夢と絆
諦めようとしても
諦めようとしても
君が エールを送って
君の声が 届くたびに
僕は 僕たちは勝ちを目指す
弱小だって 馬鹿にされても
逃げない 逃げない 逃げない!
負けたら君が 引っ越して
いなくなってしまうから
繋げ 僕たちの絆
きらきら光れ 僕たちの夢!
「……私、引っ越すんだ」
練習の後。マネージャーの千里に告げられて、ショックを受けた。
小さい頃から、よく一緒に遊んで。勉強も教えてもらって。
「やーい!笹崎、女と遊んでらー!」
クラスメイトにからかわれても僕は、そんなこと気にしないで、(からかう奴とは揉めたけども)中学も高校も一緒で、なんて言うか、そばにいるのが当たり前だったから、千里の言葉に動揺を隠せなかった。
「……え?冗談だろ?」
「いやー、ホントなんだよー。うちの父さん、海外に転勤が決まってさー」
はは、と苦笑いしてる千里を見て、僕と会えなくなることも、そんなに気にしてないんだなと思うとムッとした。
「千里にとっては、簡単なんだな」
「……え?」
「僕と離れることも、寂しくなくて!この部から離れることも……」
「そんなわけないでしょ!」
「!」
「私は、透との時間も!この部での時間も!大切に決まってるでしょ!」
千里は、そう感情をぶつけると駆け出して行ってしまった。
「なんだ、夫婦喧嘩かー?」
騒ぎを聞きつけた部活仲間に、からかわれ、返す元気もなくその場を去る。
生憎の雨で、傘を持ってこなかった僕は、帰路にある神社まで走った。
のどかな田舎町である。田んぼが雨粒に打たれて喜んで見えるのは、僕だけだろうか。
雨に濡れて少し頭が冷える。そうだった。
どうでも良ければ、千里が僕なんかと幼馴染みなんてやってくれる訳ないか。
小説のヒロインみたいに可愛くて優しいんだから。
部活だって、弱小でマイナーなハンドボール部だ。
練習試合でも、一年に一回勝てればいい方だ。
神社には誰もいないかと思いきや、先客がいた。
「千里」
「やっぱり、傘持ってなかった」
ちょっとムスッとしながら、ハンカチで拭いてくれる。
「あ、ああ。水も滴る良い男だろ?」
「ばーか」
「全く、透だけだよ。今時傘を持ち歩かないなんて」
「だって、千里が入れてくれるだろ?」
千里はいつも、折り畳み傘を持っているのだ。
「……私、いなくなるんだから。しっかりしてよー」
なんでもないようにしゃべるけど、寂しそうな表情している。
いつも喧嘩して、すぐに仲直り。それも、もう出来ないのか。
「さっきは、ごめんな。あんな言い方して……」
「いいよ。私こそ怒鳴ってごめん」
「……ああ」
しばらく、雨音だけを聴く。自然の音はやっぱりいい。
どこかで、雨蛙が鳴いている。げこげこ。
「………」
「………」
「なあ、千里」
「んー?」
「今年の大会頑張るよ」
「え?」
こちらを見てるのが分かるけど、恥ずかしいので、前を見たまま決心を言う。
「いつも、マネージャーとして頑張ってくれてるからさ。一勝くらいプレゼントしたいしさ」
「そこは、優勝とかだよー」
「それは、無理だ」
「自信満々に言うなー!」
苦笑して、ポスッと肩を叩かれる。
そして、一歩前に出て傘を差し出す。
「さあ、帰ろ?」
「ああ」
千里の傘を持ち、一緒に相合傘なんて贅沢も、もう少しで終わりだ。
「透」
「ん?」
「また、会おうね」
「ああ」
残り時間五分。一対一の同点のまま、残り時間も少ない。
パスを回しながら、千里の応援を聴く。
「がんばれー!」
過ぎていく残りわずかの時間の中。僅かな隙を突いて、ジャンプシュート。
僕たちは、勝利した。まだ夢の途中。
勝ち続ければ、千里はまだ、引っ越さない。




