星使い
「この街には、星を降らせる人がいると言う」
翔子は、もったいぶって言う。僕はまたかと思う。
そんな、都市伝説みたいな話し。みんな噂してる。
ま、流れ星を降らして、願いを叶えてくれるらしい。
「そんなのいる訳ないだろー?」
「もう、流星は夢がないなー。流星の名前からして、流れ星を降らして見せなさい」
「はあ?」
内心、ドキッとする。僕は星使い。星を降らすことが出来る一族なんだ。
ただそれたげなんだけど、流れ星を頼むイラつくカップルが多くて困る。
このリア充が!と、毒づきたくなる。気力を使うんだ。
まあ、それで生計を立てているんだけどね。
あくまで、星を降らせるだけ。願いが叶わなくて、文句を言われることもある。勝手なもんだ。
自分の願いばかり。少しは、恵まれない子に募金でもしろっての。
そんなある日のこと、僕に流れ星をお願いして来たのは、小さな女の子。
「お星さまになったパパとママに会いたいの」
無邪気に笑う君に、分かったよ。夢の中で会わせてあげるね。
そう願い、たくさんの星を降らす。
「わぁ!凄いキラキラしてきれい!」
「いや、いいからお願いしてね」
「あ!うん」
その子は、連れのおばあちゃんと手を合わせて願う。
ごめんな。僕は無力だから、ホントに会わせたり出来ないんだ。
「バイバ~イ!」
しかし、その子はお代の五百円を払うと、にこにこと笑顔で去っていった。
夢の中で、会わせてあげるからね。そう心の中で呟いて、手を降り返す。帰ろうとして、聞き覚えのある声がした。
「ふ~ん?そうやって、星を呼んでるんだね」
ぎくっ!この声は?もしかしなくても?
振り返ると翔子が、ジト目で僕を見ていた。
「や、やあ、翔子じゃないか?偶然だね、こんなとこで会うなんて!」
ここは、街外れの公園。ここなら、ほとんど人気もないからいいと思ったんだけど。
「いや、一部始終見てたんだけど」
「あ、そう。もしかして、クラスのみんなに……」
「話す訳ないでしょ?そんな屑みたいな真似しないわよ」
「ですよねー」
「ま、黙ってるそのかわりに、私にも一つ流れ星、降らせてよ?」
「いい!?なんか、叶えたい願いがあるの?」
「まあ、ね」
なんか、照れくさそうにそっぽを向く。暗い気持ちになる。
「…君もか」
「え?」
「自分で叶えようとせずに、迷信に頼って!」
ずっとそうだった。幼い頃から、そんな他人より自分の願いばかり。
「落ち着け!」
バシンと、なぜか僕がビンタされてるんですけど?
「みんな迷信て、分かってるよ。でもね、多分そう言うのに頼りたくなるんだよ」
「……翔子は、なにを願うの?」
「流星の自由」
「え?」
「実は、結構前から気づいてたんだよねー。
星がよく降る日は、いつもいないし。決まって次の日は暗くてへこんでるし」
「それだけで?」
「んー?何度もそうだから、確率的にはもしかしてって思うでしょ」
翔子は、顎に人差し指を当てるとにっこり笑う。
「……ホントにその願いでいいの?翔子は、アーティストに、なりたいとか言ってなかったっけ?」
「フフン。見くびるなよ、小僧」
お前も小娘だろうと言いかけて、黙っていた。
「自分の願いは、自分で叶えるし、それに、星を降らしても、気休めなんでしょー?」
「……まあね。じゃ、高校生は、三千円だけど……」
「え?幼馴染みからも、金取る?」
「いや、そうしないと力発揮出来ないんだよ」
すまなそうに言うと、不機嫌に料金を渡してくる。
「く~、私は、なにをしてるんだ」
「ま、毎度」
迷信と知りながらも、料金を払う訳だから、そうなるだろう。
でも、一つだけ黙ってたことがあるんだ。
「さ、流れ星を呼ぶから、願い事を願って」
「んー!」
なにやら祈るポーズで祈ってる。ホントに僕のために?
僕は、指揮棒を振るうかのように、腕を振ると夜空にいくつもの星がきらめいて流れる。
「わぁ!きれい!」
願いながらも見とれる翔子。でも、その翔子が願ったお陰か、自分で分かった。もう自分の願いを叶えるための人のために、願いを叶えなくてもいいことに。
漫画やアニメのように、派手な演出は無いけれど。確かに分かった。
「翔子、ありがとう」
「え?」
「僕のために願ってくれて」
「あ、うん。ま、迷信でも願わないよりは……ね」
ホントは、迷信じゃないんだ。他人のために心から願う人の願いは、叶えられるんだ。内緒だけどね。
「さ、帰ろう」
「うん」
「でも、なんで僕のために、願ってくれたの?」
「だって、いつも連絡取れないし。こんなこと続けてたら、一緒に遊べないじゃん」
「え?なに?」
ぶつぶつと、小さく喋ってるのでよく聞こえない。
「なんでもなーい!そんなことより、三千円返せ!」
「はは。お、お礼に夕飯奢るから、食べに行こう」
「え?高級ディナー?」
「え?」
「あはは、冗談だよー。その辺のファミレスでいいって」
「ほっ」
君の願いのお陰で、星使いは都市伝説になった。
そして、他者のために願う人だけが、僕のとこに辿り着ける………かもしれない。
見上げた夜空は、静かに微笑む星のきらめき。
星たちが、静かにバラードを歌うのが僕には聴こえた。




