一緒に
加奈枝は、恐怖に震えていた。目の前には化け物がいて、加奈枝を喰らおうとしている。
この村は、昔からの風習で、生け贄を化け物に差し出すと言うしきたりがある。
加奈枝は、馬鹿なと思った。
生け贄を差し出してどうなると言うのだ。祈っても救われない。
抗うしかないのだ。武芸の才などないが、なにもしないで食われる気はない。
しかし、護身用の小刀は届かない。固い鱗に阻まれ、取り落とす。痺れる利き手。このまませめて、心まで痺れてしまえば、恐怖に震えずに済むというものの。
短い人生だったと目を瞑ると化け物の悲鳴。
あなたがいた。びびりの幼馴染みが来てくれた。
震える手に、刀を抜いて。振り返らずにあなたは、聞く。
「加奈枝さん、大丈夫か?」
「はい」
「こいつを倒したら、私と結婚して下さい」
「……ばか」
ビビりなくせに、こんなときに勇気見せてくれた。
昔は、村の男の子にいじめられてばかりいたのに、今では逆になってしまった。
加奈枝は、ただ離れて祈る。
いや、違う。一緒に戦うのだと、小刀を拾い。
共に武器を振るう。固い鱗なら、同じ箇所を何度も、何度も。
死闘の果てに、化け物を倒して、私は彼と結婚した。
あんな村になど帰らずに。