは、じゃなくて。何で生きてるの?」

「あらやだ。生きてちゃ悪い?ピチピチよ?」

「いやいやいやいや!化けて出たの?」

「うらめしや~ってね。あんたのこと心配だったからよ。どーせ、今も独りなんでしょ?」

「………」

母とは大人になってからも連絡をしていたから今の会話でわかった。


「影ってこと?」

「ご明察。せんべいいる?」

母。いや、あえて母と言うが、その母の差し出した煎餅を齧る。田舎で売られている懐かしの煎餅の味だ。



影って言うのは、希に本人と瓜二つの存在がエネルギー体としてもう一人存在して生活していると言う都市伝説みたいなものだ。

ドッペルゲンガーとは違うらしい。


その影とたまたま遭遇したと言うことか。ホントに偶然か?


しかし、本人と変わらないので懐かしさとその妙な明るさでじんわりする。

いつの間にか乗客のじじばばたちが集まってきて会話している。


「あんたの娘さん?」

「そうなのよ。旦那に似て自分のしたいことしか出来ないから、ぼっちなの~」

「あら~、こんなに美人なのにね~」

「あんた、男にはにこにこしてれば甘やかしてくれるんだから、その別嬪さを利用しなさい」

「は、はあ」

「ヒヒヒ、なら私の嫁になるかい?」

「すけべじじい!あんたにはわたしのようなばばあで十分よ!」

「わしは、わしは!若い女子がよいんじゃあ!」

「ええい、この子によるな!ばばあも間にろをつければ、ババロアになっていいじゃろう!」

「よくないわい!」

じじばばたちのお陰で久々に人に囲まれて賑やかである。

母はいつも誰かと会話していたからか。

こう言うとこ似ればもっと上手く世渡り上手出来て、気に食わないこと上司に言ってクビにもならなかったか。



じじばばたちがいなくなり母と二人になる。

「私は、あんたの母の影だから偉そうなこと言えないけどさ。影だと本人の気持ちみたいの伝わってくるのよ」

「そうなの?じゃあ私の影みたいなのもいて。伝わったりしてるのかな?」

この孤独さとか、辛さとか。

「あー、あんたの影はいないと思うよ」

「そうなの?」

「私みたいなスーパーポジティブじゃないとね」

そこで、ウインクすな。 エネルギーが強い人でないと影は出来ないと言うことか。


日々、独りでなんのために生きてるのか分からないけれど、偽者でも母に会えて嬉しい。


「まあ、私も消える前にあんたに会えて良かったよ」

水原駅について降りると大きくノビをして母はさらっと話す。軽いな。


「あんたのこと心配してたから」

「どっちが?」

「ん?どっちも」

「そっか。ありがと」

「あんたのそう言うとこはいいとこなんだから、人と関わるのも上手くやんな」

会社をクビになったことを伝えると母は、笑い飛ばした。



「影も……消えるん?」

「んだんだ。元の本人が消えるとね。ある日突然ふらっとね。昭和ねこか!」

一人で何か言って笑ってるよこの人。まあ、母らしいと言うか。


「あんたの母親エネルギー強かったから。ここまで生きてこれた」

水原駅のホームで佇み故郷の空を眺める。

「もう、会えないの?」

「いつでも会えるよ」

そうだよね。いつでも思い出せるからね。


「じゃ、そろそろ行くわ。いなくなるとこ見られたくないから行って」

「昭和ねこか」

「あっはっは!ホントにね!」

ホントはもっと話していたいけど、私は改札へと向かう。


「まあ、肩の力抜いて歩きなよ。独りっても誰かしらとは関わって生きていくんだしさ」

母の言葉は、分かる。分かるけど人に合わせられないからなぁ……。

切なさが胸を軋ませる。


「まあ、辛くなったら帰っておいで。あ、それとお墓にはアレを備えてね」

「わかった」

笹だんごとちまきを良く食べてたからそれのことだろう。流石にタレかつ丼はないか。

最後に食べ物の話し?一言言ってやろうと思い振り返るとそこには誰もいなくて。

まだ寒い季節の風が吹き抜けた。

取り敢えず墓参りいこ。その後、疎遠になった友達に連絡してみっか。


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