キミトキミ
冬のある日。今日も退屈な授業が終わり、帰路に着く。
「じゃあな、翔」
「またなー」
友達と駅で別れ、寒い寒いと思いながら、ホームで電車を待ってると、君がいた。
どこの制服か分からないけど、いつもポニーテールの君は、イヤホンをしながら、にこにこしている。
こんな退屈な毎日なのに、君は楽しそうで、だから気になったのか。
いつからだろう。学校帰りに君とよく出会う。どこかであったことのあるような、そんな気がする。ここ一月くらいか。
電車が来て、吐き出される人々の後、電車に乗る人々に続いて入る。揺れる満員電車。君を眺めてるとたまに目が合う。慌てて目を反らす。変に思われたかもしれない。
でも、いつまでも、もどかしいのは嫌だ。
それに、もうすぐ卒業だから。この時間帯に君と会えなくなる。
「あの」
電車を降りると、思いきって君の細い背中に声をかけた。
吐く息は白く、声が上擦った。かっこわる。
「はい?」
君は、イヤホンを外して、いたずらっぽく僕を見る。いたずらっぽく?
しかし、そんなことは気にしてられない。
「あの……どこかで会ったことある?」
「ナンパですか~?」君は、小首をかしげて言う。その仕草はかわいい。
「いや、あの…」
下を向く。なにも考えてなかった。
「嘘だよ。一目見れて良かった、お父さん」
「え?」
顔を上げて君を見たら、切ないような、でも笑顔で、君はかき消えた。
まるで、最初からどこにもいなかったような。
いや、確かにいたはずだ。それに、え?お父さん?
ま、まさか、未来から来た自分の娘?
はは……本の読みすぎかな。でも、最後の表情は悲しそうだったな。
だから。君のこと、心にとどめておくよ。
しばらくは、後悔が胸に残ってもやもやした。
もっと早く、声をかけていれば、あの子と仲良くなれて、違う別れ方があったのかもと思うから。
心のどこかで、あっちから声をかけてくれないかななんて、都合のいいこと考えていたから。
なんでも、自分からいかないとな。僕は、そう思ったから、君に感謝している。ありがとう。
「あ、すみません」
ボーッと考えてたからだろうか。角を曲がって、向こうから来た人を避けきれなくて、相手の女性がバランス崩しそうになったので支える。
「…あ、君は」
それは、あの時の君だった。いや………似てるけど、若干違うような。制服もあの時と違うし。
「あ、あの」
「あ、ご、ごめん」
ずっと、支えていたので、慌てて離して、落とした荷物を拾って渡す。
「ありがとうございます」
君は、あの時の君と似た笑顔で礼を言うから、ドキッとした。
そのまま、去る君に慌てて声をかける。
「あ、あのすいません」
「はい?」
「……どこかで会ったことない?」
「………ナンパですか~?」
眉を潜められたけど、めげない。退いてはいけない気がしたから。




